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調べる技術・書く技術(講談社現代新書) [本(読書と文章]

『調べる技術・書く技術/野村進/講談社現代新書/2008』
著者:ノンフィクション・ライター
評価:ノンフィクションの書き方


ヨーロッパ人の個性。
イギリス人は歩きながら考える。
フランス人は考えてから走り出す。
スペイン人は走ったあとに考える。

日韓中で比較すると、
韓国人が走ったあとに考えるのは確定。
考えてから走り出すのは日本人で、
歩きながら考えるのは中国人かな?

養老孟司はインタビューで相手の知識を試すらしい。
編集者を"勉強しなおしてこい"と追い返したこともある。
……というか、養老先生、
本を書く前にそのジャンルを勉強した方がいいんじゃない?
面白いからって放言しちゃいけませんよ。

本を書くにはたくさん本を読む必要がある。
本田靖春は、一日に二三冊をその関連の本を、
三年読み続ければその分野のオーソリティーになれるという。
しんどいわい。

訪問は約束の時間ちょうどか一、二分遅れが望ましい。
これは常識だよね。

原稿に集中するための技法。
原稿を書く前にお気に入りの文章を読むという。
それをペン・シャープナーというらしい。
私は何にしようか?
文体が好きなのは、平塚らいてうなので、
これを読んで勢いづけようか。

『小論文トレーニング/貝田桃子/岩波ジュニア新書/2003』
著者:高校国語教諭
評価:高校作文授業日記

羽曳野市で先生に制服を着せようという話があった。
生徒からすると、自分たちに許されないことを先生がすることに、
不公平を感じているわけだ。
これは、義務と自由の関係を考えなければならない。
自由の大きさは義務の大きさに比例するのだ。
子どもは義務が小さく、自由も少ないのだ。
なぜなら能力が小さく大きな義務をこなせないからだ。
問題は大人に義務を履行しない人が多いということだろう。

『ぐっとくる題名/ブルボン小林/中公新書ラクレ/2006』
著者:コラムニスト、小説家
評価:軽いエッセイ

エイリアン2はAliens、1作目から複数形になっただけだそうな。
エイリアン、エイリアンズ……2よりいいね。


『科学者が見つけた「人を惹きつける」文章方程式/鎌田浩毅/講談社+α新書/2004』
著者:火山学者
評価:分類してラベリングしただけで内容なし

こんなの科学と呼ぶなよ。科学に失礼というものだ。


・今日の一言
原稿を書く前に読むお気に入りの文章のことをペン・シャープナーと呼ぶ。
Favorite sentences which are read before writing a manuscript are called "pen-sharpener".
원고를 쓰기 전에 읽는 마음에 드는 문장을 펜샤프너(sharpener)라고 부른다.
写原稿之前喜欢读的文章叫"卷钢笔刀"。

タグ:野村進
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差がつく読書(角川oneテーマ21) [本(読書と文章]

『差がつく読書/樋口裕一/角川oneテーマ21/2007』
著者:予備校・通信添削の小論文指導、仏文学
評価:読書の技術解説

かつて著者は一日一冊以上読んでいたらしい。
相当多い方になるようだ。
すると、404 Blog Not Foundの小飼弾氏の読書量はやっぱり異常だ。
あんなに読むとかえって本は書けないと思う。
本を書く人はそんなに本は読まないものだ。

実読と楽読をわける。
実読の技法はかなり参考になると思う。
私がもともと実行していたことと共通するものも多かった。

三種の付箋でチェックするらしい。
私は、付箋の先を90度折り、180度折りすることにして、
区別するようにしている。

実読は発信のため。
人に説明してこそ自分のものになる。
だから感想をブログで書くのはなかなかいいことなのだ。

音読すると内容が頭に入らないという。
これは同感。私も、読書の音読はお勧めしない。
自分の書いた文章の確認とか、詩は別だけど。

どんな本も人によっては良書になるという。
ただ、例外もあると思う。
間違いだらけの本は、良書になるとは言い難い。
デマを流す本はよくないと思う。
だからこのブログでは間違いは間違いとはっきり書くつもりだ。
感じが悪いかもしれないが、ご了承を。

