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教誨師 [本(法律と犯罪]

『教誨師』
堀川惠子(ジャーナリスト)
講談社(2014)


新聞社は電話をして質問し、
はいといいえと言えば
質問の内容ごと話したような文章にする。

法務省による通達で、
教誨師は拘置所内で知り得た情報を
口外してはならないと定められている。

再審の請求を思いとどまらせる説教をする僧侶もいた

お経は今、生きている人のためのもの

元は高校の社会科教師

核分裂の時間は十秒ぐらい
広島原爆で4,5メートル吹き飛ばされる、
爆心から1.9km地点にいた

七歳の女の子をなんとなく殺した、白木少年、
女を切りまくりたい、五人の女性を殺害

死刑囚の平均IQは70
大切なたったひとりに恵まれなかった

絞首刑だが首の筋が切れて死ぬ
絞首刑がある先進国は日本のみ

法の世界では、善意とは知らないこと、
悪意とは知っていることを意味する。

☆☆☆☆☆
難易度2/5 推薦度5/5

浄土真宗の僧侶、教誨師渡邉普相の話をまとめたもの。

忘れた者が勝ち、というはいい言葉。

アルコール依存症を打ち明けて死刑囚が興味を持つようになる
人は誰かの役に立ちたいものとよくわかる。

死刑囚とはどんな人たちなのか、
人を殺すということはどんなことなのか、
知るのに読むべき一冊。

・今日の一言(本文より、憲法十七条)
人間には極悪のものはまれである。教えられたならば道理に従うものである。
人鮮尤惡。能敎従之。
はなはだ悪しきもの少なし。よく教えうるをもって従う。
Few men are so bad that they cannot be taught their truth.
사람은 지극히 나쁜자는 드물다. 잘 가르치면 반드시 따라온다.

タグ:堀川惠子
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死刑絶対肯定論:無期懲役囚の主張(新潮新書) [本(法律と犯罪]

『死刑絶対肯定論』
美達大和(無期懲役囚、二件の殺人犯)
新潮新書(2010)


塀の中ですでに二十年弱
社会にいたころ毎月100-200冊の本を読んでいた
今も月100冊読んでいる

被告人の親が8000万円を被害者遺族に払ったことが減刑に理由に
私は一件目の殺人から二件目の殺人まで数年のタイムラグがあった
一度人を殺すと人を殺すことに抵抗がなくなる

受刑者には動物好きが多い
ナチスも動物愛護派だった
無期懲役囚の半数以上は獄死する

衝動的に夢中で殺し切るのは難しい。
何度も長時間の暴行がない人は死なない。
致命傷のときは殺意は明確

殺人事件では被害者が死亡しているので被告人は嘘をつく

・今日の一言(本文より)
受刑者の多くは自己中心的なのに自分について考えたことがない。
수형자의 대부분은 자기 중심적인데 자기에 대해 생각한 적이 없다.
服刑者的多半是自我中心的人,可是他们没有考虑过自己的事情。
Most of the prisoners are egocentric but they never thought about themselves.
Most prisoners are egocentric but they never thought about themselves.

タグ:美達大和
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逮捕されるまで:空白の2年7カ月の記録 [本(法律と犯罪]

『逮捕されるまで:空白の2年7カ月の記録』
市橋達也
幻冬舎(2011)


著者の能力の高さと性格の子供っぽさが印象的。
ただし、異常があるとはいえず、
ある意味、普通の挫折した少年に思える。
たぶんちょっとしたきっかけでこうなったのだろう。

ホームレス生活や孤島での生活、
あるいは西成でのドヤ街の生活など、
適応能力も高い。
自分の手で整形するというのも凄い。

しかしやはり著者が書くべきなのは、
犯罪に至るまでの話、
逃げる話ではない。
逃げる話を書いた以上、
自分はなぜあんなことをしてしまったのか考える意味でも、
犯罪に至るまでの話を書くべきと思う。

・今日の一言(本文より)
My life is for me.
私の人生は私のものだ。
내 인생은 내 것이다.
我的人生是我自己的。

タグ:市橋達也
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最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術:かけひきで絶対負けない実戦テクニック72 [本(法律と犯罪]

『最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術』
橋下徹(弁護士、示談交渉)
日本文芸社(2003)


相手と二度と再会しない代理交渉が前提の交渉術の本。

実際には存在しないレトリックによる利益、
不利益を回避するという利益を与える。
いかにして仮想の利益を生み出すかが交渉能力。

礼儀以外の謝罪は厳禁。
非が自分にあるときこそ謝罪してはいけない。

罵倒を黙ってやりすごしてはいけない
大声には大声で返す

信頼関係はときに足かせになる
交渉とは不満足の分配作業。
交渉は後出しじゃんけんで攻める。
相手方の窓口を一つに絞る。
相手にこちらが時間制限があると思わせない。
一にも二にも体力。
相手の納得できる理由を選ぶ。
必ず言い返す反射神経の勝負。
相手に時間を与えないこと。

☆☆☆☆☆
大学の先生にコンプレックスでもあるのだろうか?

・今日の一言(本文より)
不利になったら無益で感情的な議論をふっかけて荒らしたあとに、無益な議論をやめようと提案して終わらせる。
불리해지면 무익하고 감정적인 논의를 시작해서 망친 후에, 무익한 논의를 그만두자고 제안해서 끝낸다.
陷入困境时,找碴进行无益非理智的议论而破坏气氛后,提出不要进行这种无益的议论而结束话题。
If you are at a disadvantage challenge the other side to an useless emotional argument, mess up the negotiation and then end the argument by proposing to stop the useless argument.

タグ:橋下徹
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人はなぜレイプするのか:進化生物学が解き明かす [本(法律と犯罪]

『人はなぜレイプするのか』
ランディ・ソーンヒル(動物行動学、進化心理学)
0 青灯社(2006)


原題:A Natural History of Rape 2000

過激なタイトルだけど、中身は丁寧な論文。
レイプが進化で発達した生殖戦略なのか心理学的適応の副産物かを検討し、
フェミニスト社会学を批判するもの。

大きな影響力をもつ社会科学の著作の大多数はイデオロギー的なものである。
The most of the influential work in the social sciences is ideological.

対称性それ自体の遺伝率はほとんどゼロに近い
The heritablitiy of symmetry per se is porbably near zero.

進化から考えるときの注意点二つ。

ウィリアムズ:
複雑な諸形質についてはそれが副産物だという説明がつかない場合にかぎって適応だと考えるべきである。

ローシュコ:
至近的な関連事項に十分な注意をはらわないと淘汰プロセスのなかで働く力を読み損ねる結果となる。究極的な機能だけにしか関心を寄せない研究者は他の適応の副産物や二次的効果にすぎない行動を誤って適応だと分類してしまう危険がある

レイプを動機づけるのは性的欲求と所有や支配への欲求。

自然主義の誤謬
どうあるべきかは実際にどうであるか、どうであるのが自然かよって決まるものではない。

メイナード・スミスのグールド批判
グールドの著作について私が論じ合った進化生物学者たちは、彼の論旨は無茶苦茶だからわざわざ反論するにもあたらないと考えている者が多かった。

著者たちはフェミニストの"レイプが性犯罪でなく暴力犯罪という考え"を
追放してこそレイプを減らせるとしている。

・今日の一言(本文より)
Certain proximate explanations may be incompatible with certain ultimate explanations.
究極要因から考えた場合にあり得ない至近要因というのも存在する。
궁극 요인으로 생각할 경우 있을 수 없는 지근요인도 존재한다.
有从最初原因考虑时不可能的最近原因。

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ニッポンの刑務所(講談社現代新書) [本(法律と犯罪]

『ニッポンの刑務所』
外山ひとみ(写真家、ジャーナリスト)
講談社現代新書(2010)


なかなか面白い本。

刑務所は時代を映す鏡。
77の刑務所に6万人を越える受刑者、
少年院などを含めて8万人以上。
アメリカに比べれば少なくていいよね。

関東大震災で一時解放された囚人の七割は
一週間以内に自発的監獄に戻ってきた。
日本人的というべきか。

過剰収容と40℃を越える夏。
誰だ刑務所が恵まれているという人は?

白物三点に気をつけろ。
シーツ、枕カバー、衿布。
自殺防止のため。

次に出所したら何をやるかと犯罪の話ばかり。
困った人たちはどうすべきか?

