SSブログ

この国が忘れていた正義(文春新書) [本(法律と犯罪]

『この国が忘れていた正義』
中嶋博行(作家、弁護士)
文春新書(2007)


知識に欠陥があるが重大な提案が多数あり興味深い。

高校生アンケートによると、女生徒の4割は痴漢体験あり。
しかも痴漢を届けるのは一割に満たない。
そして、一部の痴漢が捕まらずに繰り返すのである。
さらに、強制わいせつ罪で入所しても、
一年以内で43%がまた戻ってくる。

この本の内容は主に、アメリカの犯罪対策史である。
いかに犯罪者は更生されずに繰り返すものであるかが指摘される。
再犯者率は4割。
コロンバイン高校銃撃犯は、更生プログラムの模範的優等生だった。
窃盗容疑で逮捕されていたのだ。

日本の八尾の三歳児投げ捨て事件。
これも幼児誘拐と傷害で6回の逮捕歴があった。

アメリカは囚人大国。
日本の囚人数は6.6万人だが、アメリカは200万人以上いる。
囚人を増やしたので失業率が低下したほどである。
犯罪者は失業者の比率が高いからからだ。

アメリカの司法取引。
性犯罪者に外科的な去勢手術することで、刑期が短くなった。
私はこれは考えるべきことと思う。
性犯罪というのは、心理的に治るものではない。
本人のためにこそ、外科的に対応すべきと思う。

日本の更生モデルは失敗の連続だったという。
しかし、今も日本の犯罪率は世界最低だし、
再犯率も最低レベル。
日本の犯罪対策は極めて優れているのだ。

著者は刑務所民営化を勧めている。
囚人の年食費20万だが、稼ぎは9万。効率が悪い。
さらに犯罪者のほとんどが被害者に償いをしないのだ。
働いて被害者に償いさせるべきという。
民営刑務所では利益が出れば被害者へ賠償するからだ。
国内の刑務所に従順で健康で働き盛りの人間が大勢いる、
これを使わない手はないという。

……事実を知らなすぎる。
今や日本の刑務所は高齢化が進み老人ホームと化しているのだ。
健康なのは言葉の通じない外国人ばかりだ。
しかも犯罪者の多くは反抗的な人ばかりである。
民営化したところでほとんど利益が上がらないのは明白である。
アメリカ同様に囚人虐待が多発するだけだろう。

中学生や小学生が純真だったのは一昔前の話だという。
いいえ、昔から純真ではありません。
というより、いつの時代にも
純真な子どももいればそうでない人もいるわけで、
その比率が変化したということありません。

この本は、優れた提案も多くある。

日本の戦前には、
刑事裁判に付属して民事裁判を行う附帯私訴というのがあった。
これは是非、復活させるべきという。全く同感である。

公設取立人を創設せよという。
そしてそれには公安調査庁を公設取引人に転用すればよいという。
とても面白いアイディアだ。

また犯罪賠償刑務所を創設して被害者に賠償させよという。
日本には労役場という罰金が払えない人が働く場所がある。
年に7000人が入所している。
国に対しては強制賠償できるのだから、
民間にも利用させるべきというのだ。
これも興味深い。

・今日の一言
犯罪者の更生より被害者への賠償が大切だ。
Atonement to victims is more important than rehabilitation of criminals.
범죄자의 갱생보다 피해자에의 배상이 중요하다.
对受害者的赔偿比犯罪者的重新做人更重要。

タグ:中嶋博行
nice!(4)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 3

この本はまだ読んでいませんが、他作はすでに読んでいます。
中島氏はラジカルな犯罪被害者理論を展開しています。
勉強されられます。
by (2007-11-07 06:57) 

Kay-akira_Hirota

 修復的司法の観点からいうと、加害者が被害者に直接償いをさせるというのは、加害者にとっても更生の可能性を高めるよい方法です。加害者に罪そのものを理解させることができるからです。
 国や司法でなく、生きた被害者へ向かって罪を償わせるのが道理ですよね。
by Kay-akira_Hirota (2007-11-07 20:37) 

クレーマー&クレーマー

今日までこの本についてまったく知りませんでした。さっそく読んでみようと思います。


by クレーマー&クレーマー (2015-04-20 10:41) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。