音楽家シュヴァルツコップの自信
"私の歌曲を聴く前と聴いた後では
その人の人生は変わっていなければならない"
物書きもこう言えたら格好いいね。

ニーチェのツァラトゥストラはこう語ったは、
聖書のパロディらしい。
名前がゾロアスター教なのは知ってたんだけど。

他のブログの記事へ
差がつく読書 樋口裕一(角川oneテーマ21)~ Sasaki Takanori Online

・今日の一言
本を音読すると内容が頭に入らない。
When you read aloud a book, you don't understand the contents.
책을 소리내어 읽으면 내용이 머리에 들어가지 않는다.
出声地读书,就不能理解内容。

タグ:樋口裕一
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魂の文章術-書くことから始めよう [本(読書と文章]

『魂の文章術/ナタリー・ゴールドバーグ/春秋社/2006』
著者:詩人、作家、創作クラス講師
評価:創作文の訓練法・良書

詩や小説などの創作文の訓練方法を提示する。

書くときのルール
・手を動かし続ける
・文を読み返さない
・書いたものを消さない
・心に浮かんだことにすぐ飛びつく

このあたりが議論のための文章と違うところ。
自分の感性を信じて取り出すことが大事なのだ。

自分自身の声を信頼して、
出て来た文章をコントロールしようとしないこと。
自身という存在を消して、
自分の中に流れていく思考を記録するのだ。

著者は禅を修行したが、
禅と創作文には通じるものがある。
自分を消して、今現在に生きることである。

やる気が出るまで待ったりしない。
それだといつまでもその時期はこない。
一定量を書き続けることが大切。
著者は一月に一冊のノートをノルマにしていたという。

書くときは動物になる。
言葉を紡ぐのに言葉は要らないのだ。
言葉を言葉にしてはならない。
知覚を言葉にするのである。

物書きとは歴史を築くディテールの運搬人。
ディテールを描き出すことで、その世界に読者を引き入れるのである。
だから、作家は感情について語らない。
"怒った"とか"喜んだ"とかは書かないのである。
知覚されるものを描写することで感情を表現するのだ。

小説では最後にすべてのことがまとまらなければならない。
これが詩と違うところで、小説ではアウトラインが必要になる。
『幼い子の文学/瀬田貞二/中公新書/1980』
で述べられる、行っては帰る物語が基本である。

著者は仏教徒であり、禅の修行をしていた。
仏教の師の言葉
あなたが現在にいるとき世界は真に生き生きとする。

禅とはまさに今現在を生きるためのものである。
禅では、師が大声で一喝したり、
あるいは棒で打ったりすることがあるが、
これはその肉体の存在を相手に知らしめるためである。

あなたは今どこにいるのか?
今現在あなたはこの肉体を持って
今ここに生きているではないかと、
喚起しているのである。

・今日の一言
動物になって心に浮かんだことを書いてみよう。
Become an animal and write down anything that comes into your mind.
동물이 되고 머리에 떠오른 것을 써 봅시다.
变了动物而把脑子里浮现的事写出来吧。

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詩のこころを読む(岩波ジュニア新書) [本(読書と文章]

『詩のこころを読む』
茨木のり子(詩人)
岩波ジュニア新書(1979)


詩の入門として最適。
感性のない私でも楽しめました

中国では川に棲む蟹は食べない。
戦争のとき死体を食べる蟹がいるらしい。
怖いな。
歴史書を読むと、
死体で川が堰き止まったとかよく聞くけど、
その後は蟹に食われちゃうのか……

照れくさかったりむずがゆくなる詩は
ダメな詩だとのこと。
微妙な洒落っ気を出して、
ちょっと逸らす感じに書くのがいいのかな。

"ひとを愛して愛したことは忘れてしまった"
このフレーズは気に入った。
私はこれをポジティヴな意味に感じた。
本当に愛しているんだなって感じがする。

"わたしは迷うことが好きだ"
これもいいな。
自転車で出掛けて、時間に余裕があるときとか、
わざと知らない道で方向感覚だけを頼りに帰ることがある。
知らない風景に出会って面白く感じるのから。

シュールレアリズムとは、
意識の底にひそんでいるものを取り出してばらまく。
ピカソの絵とかそんなあんな感じかな。
五感よりもより身体運動感覚的な感じを捉えているように思う。

詩は言葉が離陸する瞬間があるらしい。
言葉がその場を離れて、想像の広がりを見せる瞬間があるわけだ。
小説は詩とは文体が違うが、
登場人物が詩のように発言するという技法はよく使われる。
歴史人物の名言などはとても詩的で美しいものが多い。
そういうものを書けたらと思う。