刑務所は最後の福祉。

近代自由刑のルーツは長谷川平蔵の人足寄場。

2006年女子受刑者4452名。

2006年の新法以降刑務所に広がる貧富の差。
新法で私物が20リットルから60リットルに。
お金がない人は肩身が狭い。
確かにこれは変だ。

30%の再犯者により60%の犯罪が行われる。
繰り返す人をどうするか?

10代の少年に日記の義務。
反省するには日記が一番かな?

出所後社会に出て4-6ヶ月罪を犯さなければ再犯しない。

問題点は一言で言って人手不足。

・今日の一言(本文より)
眠らなくてもいい、頭が冴える。スーパー万能薬に思えた覚醒剤がやがて耐性化して、現実と妄想の判断がつかなくなる。
안 자도 좋고 머리가 맑아진다. 슈퍼 만능약으로 생각한 각성제가 드디어 내성화되어 현실과 망상의 판단이 설 수 없게 된다.
睡觉也不需要,脑子也很清醒。认为是超级万能的兴奋剂也很快产生抗性,到不能判断现实和妄想。
You don't need to sleep, it clears your mind. The stimulant, which you thought it was a super cure-all, will eventually lose its effect and you become unable to distinguish delusions from reality.

タグ:外山ひとみ
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犯罪捜査の心理学-プロファイリングで犯人に迫る(DOJIN選書) [本(法律と犯罪]

『犯罪捜査の心理学』
越智啓太(臨床心理士、犯罪捜査)
DOJIN選書(2008)


殺人事件から犯人のタイプを分類し、
その行動予測を作って犯人を絞り込む方法。

犯行の起きやすい場所は、
犯人の居住地域を中心に、
そこから一定の距離のドーナツ状の円環になる。
家の近くは避けるが、あまり遠くもないわけ。

刑事の嘘を見破る能力は一般人と同じ。
刑事の勘などないに等しいのだ。

・今日の一言(本文より)
殺人事件の多くは金か愛のトラブルから起こる。
살인사건의 대부분은 돈이나 사랑의 문제로 일어난다.
杀人案的大部分是由金钱或者爱情的纠纷发生的。
Most murders occur because of trouble with money or love.

タグ:越智啓太
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人が人を裁くということ(岩波新書) [本(法律と犯罪]

『人が人を裁くということ』
小坂井敏晶(社会心理学)
岩波新書(2011)


死刑の矛盾。
死刑前日に自殺未遂発生。
医療チームが救出して翌日処刑する。

冤罪率はおよそ1%。
犯罪者1000人見逃して冤罪者一人を助けるべきか?
と考えるとバランスが難しい。

ただの学生も警察官も発現から嘘を見抜く能力は同じ。
本当のことを嘘と誤認する率は警察官の方が高い。

自白調書はわざと間違えて被疑者に訂正させる。
調書を読んだ証拠とするため。

ハイエクの事物の三分類:
自然物、人工物、機能物
三つ目はドーキンスのミームに相当するようだ。

著者はアフォーダンスについて誤解しているように思う。
アフォーダンスは知覚の理論であって主体の理論ではない。

・今日の一言(本文より)
今後どんなつらいことが予想されようと真実を言う勇気を持て。
앞으로 어떤 힘든 일이 예상되어도 진실을 말하는 용기를 가져라.
无论预测以后发生多么困难的事情,你要有说真话的勇气。
No matter how hard you expect things will go in the future, have the courage to speak the truth.

タグ:小坂井敏晶
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「狂い」の構造(扶桑社新書) [本(法律と犯罪]

『「狂い」の構造』
春日武彦・平山夢明(精神科医と作家)
扶桑社新書(2007)


"めんどくさい"と"もったいない"が狂気の始まり。

常習の万引き犯はただで盗れるものにお金を払うのが苦痛になる。
窃盗犯はみんなそうなんだろう。

よい題名がつくと自然な展開にしにくくなる。
本は題名から考えないほうがよい。

法廷で弁護士はとりあえずの意味のない質問ばかりする。
意外に弁護士は無能だったりする。

小野悦男事件
殺人の疑いで逮捕も冤罪を訴えて戦い、窃盗のみとなる。
ところが釈放後に殺人。
冤罪はとても難しい問題を含んでいる。

睡眠薬自殺はゲロを吐いての窒息死。
楽なのは練炭だそうな。

・今日の二言(本文より)
ダメな奴は一つ前例があると自分もして大丈夫と安心する。
못난 놈은 전례가 하나 있으면 자기도 해도 된다고 안심한다.
不行的家伙发现一个先例就觉得没问题,放心地自己也去做。
A useless fellow will feel relieved at finding only one precedent, and think he can do it.

落ち込んだときは部屋を掃除しろ。
우울해질 때는 방을 청소해라.
意志消沉的时候,你就打扫房间!
Clean your room when feeling down.

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犯罪者の自伝を読む-ピエール・リヴィエールから永山則夫まで(平凡社新書) [本(法律と犯罪]

『犯罪者の自伝を読む』
小倉孝誠(近代フランス文学と文化史)
平凡社新書(2010)


面白そうな本が紹介されてた。
フランスの伝説的犯罪者にして
パリ警視庁の治安局長ヴィドック(1775-1857)の回想録。
多くの作家の愛読書らしい。

・今日の一言(本文より)
どんなに情けない人生だったとしてもそれを警察が握りつぶしていいはずがありません。
아무리 한심한 인생이었다고 한들, 그것을 경찰이 쥐어 으스러뜨려서는 안 된다.
无论怎么没出息的人生也不应该被警察破坏。
No matter how miserable the life is, but police should not crush it.

タグ:小倉孝誠
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「権力」に操られる検察(双葉新書) [本(法律と犯罪]

『「権力」に操られる検察』
三井環(元公安部長、検事)
双葉新書(2010)


調査活動費という裏金が幹部の遊興費になっていた。
調査活動費は本来は情報提供者への謝礼。

検察の手法。
マスコミにリークして風を吹かせること。

贈賄の時効は三年、収賄の時効は五年。
このタイムラグに立件すれば贈賄側を自由に動かせる。
賄賂を送ったといっても罪にならず、
受け取った側だけが罪になるから、
何らかの見返りがあれば、偽証するわけである。

裁判官は検察官面前調書を信用し疑わない。
法廷での発言より検察官の前の発言を信頼するのだ。

著者はローンを組むために住民票を先に移動し、
融資実行までに空いた一週間のため
電磁的公正証書原本不実記録、同共用罪で実刑に。
著者の2%の却下率の仮釈放はすべて却下され、満期まで懲役刑。
これは恐ろしい。

著者の提案。
・公安調査庁の廃止
・調査活動費の廃止
・欧米並の取り調べの全面可視可
・証拠品目録の全面開示
・被告人が望むなら裁判員裁判にできるようにする

・今日の一言(本文より)
裁判所は検察と被疑者の論理の整合性を判断する場で、真実を探求する場ではない。
법원은 검찰과 피의자의 논리의 정합성을 판단하는 곳이지, 진실을 따지는 곳이 아니다.
法庭是判断监察和嫌疑犯所说的逻辑性的地方,不是探求真实的地方。
The court is not the place for searching the truth, but the place to judge the consistency of the prosecution and suspect's stories.

タグ:三井環
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ルールはなぜあるのだろう-スポーツから法を考える(岩波ジュニア新書) [本(法律と犯罪]

『ルールはなぜあるのだろう』
大村敦志(民法)
岩波ジュニア新書(2008)


何がいいたいのやら……

スポーツの雑談が最後に突然法律の話に変わる。

印象に残った言葉。
スポーツマンシップは公明正大な男子の道である。
昔の人だからね。

・今日の一言
スポーツマンシップは公明正大な男子の道である。
스포츠맨쉽은 공명 정대한 남자의 길이다.
运动员精神是光明正大的男子精神。
Sportsmanship is the fair and square way of boys.

タグ:大村敦志
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ゲームと犯罪と子どもたち-ハーバード大学医学部の大規模調査より [本(法律と犯罪]

『ゲームと犯罪と子どもたち/ローレンス・カトナー、シェリル・K・オルソン/インプレスジャパン/2009』
著者:児童心理学
評価:子どもへの大規模アンケート報告。分析は支離滅裂。


この本では政治的背景はないことがやたらと連呼されている。
私の知る限り、わざわざ政治的でないと断る本が、
実際に政治的でない例はない。
著者の1人はビデオプロデューサー兼作家でメディア側の人であるし、
フランク・ウルフ下院議員が司法省と橋渡しし、
アメリカ司法省の資金援助を受けている。
これを政治的でないというのは無理があるというものだ。

著者の指摘。
このテーマの問題は、研究結果からどんな結論でも引き出せること。
これは実はこの著書も同じ。
この本からも暴力を強化することも引き出せるのだ。

アンケートでは子どもの社会性促進やストレス解消などを評価しながら、
子ども自身がゲームを悪いと認識し、
もっと年下の子にさせたくないと言っていることは評価しない。
ダブルスタンダードである。

子どもの意見を重んじて、ゲームの効果を言うなら、
同じように子どもの意見を重んじて
ゲームはやはり悪いということもできるのだ。

それにしてもこれまでの研究を相関で因果でないと攻撃しながら、
自分たちの研究はアンケートというのが脱力ものだ。
アンケートでは因果を取り出せるはずもなく、
バイアスが強くあまり信用されない。

たとえば、ゲームは怒りと恐怖心を取り除くと答える子どもがいるが、
これは事実と認識は異なる典型例。
いわゆるカタルシス効果は学問的に完全否定されており、
これは論議にも登らないテーマである。

グロスマンへの反論。
事実誤認とその考えの問題点を提示しているが、
どうやら著者はグロスマンの著書をまともに読んだように思われない。

グロスマンの指摘は、人は人を殺せないという点にある。
銃を持っていても特別な練習をしない限りを人を射殺できないのだ。
南北戦争や第一次大戦の統計から、
向かい合った相手を射殺することが、
心理的にいかに難しいかを説明したものである。

ゲームが技術面を発達させるのではなく、
条件反射的な能力を鍛えることで、
心理面を無視させるとしているのだ。

だから射撃犯人が実際に撃って練習したからといって
うまくなるものではなし、
カーニールがうまく撃ったことを指摘したのではなく、
そもそも射殺できてしまったことが問題なのだ。

この著書では、ゲームの影響を受ける危険性の高い子どもを
特定する方法を問うべきと指摘する。
暴力メディアと暴力行為はその相関は確実だが、その因果は明確ではない。
このことは、
そもそも遺伝的に暴力的な人間が暴力的ゲームをすることを示す。
実はこのことの方が怖いし、危険なのは理解できるだろうか?
なぜならこれは暴力的ゲームの所有者を、
潜在的犯罪者として警察にマークさせることを正当化するからだ。

もしあなたが暴力的ゲームを好んでいるが、
それで暴力が促進されるはずがないと主張するなら、
自分自身が暴力的な犯罪者予備軍であると認め、
警察にマークされてもそれを容認できなければならない。
なぜなら相関は証明されているからだ。

バージニア工科大学銃乱射事件の残念な結果。
精神疾患と暴力行為を不当に結びつけるようになったこと。
精神疾患を抱えるもの加害者より被害者になることが多いという指摘。
ここにも本当に恐ろしいことは、
殺人と放火では明白に精神障害の比率が高いという事実である。

アンケート対象は12-14歳の子どもで、664+590人。
子どもというと普通、幼児期について考えると思う。
思春期にもなると知識は不足しても思考力は完成しているから、
明白な影響はないと思う。
思考力の完成していない幼児期か問題なのに、
そこを無視して
"メディアの暴力にさらされると
暴力行為を行うようになるという考えは明かに間違っている"
などと断言するなど論外である。

暴力ゲームと暴力行為の相関を確認しただけで、
どこにも因果関係を否定する根拠が登場しない。
あるいは逆の因果を示すデータもない。
自分の実験に因果関係を証明する要素がないだけで、
因果関係を否定するなんて呆れてものが言えない。
0はマイナスではないのだ。

暴力映像と暴力行為の関係については、
2009年にファーガスンとキルバンが、
1998-2008の論文からメタ分析している。
Ferguson, C.J.& Kilburn, J 2009
The public health risks of media violence:
A meta-analytic review. The Journal of Pediatrics, 154, 759-763

結論から言うと、
暴力映像の定義を狭く取った場合、
統計的には有意だが実際には無視できるレベル。
ないに等しいがあることはある、
しかし逆に暴力を減らすということもない。

ただし暴力映像の定義を広くとると、
無視できるレベルでなくなることから、
どんな暴力映像でも影響があるのではなく、
どのようなものが悪影響があるのかが今後のテーマになると思われる。

さらに暴力メディアの受けやすいタイプの子どもを
特定する方法も研究されることになるだろう。

この本で最も大事な指摘はニュースの暴力の持つ悪影響。
事件ニュースが暴力を促進するのはほぼ確実だからである。

・今日の一言
暴力のニュースは子どもに悪い影響を与える。
폭력 뉴스는 어린이에게 나쁜 영향을 준다.
暴力消息会给孩子们坏影响。
Violent news are a bad influence on children.
Violent news have a bad effect on children.

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精神鑑定の事件史-犯罪は何を語るか(中公新書) [本(法律と犯罪]

『精神鑑定の事件史』
中谷陽二(司法精神医学、精神病理学)
中公新書(1997)


精神鑑定の歴史。

心身喪失による不起訴処分は年400件だが、
無罪は一桁。無罪になることはほとんどない。

ダニエル・キイスはミリガンにより逆手に取られた。
ミリガンは空想虚言症に過ぎないという。

精神の診断の難しさ。
精神科医の呉秀三は夏目漱石を早発性痴呆の一種と診断した。
まあ漱石は相当に変人みたいだから。

・今日の一言
精神科医の呉秀三は夏目漱石を早発性痴呆の一種と診断した。
정신과 의사 구래슈조(吳秀三)는 나쓰메 소세키를 조발성 치매증의 일종이라고 진단했다.
精神科医生吴秀三把夏目漱石诊断为早发性痴呆症的一种。
Psychiatrist Kure Shuzou diagnosed Natsume Soseki as a kind of precocious dementia.

タグ:中谷陽二
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精神障害者をどう裁くか(光文社新書) [本(法律と犯罪]

『精神障害者をどう裁くか/岩波明/光文社新書/2009』
著者:精神科医
評価:精神障害と刑罰の関係を知る


2007年の検挙人数の内、精神障害及びその疑いがあるのは2545人。
全体の0.7%。
精神障害者は302.8万人で人口の2.4%だから、
犯罪全体では健常者より比率が低い。

ところが、殺人と放火は異なる。
2007年で殺人では9.6%、放火では15.2%を占めているのだ。
この意味は難しいところ。

昔のヨーロッパは人権が無視されていた。
18世紀の精神病院ベスレムは、
観光名所でもあり狂者を一般公開し入場料を取っていた。
年間9600人の客が訪れたという。
動物園のような扱いである。

犯罪の扱いも違う。
19世紀には、被害者の遺体をそのまま置いて、
犯行現場の有料公開していた。

スウェーデンは事件報道はすべて匿名が原則、
人権をいうならマスコミは実名報道を止めるべきである。
マスコミは懲罰組織ではなく、
犯罪者を罰する権利などないのだ。

・今日の一言
18世紀の精神病院ベスレムは年間9600人の観光客が訪れる観光名所であり、狂者を一般公開し入場料を取っていた。
18세기 정신병원 베스렘은 일년간 9600명의 관광객이 방문하는 관광 명소이며, 정신병자를 일반공개해서 입장료를 받고 있었다.
18世纪精神病院贝特莱姆是一年平均有9600人的观光游客访问的名胜之地,向游客们公开精神病人,并收取入场费。
Bethlem Royal Hospital in the 18th century was the tourist attraction where drew 9,600 visitors a year. They put mental patients on view and charged an entrance fee.

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労働法はぼくらの味方!(岩波ジュニア新書) [本(法律と犯罪]

『労働法はぼくらの味方!』
笹山尚人(弁護士、非正規雇用労働者の権利問題)
岩波ジュニア新書(2009)


働く人必見。

労働法とは何か?
労働法は労働者にゲタをはかせる法律。
労働契約書や就労規則は、
労働法と同じかそれ以上に労働者に有利な内容でなければならない。
労働法より悪い条件の契約は無効なのである。

日本の労働組合の問題点。
労働組合が企業ごとに作られているたため、
その企業の浮沈に依存することになる。
すなわち企業に対して強い態度に出ることができないのだ。

労働法を企業に守らせるためにするべきこと。
労基署と監督官を増やすこと。
これを民主党はするだろうか?

これらの知識も使う人だけに有利なもの。
法は自ら助くる者を助く。
すべて主体的に動いてこそ生きるものなのである。

・今日の一言
法は自ら助くる者を助く。
법은 스스로 돕는 자를 옵는다
法律助自助者。
The law helps those who help themselves.