日本には喜怒哀楽の怒の詩が少ないという。
怒の詩というと、どうしても政治的なものだよね。
平塚らいてうの"元始女性は太陽であった"とか、
怒の詩に入るのかなと思う。

『中国幻想小説傑作集』
竹田晃
白水社(1990)


志怪小説から巴金、莫言までの短編集。

昔の小説は現代人が楽しむのは結構難しい感じ。


『2週間で小説を書く!』
清水良典(文芸評論家)
幻冬舎新書(2006)


純文学中心の文章練習。

当然の内容が多くて、感想も出ず。


・今日の一言
中国の蟹は死体を食べる。
Chinese crabs eat corpses.
중국의 게(蟹)는 사체를 먹는다.
中国的螃蟹吃尸体。

タグ:茨木のり子
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プロ作家養成塾(ベスト新書) [本(読書と文章]

『プロ作家養成塾』
若桜木虔(ミステリー作家)
ベスト新書(2002)


小説作法の基本を知る。

ジュニア小説では、難解な謎解きや思想的でも可。
対して、大人の読者は疲れているのでわかりやすくする。
大人向けの方が難しいような気もするが。

人気作家は駄作でも固定ファンが我慢して読む。
そう。作家はデビュー後しばらくが一番質が高いことが多い。

ミステリーの鉄則。
・冒頭に死体を転がせ
・主人公を歩かせない
緊迫感を維持させるわけだね。

誰でも知っていることは書くな。
面白くないことは書かないのが小説と論文の違いかな。

読者に自由に想像させてはいけない。
これは詩と小説の違いかも。

登場人物の履歴書を作ること。
これが難しい。
私の光武帝のサイトはこの目的で作っているんだけど、
なかなか完成しないんだよね。

物語は可能な限り既に知り合い同士で展開させること
出会いのシーンは物語を停滞させるから。
出会いが必要なら事件や事故に直結させるか伏線とするという。
なるほど、確かに真実の人間の出会いはドラマがないものな。

主人公の心理時間の長いときは分量多く描写する。
緊迫した場面では全体の分量を増やし一つ一つの文章は短くする。
心理感覚に合わせるわけだ。

『創作力トレーニング』
原和久(日本語教師)
岩波ジュニア新書(2005)


創造力を鍛える実践的な本。

アメリカの教育では、
文学作品を教えるとその表現の技術を教えるという。
その技術を使って創作させるのである。

歌詞と詩の違いとは。
詩は何度も読み返すので難しい言葉が使えるが、
歌詞は聞いてわかるように日常的で平易な言葉を使うという。
そうかなあ。難しいのが多い気もするけど。
英語なんて聞いてもわからないし。

研究論文の基本様式
・研究の動機
・先行研究
・研究目的と他研究との比較
・対象と方法
・結果分析
・まとめと今後の課題
・参考文献

この順だと確かにわかりやすい。
ちょっとまだるっこしい感じもするけど。

・今日の一言
登場人物の履歴書を現在作成中です。
The characters' resumes are now in production.
등장 인물 이력서를 현재 제작중입니다.
登场人物的履历书正在假设中。

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プロ作家になるための四十カ条(ベスト新書) [本(読書と文章]

『プロ作家になるための四十カ条』
若桜木虔(ミステリー作家、小説家養成講座)
ベスト新書(2006)


小説執筆のためのチェックリスト。

小説の二つの意外性
1.先を予測させない波瀾万丈のストーリー
2.知識と蘊蓄

歴史小説は展開が決まっているから、
1は不可能であり、2が中心となるわけだ。

時系列はできるだけ乱さないこと。
映画やテレビは映像があるから許されるのだ。

回想は重要な伏線で絶対必要なときのみ許される。
これも時系列を乱して混乱させるだけだから。

冒頭のポイント
主人公の年齢、性別、ファッション、趣味を提示する
舞台設定を提示する
主人公をランニング・モードにする。例えば主人公を慌てさせる
平凡なシーンは駄目。すぐにつまらないと見なされる
話が動くまで説明を挟まない
出し惜しみしない
予想のつくシーンは削り予想外を詳しくする

ある日目覚めたら虎になったという作品を例にあげ、
カフカの変身を連想するという。
ええーっ、中島敦の山月記だろ普通。
そのまんま虎になった話なんだが。
筆者がミステリー作家であって歴史作家ではないから、
こういう感覚なのかな。