タグ:笹山尚人
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誰でもいいから殺したかった!-追い詰められた青少年の心理(ベスト新書) [本(法律と犯罪]

『誰でもいいから殺したかった!』
碓井真史(スクールカウンセラー、社会心理学)
ベスト新書(2008)


無差別殺人犯についての考察。

秋葉原無差別殺人犯の教育環境。
中学の成績はトップで、高校も県下一の秀才だった。

異常な母親の管理意識。
女の子から来たハガキを見せしめとして貼り付ける。
食事を新聞紙にぶちまけその残飯を食べさせる。
作文も絵も親が書いたものを提出したという。

注目と関心を求める甘え-攻撃型犯罪に分類している。

人は自分のためだけに生きようと思っても勇気も意欲もわかない。
これは重要な考え方。
自分のためを中心に考えて生きる習慣を持つと、
実は何事にも意欲的に行動できなくなるのだ。

トラビス・ハーシーの社会的絆理論
家族学校職場などとつながりがあるから犯罪を犯さない。
孤立した人間こそ最も危険である。

ニーバーの祈り
神よ、私に変えられるものを変える勇気と、
変えられないものを受け入れる心の静けさと、
そしてのその二つを見分ける知恵を、我に与えたまえ
心の葛藤をいかに処理するか、仏教の思想に近い。

思うに、こうした凶悪犯罪が起こると、
必ず原因を巡る論争が起こるが、連鎖する因果関係では、
何か一つを原因として挙げても意味はない。

犯罪におけるロイヤルストレートフラッシュ理論というのを考える。
ロイヤルストレートフラッシュは、
ただカードが絵札だけでもだめ、
ストレートに並ぶだけでもだめ、
マークがそろったフラッシュでもだめ。
この3つの条件がそろわないと成立しない。

殺人事件も同じ。
社会環境、教育環境、個人性格の3つがそろってはじめて
殺人犯が誕生するのである。

凶悪事件があるとしばしば、
俺の親はひどかったけど俺は人を殺したりしないとか、
派遣で苦しんでいるのはいっぱいるが殺人しないとか、
いう人がいるが、
これは、因果関係とは何かを理解しない、
発言者の智力を低さを示すに過ぎない。

・今日の一言
God, give us grace to accept with serenity the things that cannot be changed, courage to change the things that should be changed, and the wisdom to distinguish the one from the other. (Serenity Prayer)
神よ、私に変えられるものを変える勇気と、変えられないものを受け入れる心の静けさと、そしてのその二つを見分ける知恵を、我に与えたまえ。(ニーバーの祈り)
주여, 우리에게 우리가 바꿀 수 없는 것을 평온하게 받아들이는 은혜와 바꿔야 할 것을 바꿀 수 있는 용기, 그리고 이 둘을 분별하는 지혜를 허락하소서.(평온을 비는 기도)
神啊,求您赐我宁静的心,接受我所不能改变的事,赐我勇气,改变我所能改变;赐我智慧,分辨两者的差别。(宁静祷告)

タグ:碓井真史
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刑法入門(岩波新書) [本(法律と犯罪]

『刑法入門/山口厚/岩波新書/2008』
著者:刑法学
評価:犯罪とは何かを知る良書。本物の論理思考の訓練にもなる。


刑罰の目的を犯罪予防と見たときの問題点。
犯罪予防のために処罰することは、
個人を他人の目的のための手段として物のように扱うことになる。
カントの倫理に反するのだ。
カントやヘーゲルは応報刑を支持している。

他行為可能性とは、犯罪をしないで他の行為ができたこと。

さまざまな例題。
死刑執行事例。
被害者の父が職員を押しのけて執行ボタンを押すと殺人か?
毒薬事例。
毒殺しようと毒を飲ませたが他の人も別の毒を入れていた。
どちらも犯人の行為がなくても結果は同じだが、
上記は殺人でなく、下記は殺人。

また幼児の養育を放棄して死なせてしまうような、
あるいは失火を放置した場合のような、
無為による殺人をどう解釈するかも面白い。

相当因果関係。異常な事態の介在する因果は否定する。
不作為処罰には法的な作為義務が前提となり、
作為義務の違反が作為の結果と同価値である場合、
作為の規定で不作為を処罰できる。
法律、契約、先行行為を作為義務の根拠とする。

過失とは故意でなく、注意すれば犯罪事実を認識予見できた状態。
過失致死罪は50万以下の罰金。
業務上過失致死は懲役5年以下。
自動車運転過失致死傷罪は7年以下。
結果は殺人と同じでも刑罰は全く異なる。

正当防衛の特徴。
逃げることができても逃げる必要はない。
また攻撃より重く反撃してもよい。
正当防衛とは、
不正な侵害から自己又は他人の権利を防衛すること。
権利を守るというのがミソ。

・今日の一言
死刑執行のとき被害者の父が職員を押しのけて執行ボタンを押すと殺人か?
If victim's father pushes a staff away and presses the execution button, is it a murder case?
사형 집행 때 피해자의 아버지가 직원을 밀어내고 집행 버튼을 누르면 살인인가?
在执行死刑的时候,受害者的父亲推开职员,自己按执行死刑按钮的话,这是杀人事件吗?

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数学で犯罪を解決する [本(法律と犯罪]

『数学で犯罪を解決する/キース・デブリン,ゲーリー・ローデン/ダイヤモンド社/2008』
著者:数学者
評価:アメリカのテレビドラマNUMBERS天才数学者の事件ファイルの背後の数学を知る


データマイニング
小売業界が顧客の購入パターンを検出するために導入された。
スーパーがカードを発行するのは購入パターンを分析するためなのだ。
てっきりカードで所属意識を与える心理効果を狙ったものかと思っていた。

ちょっと驚いたこと。
指紋鑑定の誤りが、DNA鑑定でひっくり返ったケース。
指紋があてにならないこともあるらしい。
偶然他人の指紋が一致することも有り得るわけだ。

カジノのブラックジャックは特定の条件では有利になる。
その方法を発表した著者は、本の印税で投資をし、
数学的アイデアで株式市場で儲けし、五年で倍増させたという。

この本はこちらを読んで読みました。
子どもが「数学なんて役に立たない」なんて言いだしたら渡す「数学で犯罪を解決する」(スゴ本)

『犯罪者プロファイリング/渡辺昭一/角川oneテーマ21/2005』
著者:心理学、犯罪行動科学
評価:資料的な本

犯罪者プロファイリングは確率論的に可能性の高い犯人像を示す。
捜査の効率化のための技法である。

日本の犯罪状況がここ10年急激に悪化したという。
社会学研究を見る限り事実ではないようだが。

FBI式の臨床的プロファイリングは良く知られているが、
むしろリバプール方式の統計的プロファイリングがなかなか興味深い。

・今日の一言
スーパーがカードを発行するのは購入パターンを分析するためだ。
A supermarket issues a membership card to analyze purchase behavior.
슈퍼가 카드를 발행하는 것은 구입 패턴을 분석하기 위해서다.
为了分析购买模式,超市发行会员卡。

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日本の刑罰は重いか軽いか(集英社新書) [本(法律と犯罪]

『日本の刑罰は重いか軽いか』
王雲海(法学)
集英社新書(2008)


日米中の刑罰比較論。
米中より日本の司法がましとわかる。

民事裁判は有罪推定で50%を超えると有罪。
刑事裁判は無罪推定で120%証明できないと無罪。
だから刑事で無罪、民事で有罪ということもある。

米国の刑事事件の90%は司法取引。
裁判にならない。
残りの裁判の半分が陪審裁判。
陪審裁判は20分の1でしかない。

日本の99%の有罪率の問題。
これは米国のお粗末な刑事司法手続きを前提に見るための異常さ。
日本の刑事司法は精密で優れているのだ。

2004年度殺人検挙率比べ。
日本は94.5%、米国62.6%、中国は自称91.4%。
日本の警察が一番頑張っている。

中国では小さな罪は犯罪ではない。
中国では公務員1ヶ月分の給料以上を盗まないと窃盗罪にならない。
不問か、行政処分か、叱責か、示談である。
そのため中国人には小さな違法行為で警察に通報するという考えはない。
まあ、通報しても何割かは謝礼として警察に取られるしね。

中国の刑罰は経済犯罪に重い。
中国で永久機関を発明したとしてお金を集めた男は死刑になった。

中国人の基本的な考え方。
殺人償命。人を殺したら命をもって償え。
シンプルである。

中国の裁判官の任の重さ。
中国では死刑執行を指揮するのはその死刑を宣告した裁判官という。
大変だわ。

日本は、法律上は無罪推定罪刑法定だが、
社会上は有罪推定罪刑不法定。
刑罰そのものより重い社会制裁がある。
そのため重い犯罪への刑罰が軽く、軽い犯罪への刑罰が重い。
これはマスコミの問題でもある。

米国は、知能犯や軽犯罪の刑罰が重く、
道徳犯罪や重罪への刑罰が軽い。
意志を重んじるからかな。

司法と政治の違い。
法の基本原理は人権、個体権利。
それはときに民主主義と対立するのだ。
多数決でなく論理に従うのが司法である。

この本の疑問点。
日本の死刑と正統性競争について文化から説明しているが、
ほとんど意味不明で了承し難い。

明らかに勘違いと思われる部分。
刑事司法、刑罰、犯罪者を主役とする修復的司法は、
中世の復讐社会へ引き戻すという。
これはひどい事実誤認。
修復的司法の主役は被害者と地域社会であるから正反対である。

『インターネットの法と慣習』
白田秀彰(情報法、知的財産権法)
ソフトバンク新書(2006)


ネットに政治的議論の場をもたらす。

日本とアメリカでは法律の重みが違う、
日本の法律は重いのだ。
日本はアメリカの真似をしてはいけない。

電子投票を導入すれば日本の政治はがらりと変わるという。
投票率の低い若者にこそネットユーザーが多いからである。

・今日の一言
杀人偿命。
人を殺したら命をもって償え。
If you killed someone, you need to die in order to pay for it.
사람을 죽이면 죽음으로써 속죄해라.

タグ:王雲海
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人が人を殺すとき-進化でその謎を解く [本(法律と犯罪]

『人が人を殺すとき/マーティン・デイリー&マーゴ・ウィルソン/新思索社/1999』
著者:心理学者
評価:殺人とは何か客観的に知る良書

生物学的観点から分析すると決まって出る批判が決定論。
しかし著者は決定論の非難は、
行動に関するすべての学問に向けられるべきという。
全く同感で、そもそも決定論でない学問なんて成立しないのだ。

犯罪学の陳腐なデマ。
人は多く家族に殺されるもの。だから、
"午前3時のセントラルパークは自分の家の寝室より安全だ"
これは典型的な頻度と確率の混同。
家族とは接触時間が長いというだけのことなのだ。

人は血のつながりで人への態度を変える。
非血縁の同居者は、血縁であるより11倍殺されやすいらしい。

ほとんどトンデモ理論と考えられているフロイトが
今でも人気があるのはなぜか?
フロイトのエディプス理論が人気があるのは、
それが大人の聞きたいことだからという。
マスコミで流れる情報と構造が同じだな。

殺しの動機は口論と名誉。
殺しはつまらない理由で起こるのだ。

殺人の男女差。
男女が平等になり女性の殺人は増えたか?
暴力的な犯罪における女性の割合はこの30年間減少している。
殺すのはやはり男なのだ。

また、殺人よりも強盗殺人について男性優位。
お金目的で人を殺すのは男であり、女はあまり殺さないのだ。

殺人は科学の発展により増えたのか?
非暴力的な狩猟採集民のクン・サン。
50年間で殺人事件は22件だった。
年間100万人あたりとすると293件となる。

対してカナダは25件強、アメリカやブラジルはその数倍程度。
都市に住む現代人は人を殺さないのだ。

最も少なかったのがアイスランド。
1900~1939年に殺人事件は2件で、
100万人あたり年間0.5件だったという。

逆に最も多いと見られるのがニューギニアのいくつかの部族で、
5000~8000件になるという。

殺人は必ずしも罰されるわけではない。
1980年のマイアミで殺人が処罰されたのはたった1/8。
100人以上が万引きや不法侵入者を射殺して正当防衛になっている。
過剰防衛と思うんだけどな……

・今日の一言
アメリカの殺人事件は多くが正当防衛で無罪になる。
Most of murder cases in US are self defense, so they become innocent.
미국의 살인사건의 대부분은 정당방위로서 무죄가 된다.
许多美国的杀人事件由于正当防卫被判为无罪。

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累犯障害者-獄の中の不条理 [本(法律と犯罪]

『累犯障害者』
山本譲司(元衆議院議員)
新潮社(2006)


日本の刑務所は福祉施設だった。
衝撃のレポート。

秘書給与流用事件で服役した
元衆議院議員が見た刑務所の実態とは?

駅に放火した老人。
刑務所に戻るための放火である。
出所からずっと野宿生活していた。
区役所で生活保護申請したが住所がないため拒絶される。
刑務所にいたから住所がないのは当然だが、相手にされなかったのだ。
そして、刑務所の方が暮らしやすいといって戻っていくのである。

犯罪者の実像。
2004年の新受刑者の内の約3割は知的障害者という。
足し算の出来ない受刑者や、
今、刑務所にいることが理解できない服役者もいる。
刑務所の一部が福祉施設と化しているのだ。

しかし刑務所には福祉施設としての体制はない。
小学生に痴漢した男は、
刑務所内でロリコン雑誌を購読していたという。

レッサーパンダ男の悲劇。
この殺人者はIQが49しかなかった。
養護学校卒業後の人生の半分は拘置所と刑務所生活。
暴力を受け前歯はなく、父も知的障害者。
妹は中学卒業後一人で家族を養い25歳で末期癌で死去してしまう。
より詳しくはこちらで。
『自閉症裁判:レッサーパンダ帽男の「罪と罰」』

知的障害者は犯罪者に仕立てやすい。
一貫して犯行を認めていたのに犯人出現で無罪になった男。
知的障害者は怖くて相手に合わせてしまうためである。

知的障害者を利用した悪のビジネス。
知的障害者と養子縁組して年金と生活保護費を詐取するヤクザ。
ヤクザによる障害者の囲い込みである。

女性の知的障害者たちはまた違う側面を見せる。
親子二代で売春婦という知的障害の一家。
福祉関係者が嫌う知的障害者の恋愛。

聾唖者の犯罪。
聾唖者だけの暴力団もある。

日本語対応手話でなく聾唖者の手話を話す手話ニュースの木村晴美。
彼女の語る聾唖教育の口話主義の空しさ。
自分に聞こえない発音の良さで賞をもらうこと。

聾唖教育の9歳の壁とは、9歳程度で知的水準が止まること。
これは明らかに口話主義の弊害である。
かのヘレン・ケラーのことを考えれば、
知的水準が低く止まるのはおかしなことである。

人類全体の知的障害者比率は2-3%。
しかし日本の知的障害者総数は人口の0.36%。
この差は何を意味するのか?
日本には福祉対象外の200-300万人の隠れた知的障害者がいるのだ。

・今日の一言
日本には福祉を受けられない知的障害者が200万人以上いる。
Japan currently has more than 2,000,000 mentally disabled people who can't receive welfare.
일본에는 복지의 대상이 아닌 지적장애인이 200만명이상 있다.
日本有200万以上的智障者不是社会福利对象。

タグ:山本譲司
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戦前の少年犯罪 [本(法律と犯罪]

『戦前の少年犯罪/管賀江留郎/築地書館/2007』
著者:ウェブサイト少年犯罪データベース主宰者
評価:戦前の教育と少年犯罪の実態を知る

著者のホームページはこちら。
少年犯罪データベース

昭和2年と13年の女子小学生の殺人事件。
女子小学生の殺人は過去にもあった。

頻発する幼女レイプ。
戦前の強姦はすべて幼女レイプ。
満14歳以上の強姦はすべて示談、
もしくは犯人と結婚させられるから
強姦の親告がないらしい。

あらゆる犯罪において、質、量ともに戦前は現代を圧倒している。

昔の親は放任主義が普通。
躾にうるさくなったのは最近のこと。
子どもはのびのび自由に育てるのが日本の伝統。
厳しく躾るのは西洋や中国のこと。
親子の間や寺子屋や藩校でも体罰はなかった。
日本は子どもに暴力を振るう西洋のような野蛮な国ではないのだ。

そして、1879年に世界に先駆けて学校で体罰禁止が決定。
日中戦争中も教師の体罰は絶対禁止。
軍隊も体罰は禁止だった。
不法な私的制裁は発覚すれば重罪だった。

2.26事件は少年犯罪そのもの。
上は理解してくれると考え、死刑にはならないと甘えていたのだ。

教師を恐喝した大学生許斐氏利。
後に大陸で特務機関で活躍し、戦後は日本初のトルコ風呂を創った。

原敬首相暗殺の中岡良一。
恩赦後は満州国軍で佐官待遇で対ソ連諜報活動した。

誰かテレビや新聞がいかに人を錯覚させるかということをテーマに、
『メディア・イリュージョン』というタイトルで本を書かないかな?
そこそこ売れると思うんだけど。

印象的な個別の例を複数列挙することで、
さも頻度自体が多いように思わせてしまい、
実際にはない変化を読者/視聴者に信じさせてしまう。
メディア・イリュージョンのパターンは基本的にこれだけ。
だけどこれが、いかに日本を蝕んでいることか……