篠田節子の書き方
1.まずおおざっぱにすっ飛ばして書く
2.矛盾点を解消する
3.人物を書く
4.ポイントを絞って取材する

3と4は考えたことがなかった。
この方式だと頭から順番に書ているわけじゃないようだ。

"言う"は使わない。
"言う"を囁く呟く喚く怒鳴るなどにすること。

心理描写と体感描写を精密に。
読者に想像する余地を与えないよう詳しく描写する。
詩との違いはここにあるかな。

冒頭における神様の視点から主人公の視点への移動はOK。
最初の舞台説明では神様の視点でいいわけだ。

挿話と解説は伏線のみ。
流れに関係のない余談は小説には不要なのだ。

ミステリーでなくてもどんでん返しが必要。
最低3回だそうだ。
確かに意外性というのは、歴史小説でも必要だと思う。

書いてはいけない人物とは?
最初に主人公に絡みながらその後は出てこない人物
会話や回想だけに出て現実には姿を見せない人物
また馬鹿や間抜けを出してはいけない。
金庸先生~。あなた全部やっちゃってますよ~。

難解な謎は探偵が語る
普通の謎は周囲の人間に気づかせる
誰でもわかることは地の文で書く

筆者はプロットを決めずに流れに任せて書くという作家の言葉を、
嘘だと強調する。
ところがこの本の解説として筆者の生徒加藤廣が出てきて、
章立てするだけで思いついたまま頭から書いていくと言い切っている。
おそらく筆者はミステリー作家であるから理解できないのだろう。
ミステリーと他の小説ではかなり意味が違うのだ。

『現代詩作マニュアル』
野村喜和夫(詩人、批評、翻訳、比較詩学研究)
詩の森文庫(2005)


詩の解説書。

雪の肌という比喩。
これは雪⇒白という提喩+白⇒肌という提喩に分解できる。
比喩の基本は提喩なのである。

詩とは言葉による世界の捉え直し。世界を再構成すること。

詩は回帰的循環的。循環して閉じている。
通常の言説は線条性を持つ。
入口と出口があり開いているのである。

用語集
エクリチュール:書かれた文字、文字言語、記述、書く行為そのもの
寓意・寓話:アレゴリー、諷喩、一連の事柄の系列を
 別の一連の事柄の系列にたとえ話としてあらわすこと
コノテーション:言外の意味、意味のずらし。
抒情:リリシズムの訳語。
 竪琴リールが語源。元々は楽器に合わせてうたう詩のこと。

・今日の一言
まず主人公を慌てさせる。
우선 주인공을 당황하게 된다.
首先使主人公着急。
You should throw the hero into confusion first.

タグ:若桜木虔
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詩の起原 [本(読書と文章]

『詩の起原』
辰巳正明(国文学者)
笠間書院(2000)


東アジア文化圏の恋愛詩を歌路の構造に対応させて分析

歌路を詩学理論として恋歌の常識を問いなおす
歌路とは、中国少数民族の歌の理論であり、
出会いから熱愛別離婚約までの順序である。

・恋歌の詩学
恋歌は公開されるもの
恋愛は恋歌の中にあるもの
恋歌は歌路に沿って進行する
恋歌の恋愛は疑似恋愛である
恋歌は駆け落ちや情死へ向かう
娯神情歌、文娯情歌、社交情歌、恋人情歌、愛情故事歌の五種がある。

三月上巳に不祥祓除の習慣があり、男女の遊楽に歌があった。
鄭国の風俗である。
これらの民間の歌謡を採詩官が集めて楽府が作られた。

歌垣とは、春と秋に固定の行事として山や水辺で行うもので、
宗教的性格を持つ。
市や温泉や海辺でも臨時の行事として行われる。
老若男女が集まり対歌し、恋歌を歌い遊楽する民俗行事。
それは婚姻に結びつく。既婚者同士の恋愛も可であった。

世説新語での左思と潘岳のエピソードも歌垣のシーンと言われるし、
歌垣は、中国から渡来人の文化であるという
日本書紀の記述を考えると、
歌垣は古代漢民族の季節祭の習慣かもしれない。
するとある意味、自由恋愛があったと言えるだろう。

『詩霊論』
辰巳正明(国文学)
笠間書院(2004)


詩の歴史

論旨がわかりにくい。
ギリシャ古典の恋愛詩はほとんどが不倫の詩らしい。


・今日の一言
歌は男女を結びつける。
Songs make a man and woman fall in love.
노래는 남녀를 연결시킨다.
歌联结男女。

タグ:辰巳正明
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詩学序説 [本(読書と文章]

shigaku.jpg 『詩学序説』
新田博衛(美学、哲学)
勁草書房(1980)


小説や詩の仕組みを知る・文句なく名著!