・今日の一言
日本は子どもに暴力を振るう西洋のような野蛮な国ではなかった。
Japan was not a barbarous country like the Western countries where people use violence to discipline their children.
일본은 아이들에게 폭력을 휘두르는 서양 같은 야만인 나라가 아니였다.
日本不是像西洋国家那样对小孩子们施加暴力的野蛮国家。

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この国が忘れていた正義(文春新書) [本(法律と犯罪]

『この国が忘れていた正義』
中嶋博行(作家、弁護士)
文春新書(2007)


知識に欠陥があるが重大な提案が多数あり興味深い。

高校生アンケートによると、女生徒の4割は痴漢体験あり。
しかも痴漢を届けるのは一割に満たない。
そして、一部の痴漢が捕まらずに繰り返すのである。
さらに、強制わいせつ罪で入所しても、
一年以内で43%がまた戻ってくる。

この本の内容は主に、アメリカの犯罪対策史である。
いかに犯罪者は更生されずに繰り返すものであるかが指摘される。
再犯者率は4割。
コロンバイン高校銃撃犯は、更生プログラムの模範的優等生だった。
窃盗容疑で逮捕されていたのだ。

日本の八尾の三歳児投げ捨て事件。
これも幼児誘拐と傷害で6回の逮捕歴があった。

アメリカは囚人大国。
日本の囚人数は6.6万人だが、アメリカは200万人以上いる。
囚人を増やしたので失業率が低下したほどである。
犯罪者は失業者の比率が高いからからだ。

アメリカの司法取引。
性犯罪者に外科的な去勢手術することで、刑期が短くなった。
私はこれは考えるべきことと思う。
性犯罪というのは、心理的に治るものではない。
本人のためにこそ、外科的に対応すべきと思う。

日本の更生モデルは失敗の連続だったという。
しかし、今も日本の犯罪率は世界最低だし、
再犯率も最低レベル。
日本の犯罪対策は極めて優れているのだ。

著者は刑務所民営化を勧めている。
囚人の年食費20万だが、稼ぎは9万。効率が悪い。
さらに犯罪者のほとんどが被害者に償いをしないのだ。
働いて被害者に償いさせるべきという。
民営刑務所では利益が出れば被害者へ賠償するからだ。
国内の刑務所に従順で健康で働き盛りの人間が大勢いる、
これを使わない手はないという。

……事実を知らなすぎる。
今や日本の刑務所は高齢化が進み老人ホームと化しているのだ。
健康なのは言葉の通じない外国人ばかりだ。
しかも犯罪者の多くは反抗的な人ばかりである。
民営化したところでほとんど利益が上がらないのは明白である。
アメリカ同様に囚人虐待が多発するだけだろう。

中学生や小学生が純真だったのは一昔前の話だという。
いいえ、昔から純真ではありません。
というより、いつの時代にも
純真な子どももいればそうでない人もいるわけで、
その比率が変化したということありません。

この本は、優れた提案も多くある。

日本の戦前には、
刑事裁判に付属して民事裁判を行う附帯私訴というのがあった。
これは是非、復活させるべきという。全く同感である。

公設取立人を創設せよという。
そしてそれには公安調査庁を公設取引人に転用すればよいという。
とても面白いアイディアだ。

また犯罪賠償刑務所を創設して被害者に賠償させよという。
日本には労役場という罰金が払えない人が働く場所がある。
年に7000人が入所している。
国に対しては強制賠償できるのだから、
民間にも利用させるべきというのだ。
これも興味深い。

・今日の一言
犯罪者の更生より被害者への賠償が大切だ。
Atonement to victims is more important than rehabilitation of criminals.
범죄자의 갱생보다 피해자에의 배상이 중요하다.
对受害者的赔偿比犯罪者的重新做人更重要。

タグ:中嶋博行
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父と娘の法入門(岩波ジュニア新書) [本(法律と犯罪]

『父と娘の法入門』
大村敦志(民法)
岩波ジュニア新書(2005)


中高生のための法教育。

児童の権利条約7条。
名前を持つ権利。
すべての人間が平等であることを示している。

養子と里親の違い。
里親は頼む側が負担するもの。
里親はあくまでも仮の親ということ。

法律的には、母は産んだ人だが、
父は手を挙げた人、すわなち認知した人。
父はわからないかもしれないから。

人と同じ扱いで財産が持てるのが法人。
法の世界で人というプレイヤーの資格を持つのである。

契約しても社会的に許容できない内容ならば無効であること。
このことは、意外によく理解されていないと思う。
当事者同士がそれで良いとどんなに納得していても、
それを許容することで社会がダメージを受けるならば、
そうした契約は無効なのである。

子どもはこれを特に勘違いしやすいと思う。
言ったことを守らなければならないという常識から、
そもそも言うこと自体が許容されないことがあるのを知らないのだ。

学校教育法によると、懲戒権はあるが体罰は禁止されている。
しかし、親の体罰は禁止されていない。
ここに児童虐待の生まれやすさがある。

借金のある親の遺産。
借金も含めて遺産相続するか、あるいは借金も遺産も放棄するか、
このどちらかを選択する。

思うに、この選択ができること自体に矛盾を感じる。
私は、生活で共有する部分、
自宅や仕事など以外は、一切相続できないべきであると考える。

・今日の二言
社会的に許容できない契約は当事者同士が納得していても無効である。
A contract that can't be socially accepted is void, even if it has the agreement of both parties.
가령 당사자끼리가 납득하고 있어도 사회적으로 허용할 수 없는 계약은 무효이다.
社会不能容许的契约,如果当事者都同意,也是无效的。

子どもには名前を持つ権利がある。(児童の権利条約7条)
The child shall have the right from birth to a name.
(7 articles of Convention of the Rights of the Child)
어린이는 이름을 가질 권리가 있다.(어린이 권리조약 7조)
孩子有起名字的权利。(儿童权利条约7条)

タグ:大村敦志
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ロールズ 正義の原理(現代思想の冒険者たち23) [本(法律と犯罪]

『ロールズ 正義の原理』
川本隆史(倫理学、社会哲学)
講談社(1997)


ロールズの入門書。

正義論で有名なロールズの入門書。
正義はある、公正な社会を目指す努力は無駄ではない。

ロールズは功利主義にとってかわる正義論を考えた。
功利主義は正義と公正についての私たちの直観に反している。
功利主義とは、社会全体の幸福を点数化して、
その幸福点数を最大になる社会を目指すべきというもの。

ロールズは、正義の至上性に関する直観的確信を持つ。
功利主義と対決し社会契約説の読み替えることで、
揺るぎない正義を追い求める。

ロールズ正義論の特徴。
自由の優先性。最大限の自由の保障。何ものとも融通を認めない。
ある個人の自由はどんな利益があっても奪うべきではないとした。
格差原理の平等と効率性のバランス。
才能の分配=共通資産。人間の能力もまた共通資産と捉える。
生活と科学を照らし合わせて倫理原理を提出する反照的均衡の方法。

倫理学の目標とは?
複数の利害が競合するときに、
決断に用いる正当な諸原理を定式化すること。

ロールズの社会正義についての重要な原理・格差原理

生まれつき恵まれた人々は、
不遇な人々の暮らしを改善するときのみ、
自分たちの幸運から利益を得ることが許される。

フランス革命の指導理念、自由・平等・友愛とロールズの久実芦原。
自由とは平等な自由、平等とは機会の均等、友愛とは格差原理。

カントは正義を重んじた。
もし正義が滅びるなら、
人間が地上に生きることにもはや何の価値もないといった。
正義なしの人間に価値を認めなかったのだ。

村瀬学の13歳の社会契約論とは?
14歳以後は家の人から法の人へとなる行事を行う。
いじめ対策になりまた、法とのつながりを自覚させる手続きとなる。
大人への仲間入りの儀式をはっきり作るは効果的かもしれない。