こんな凄い本を古本屋で買ってしまった。
現代美学双書1とある。
勁草書房でもこれが凄いと気づいたから、筆頭にしたのではないか。

叙事詩、叙情詩、ドラマを区別する原理、視点の問題を解き明かす。

一人称小説は成立しても一人称映画は成立しない。
わけのわからないものにしかならないのだ。
この理由は簡単だ。
映画には現在の思考を示すことをできても、
記憶を表現する方法がない。
映画で過去を表現するとそれは記憶でなく今の想起になってしまう。

歴史や報道は過去で書いて過去に読ませるが
小説は過去で書いて現在に読ませる。
視点が今のままかその世界に入っていくものかの違い。
小説の特色は、語り手の一元的な視点で全体が統制されていること。
文章から語り手を消して、
出来事を直接体験したように書くのは有利な方法ではない。

なぜか?
これも記憶の問題である。著者と読者は知識量が違う。
同じ体験と知覚をどんなに精密に描写しても
その差を埋めることはできないからだ。
描写ではない記述をして記憶差を埋めざるを得ない。
それは登場人物の体験とするには限界があるため、
作者の視点に戻らざるを得ないのだ。

小説の会話を等級づける手段、
直接話法、間接話法、内容報告を使い分ける。
これは小説のみの持つ技法である。

純粋質料性を示す神話とその対極にある純粋関係性を示す論理。
あるいは語の延長上の極に神話、文の延長上の極に論理がある。
そして詩は限りなく神話に近い。

詩と論理学に共通する異質さ。
どちらも日常言語に安定性と完結性を与える。
日常言語は現実世界に結びつく、耐えることのない連鎖であり、
完結することはない。
しかし論理学と詩はそれだけで完結しているのだ。

論理学は機能語が核心であり、詩は自立語が核心である。
詩は機能語なしで書くことができる。
論理学は自立語は変数であって何でもよい。

日常言語では意味に音声が割り振られる。
意味を表すために音声が選ばれているわけ。
詩は逆だ。詩は意味が音声に内在する。
音声が意味を要求するのである。

だから外国語の詩は翻訳ではどうにもならない。
全く別のものになってしまうのだ。
外国の詩集はすべて原文との併記にすべきだろう。
韓国語の詩集を探したが、訳詩ばっかりでがっかり。

漢詩もせめて現代中国語音で読むべきだと思う。
書き下し文にすると、日本語の詩として味わいがあるとは思うが、
微妙にニュアンスが変化してしまうので賛成できない。
世界で最も音楽に近い言語と言われる中国語なのに惜しいことだ。

喜劇と悲劇の違い。
悲劇はその悲しみの共感によりカタルシスを生むが、
喜劇もカタルシスなのか?
著者は、喜劇は妬みのカタルシスとする。
諷刺喜劇などは本来妬ましい人物を笑うわけである。

悲劇のカタルシスは最後に一度のみたが、
喜劇のカタルシスはほとんど休みなく続く。
なぜ悲劇は最後に一度なのか?
これは悲しみの構造の問題である。
愛の対象の喪失が悲しみなので、
一度対象を得てから喪失する必要ある。
その対象の重要度が高ければ高いほど悲しみも大きくなる。
こまめに悲しませると、それぞれが小さくなりすぎるのである。

・今日の一言
詩とは純粋な質料にして力である。論理とは純粋なる関係にして時間である。
Poetry is pure material and power. Logic is pure relation and time.
시(詩)는 순수한 질료이고 힘이다. 논리는 순수한 관계이고 시간이다.
诗是纯粹的实质、力量。逻辑是纯粹的关系、时间。

タグ:新田博衛
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詩とはなにか-世界を凍らせる言葉(詩の森文庫) [本(読書と文章]

『詩とはなにか/吉本隆明/詩の森文庫/2006』
著者:詩人、思想家
評価:詩の理論についての考察

現実の社会で口に出せば、
全世界を凍らせるかもしれないほんとのことを、
かくという行為で口に出すことという。
世界を凍らせる言葉、か。
詩は力ある言葉、言葉で何かを生み出すというより、
それ自体が力なのである。
散文は想像的現実、詩は想像的なもの自体。
詩はまさにそれ自体なのだ。