・今日の一言(ロールズ・格差原理)
生まれつき恵まれた人々は不遇な人々の暮らしを改善するときのみ自分たちの幸運から利益を得ることが許される。
The difference principle permits inequalities in the distribution of goods only if those inequalities benefit the worst-off members of society.
사회경제적 불평등은 최소 수혜자의 입장을 개선시키는 한도 내에서 정당화될 수 있다.
那些先天有利的人,不论他们是谁,只能在改善那些不利者的状况的条件下从他们的幸运中得利。

タグ:川本隆史
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リアルジャスティス-修復的司法の挑戦(RJ叢書) [本(法律と犯罪]

『リアルジャスティス』
テッド・ワクテル(教育学、組織リアルジャスティス)
成文堂(2005)


修復的司法の実例の解説。
新しい法思想を知る。

修復的司法の特徴。
加害者に受身でなく積極的に責任を取るように求める。
加害者の責任とは刑罰を受けることでなく、
被害者に共感し被害を修復することと考える。
司法の論理性より、当事者たちの感情の表出が許され求められる。
被害者の心の回復に重点があるのだ。

被害者家族が加害者に直接自分の気持ちを伝え疑問をぶつけることで、
気持ちが癒されるという。
また、被害者の感情の修復の効果があるだけでなく、
加害者に被害者の感情を知らせる機会を作ることにもなる。
これにより加害者の心を変える可能性もあるとされる。

最も苛酷な例として、レイプ殺人犯との対面する家族のケースもあった。
この場合でも、決して相手を許す気持ちになるわけではないが、
被害者サイドに心の区切りをつける効果があるようだ。

カンファレンス=話し合いにより解決をはかる方法は、
もともとはマオリ族の伝統であったのが、
ニュージーランド司法に取り入れられ、
さらにオーストラリア警察により行われているらしい。

研究者にも支持する意見がある。
ブレストウェイトは、今までの司法の考え方を逆転させた。
なぜ悪事を働いたのかでなく普通の人はなぜ正しいことをするのか?
こう考えると、家族と友人の存在が鍵となる。
周囲の人間関係こそが効果的なのである。

人間関係の修復に重点をおく修復的司法では、
加害者の再犯率も低いと見られている。

著者は厳罰主義のアメリカに疑問を持っている。
アメリカの囚人は1986年に74万人だったのが、
1996年には163万人になった。
そして今は、200万人を超えているのだ。

『修復的司法の探求-RJ叢書』
高橋則夫(法学)
成文堂(2003)


修復的司法についての概念の話。
実例がなく面白くない。

修復的司法が従来の応報的司法とどう違うかと列挙。
考え方の話ばかりで、実践例や結果や分析がほとんどない。

通り魔被害者の治療費は自費だが、
加害者の治療費は国が全額負担されるという、
被害者放置の現在の司法体系。
被害者の思い、なぜ裁判官に謝って被害者に謝らないのか。

犯罪を人間関係の破壊とし、
その関係を修復することを司法の役目と捉え、
被害者や周辺の関連する人たちも参加するのが修復的司法である。
犯罪者への教育効果と、被害者の満足度は高いようだ。

難しい点としては、暴力団などの場合、
加害者に恐怖して刑罰が曲がる可能性があるように思う。
あるいは、同じ犯罪でも被害者の当たりはずれ次第で、
罪の重さが変わってしまう可能性も否定できない。
考えるべきことは多いが、これからの司法体系だといえよう。

・今日の一言
加害者の責任とは刑罰を受けることでなく被害者に共感し被害を修復することである。
가해자의 책임과는 형벌을 받는 것이 아니고 피해자에게 공감하고 피해를 회복하는 것이다.
加害者的责任不是受到刑罚,而是同感受害者回复受害。
Perpetrator's responsibility is not to receive penalty, but to sympathize with the victim and restore the damage.

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自然主義の人権論-人間本性に基づく規範 [本(法律と犯罪]

『自然主義の人権論/内藤惇/勁草書房/2007』
著者:法学
評価:進化生物学の人間理解から人権を導き出す・野心作

『自然主義の人権論』 (小田中直樹[本業以外]ネタ帳)で発見。
面白そうなので読んだら、大当たり。

今までの人権論とは異なる新しい人権論。
進化生物学の人間像から配分的人権論を展開する。

人権とは?
人間がただ人間であるということにより有する権利。
生まれながらに持っている権利である。
アメリカの独立宣言とフランスの人権宣言により、明確に宣言された。

事実と規範の二元論。
"である"から"べき"は導き出せない。
事実から規範を導出する誤謬、自然主義的誤謬を越える方法はあるのか。

それが"目的達成のための手段的合理性"論法である。
目的実現の合理的手段として"べし"が正当化されるのである。
人間に関する普遍的事実の組み合わせから
規範を導くことができるのだ。

ただし、哲学的には、事実と価値は区別できないという考えや、
そもそも人間は事実を認識できず、
認識できるのは価値のみという考えもある。
私は後者を推している。

著書では、今までの人権論を論評した後、
進化生物学の観点から、人権を生む土台というべき感情を考察する。
ジョンストンの感情の意味、恐怖、怒り、嫌悪、驚きなどが挙げられる。

このあたりは、私の著書HPの方が詳しい。
各感情を整理して
その感情間の発達関係を系統図化したのは今のところ私だけだろう。

国内における繁殖資源獲得機会に大きな格差のある例として、
奴隷制と植民地支配が挙げられる。
新の王莽は飢饉と経済失政の後の農民反乱で倒れた。
その後に後漢を建国した光武帝は奴婢を解放し、
奴婢と良民の平等を宣言しているのだ。
あまりに大きな格差を解消するため、底辺の底上げをしたのである。

徳川家康の言葉、
"百姓は生かさぬように殺さぬように"
これはまさに支配層の利益最大化の方法として計算されたものという。

家康は、あの安定した江戸時代を作り、
平和と安定をもたらした英雄なのに
人気がいまいちなのはこういう言動のせいかも。

ポール・ルービンは、
一夫多妻で配偶にあぶれた男性とテロの関係を指摘する。
面白い考えである。
すると、サウジアラビアを支持するアメリカは
間違っているというべきかもしれぬ。

19世紀のスウェーデンの人口は300万から400万人。
ところが年平均38000人もの移民が発生していた。
これこそが、スウェーデンの高福祉政策の理念もとであるらしい。

著者は、人権とは繁殖資源の分配方法の合理性の問題と考える。
身分制とは、繁殖資源を固定して配分する方式。
君主制とは、人為による分配の方式。
それよりも、
人権のルールに基づいて繁殖資源を分配する方が合理的とするのだ。

生命、自由、幸福追求権、学問の自由、教育、労働、
人身の自由なども繁殖資源分配のためのルールである。

合理性とは社会が安定し、繁殖資源の効率性を高めるということだろう。
このあたり私の著書の最終章や、HPで提示する、
感情充足社会こそが安定社会であるとする考えと似ていて面白い。

著者が提示するのは、脱・価値論の配分的人権論。
人権を集団/国家内の配分原理とする。
だから国家の存立に抵触する人権の行使は制約できるとする。

すると人権について言われる前-実定法性、
人権は法の規定に先立って成立しており、
憲法はそれを後から確認したものであり、
人権は国家にも先立つとする考えは否定されるのだろうか?

これは人権が時代によって変化することを意味するだろう。
配分原理であるから、配分できるものが大きくなるにつれて、
人権もまた大きくなる。
生活の保障、教育を受ける権利など、
社会の発展とともに新しく生まれた人権なのだろう。
考えてみれば、原始時代に教育受ける権利などあろうはずもない。

これは国家や文化により人権が異なることではない。
文化相対主義ではないのだ。
しかし、人類全体の科学技術や経済水準によって、人権は拡大する。
人権は、そのときの可能性によって大きさが決まるのだろう。

これはさらに将来、
動物権やロボット権といった方向へ拡大することも考えられ、興味深い。
まあ、"人"権じゃないけども。(笑)

・今日の一言
人権とは資源の分配ルールである。
Human rights are distribution rules of resources.
인권는 자원의 배분 규칙이다.
人权是资源的分配规则。

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差別原論:〈わたし〉のなかの権力とつきあう [本(法律と犯罪]

『差別原論』
好井裕明(社会学者)
平凡社新書(2007)


差別を減らすにはどうすべきか考える・ただし欠陥あり。

どうもこの著者は差別というものをあまりわかっていないようだ。
差別を減らすにはどうすればよいのかを考えているのだが、
そもそも差別とは何かをわかっていないため、
微妙にずれたことを述べてしまっている。

はじめからわかりきっている当然のことを
執拗に確認することが差別を考えることかという問い。
これは確かに差別を考えることから遠ざけてしまうだろう。

そして、
差別とはしてはいけないこと、あってはならないことではない、
差別とはしてしまうもの、
減らすためにどうすればよいか考える手がかりだとする。

重度障害の子の介護に疲れた親の子殺し事件。
減刑嘆願がたくさんあったが、それに運動団体からの告発が起こる。
障害者は殺されても当然なのかと。
減刑するということは、
障害者の命は健常者より軽いということではないのかと。

刑罰の原理は、一般予防、特殊予防、応報刑の3つだが、
運動団体の告発は典型的な応報刑の考え方である。
従来の人権団体の考え方とはかみ合わないのが興味深い。
日本は西欧に比べて応報刑の考え方が根強いと思う。

差別発言をジョークで返すエピソード。
ジョークの本質は差別を笑い飛ばすことという。

ジョークやユーモアの本質は対等化である。
差別発言とは順位付け行動、自己の優越宣言であるので、
ジョークでそれを平等状態へ引き戻すのである。
ただし、上から下へのジョークは嘲笑であり、
下から上へのジョークは諷刺である。

この本は差別とは何かを考えるのによい本だが、
差別を考えるのに必要なのに言及されていないことがある。
それは以下の2つである。

1.生物学なしに差別は理解できない
この本の著者は
そもそも差別とは何かということを理解しているのか疑問を感じた。
差別とは"可能性の剥奪"である。
できるはずのことをできなくしてしまうのが差別なのである。

歪められたカテゴリーを、無批判に受容するこひとが差別につながる。
普段からどれだけカテゴリー化に自覚的になれるかという。

歪められたカテゴリーが歪んでいるかどうかを
どのように理解するのか、あるいは判定するのか。
これは自然科学、特に生物学の力が必要な部分である。
科学的にそのカテゴリーの可能性を正しく把握しなければ、
差別かどうか判定できないのである。

未成年が酒を飲むことが許されないのは未成年差別だろうか?
もちろん未成年の身体的未発達という生物学の知識があるから、
差別ではないとみなされるのだ。
酒を飲むことで、むしろその未成年の可能性が剥奪されるから
飲酒が許されないのである。

男女差別は、その能力において男女差がないと判明しているのに、
それを無視するから差別なのである。

だから能力差がある部分について、
例えばオリンピックの競技は種目がそれぞれ男女が分かれているが、
これが差別ではないのは、
身体運動能力には差があると生物学で認められているからだ。

性差別、部落差別、人種差別、民族差別……
すべては生物学の正しい知識があればこそ、
間違っていることが理解できるのである。
差別に対する教育とは、生物学を正しく学ぶということなのだ。

2.差別には差別発言と差別行為がある
本文には、先輩と言葉を巡って口論する部分がある。
差別語を口にした先輩に対して注意すると
「言葉だけの問題ではない、言葉尻を批判しても意味はない」
と先輩に言われ、
それに「私はこんな研究者にだけはなるまい」と思ったという。

これを読むと
著者が差別発言と差別行為の本質的な違いに気づいているのか
危うく感じさせられる。

差別は、差別発言と差別行為に分類される。
この二つは似て非なるものである。

差別行為とは、
就職差別のように実際の行為により不利益を与えるものだ。
◯◯というだけで、就職試験の成績がよいのに落とせば、
明らかに差別である。
女性の就職差別などは未だにまかり通っているのはいうまでもない。

対して差別発言とは、
差別行為を生み出したカテゴリーを発言することである
差別発言だけで差別行為がなくても差別とみなされるのは、
それが順位付け行動による威嚇、脅迫になるからだ。
ある上司が「女のくせに」とか言うのは、
自分が相手の上位者であることを認識させようとする行為である。
すなわち、差別行為は不利益そのもので直接攻撃だが、
差別発言は不利益の宣告、すなわち脅迫なのである。

これがわかっていれば、
人権団体の差別発言への糾弾行動に問題が多かったのもわかるだろう。
結局、脅迫に対して脅迫して返したに過ぎないからだ。
差別的優越性に対して、
道徳的優越性を持って君臨して威嚇しているからだ。
これは全くの対処療法であって本質的な解決にはならない。
実際、近年のマスコミで
人権団体がまるで利益団体のように非難されるようになっているのも
糾弾で受けた恨みが返ってきている部分があるだろう。
繰り返すが、正しい人権教育とは生物学を学ぶことである。

ジョークの力をどう評価するかは難しい。
ジョークによる返しは、差別発言を差別行動から分離する効果がある。
しかし、分離すると言うことは差別発言を消すことにはならず、
むしろ温存するという側面もあるので要注意である。
差別行動を減らす効果はあるが、差別発言が減るとは限らない。
「このおばはんが」という上司に「このおっさんが」と返し、
これがそのまま定着する可能性だってある。
この二人の間では、差別発言でなくジョークとなるかもしれない。
しかし、ジョークで返せない人とっては依然として差別発言である。

言葉狩りとどちらがよいのかは一長一短であろう。
どのように組み合わせるかは、
ケース・バイ・ケースで考えていくしかない。
あまりに強い差別行為をともなった言葉は禁止し、
弱いものは法律家の使う反対解釈をジョークで述べて返すしかない。

差別語を使えなくしても、新しい言葉を差別行為とともに使えば、
その言葉も新しい差別語になる。
被差別部落、という言葉は正式だろうが、いじめの場で、
"この部落が"と発言する人が多くなれば、
"部落"という言葉自体が差別語に変わり、新しい言葉が必要になる。
新しい言葉、"池沼"とか"DGN"なども差別語になるかもしれない。
2ちゃんねるに対して人権団体が訴訟を起こしていないのは、
彼らが差別発言とは何かを理解していない証拠だろう。
差別発言の氾濫は差別行為へのしきいを下げてしまうのに。

・今日の一言
生物学を理解せずに差別を無くすことはできない。
You cannot eliminate discrimination without understanding biology.
생물학을 이해할 수 없으면 차별을 없앨 수 없다.
不懂生物学不会消灭歧视。

タグ:好井裕明
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法哲学入門(講談社学術文庫) [本(法律と犯罪]

『法哲学入門/長尾龍一/講談社学術文庫/2007』
著者:法哲学
評価:多彩で笑える例が多数あり楽しく読める良書

法哲学もいろいろ
規範的法哲学:正義の問題に体系的な解答を与える
理論的法哲学:正義の問題に客観的解答があるか考察する
法理学:正義の問題を留保し実定法の分析に任務を限定する
仮言的規範的法哲学:正義の問題を留保し仮にモデルを提出する
法思想史学:さまざまな正義のモデルを比較検討する
本ごとに自分はこれって名乗って欲しいところだね。

国家とは大きな強盗団
そう答えた人たちに、
アウグスティヌス、
アレクサンダーが問いつめた海賊首領
石川五右衛門
などがいる。

そしてそれが事実なのは、
1801年、英国海事裁判所が、
海賊の根拠地アルジェリアを実行支配を理由に国家として承認したこと。

国家とは領域を持つ武力組織だというのがよくわかる。

精神医学者の岸田秀は、年寄りが昔は良かったというのは
母の子宮への回帰願望だといっているらしい。
あのね、そんなの単に順応力の低下で説明できるけど。
年齢とともに新しいものを取り入れる力が低下すると、
物事が自分の思うようにいかなくなり、
昔は良かったと思うようになるということ。

自分の講義のつまらなさに嫌気がさし喫茶店で休んだ講師。
そこで学生たちと鉢合わせして、まさに以心伝心……

何でも反対解釈で考える法律家
◯◯禁止とあれば、では◯◯はしてはいいのだ、と考えるわけ。
すなわち、法律家とは言葉の意味の範囲に注意するということ。

男子同性愛者の典型は、
弱い父親と強い母親との間で母親に溺愛されて育った末っ子という。
誰だそんなこと言ったの?
基本は遺伝がベースにあるのだが。

良心の命令を体系化したものが自然法。
時代や社会を超えて共通であるという。

自然法の良心の体系を知るには、良心と呼ばれる、
罪悪感、恥、憐れみ、謙遜、憤り、感謝などを知る必要がある。
そして、それらの体系構造を捉えているのは、
私の『感情の進化系統図』
である。
詳しくは私の本やHPを読む必要がある。
私の理論体系は法哲学者にも有益であることがわかる。
やはりもっと広く売れる本が書けなきゃだめだと思う次第。

・今日の一言
法律家は何事も反対解釈で考える。
Attorneys always interpret opposition.
법률가는 무슨 일도 반대 해석으로 생각한다.
法律家什么事都以反对解释考虑。

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