ちょっと呪文とも似ているようにも思った。

喩の三分類、感覚喩と意味喩と概念喩
感覚喩:感覚の類似を利用した喩え。
意味喩:対象の類似を利用した喩え。
概念喩:運動感覚の類似を利用した喩え。

言語表現の要素:韻律、選択、転換、喩
言葉そのものに力を持たせるためには、
この四つの技法を学ばねばならないようだ。

『詩的レトリック入門/北川透/思潮社/1993』
著者:詩論家
評価:詩の技法について考える

詩と散文の違いは余白の魔性。
詩はなぜあれほど紙面に空白が多いのか、
まあリズムを取るためなのかな。

詩における意味とは何よりも意味のずれ。
詩的直喩は、意味と像の新たな、
あるいは未知の類似関係の発見することで成り立つ。

言葉そのものの意味がそのまま機能することがないのが詩である。
その言葉の字義そのままではない意味が新しく生まれているのだ。

『汝、尾をふらざるか/谷川雁/詩の森文庫/2005』
著者:詩人、革命家
評価:資料

出だしの詩がリズムがよいので参考に。


『アリストテレス詩学 ホラーティウス詩論/岩波文庫/1997』
著者:古代の哲学者
評価:アリストテレスの古代人らしからぬ分析力が面白い

歴史家は既に起こったことを語り、
詩人は起こる可能性のあることを語る。
詩作は普遍、歴史は個別である。
詩は言葉から生まれる人間の特性を捉えたものだが、
歴史は人間一人一人のユニークな行動だからである。

性格描写の4目標
・優れた性格
人格の卑しい人間を視点人物にしてはいけない。感情移入できぬ。
・相応しい性格
あり得ない不自然な設定もだめ。
・読者に似た性格
能力は違っても性格は読者に似る方が感情移入しやすい。
・首尾一貫した性格
物語の始まりと終わりで性格が違うとついていけないもの

筋を組み立てて仕上げるには出来る限り目に浮かべなければならない。
まず、映像的に考えてから描く。
頭で映画を撮影してから、文字へと変換するのだ。

アフォリズム集より
・卵から始める
卵が孵るまではじっと我慢あるのみ
・努めて簡潔さを求めると曖昧になる
簡潔でわかりやすいと思いきや、誤解を招くもの
・言葉はいったん放たれるとあと戻りができない
ネットの言葉はまさにそうだ。ネット魚拓とか取る人いるし。
・詩は絵と同じ
リズムがあるのに時間はないのだ。

・今日の一言
詩は世界を凍らせる言葉である。
Poetry is words which freeze the world.
시(詩)는 세계를 얼게 하는 말이다.
诗是让世界冻住的语言。

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ゲーム的リアリズムの誕生(講談社現代新書) [本(読書と文章]

『ゲーム的リアリズムの誕生/東浩紀/講談社現代新書/2007』
著者:現代思想、表象文化論、情報社会論
評価:オタクから見た日本文学、ライトノベルと美少女ゲームを考察

ポストモダンでは自己決定と多様性が肯定され、
大きな物語の共有を抑圧と感じる。
政治思想で団結して行動するとかそういうやつかな。

ライトノベルはキャラクターの媒体。
キャラクターのデータベースを環境として書かれる小説。
純文学は私小説で、ライトノベルはキャラクター小説。
それぞれの文学的想像力の基盤は、
自然主義リアリズムとまんがアニメ的リアリズム。

こうして考えると、三国志とか、金庸とか、田中芳樹とか、
ライトノベルのキャラクター小説だよな。

セカイ系とは?
主人公と恋愛相手の小さな関係が
世界の危機やこの世の終わりに直結するもの。
こういうのが、流行りらしい。
……もしや、光武帝の後漢建国話はセカイ系!?
だって陰麗華との恋愛から、ついには天下統一まで広がるし。(笑)

タグ:東浩紀
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調べる、伝える、魅せる!(中公新書ラクレ) [本(読書と文章]

『調べる、伝える、魅せる!/武田徹/中公新書ラクレ/2004』

あの新書の常識を破壊した中公ラクレにこんないい本が!
取材のときの相手の言葉を
個人、共同体、社会の言葉に分けて読みとる必要性か……
わかりにくさが疑いを引き出すってのは人によりけりじゃないかな?
難しい専門用語で埋め尽くして、疑わせないって本も多いし。
筋道が明確ならその疑わしさの度合いも明確なはずですし。

タグ:武田徹
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