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もうひとつの手話-ろう者の豊な世界 [本(手話/聴覚障害]

『もうひとつの手話』
斉藤道雄(TBS記者)
晶文社(1999)


手話の世界、ろう者の世界を知る良書。

"ろう者に手話を"は
自分と関係ないからそう思うこと。
そこに何が起こるか、
その重みを知ることが大切だ。

ろうの子どもは、聴者から生まれる。
しかし親は自分の子どもと話したいと思うから、
口話ができるようにと望む。

だが、ろうの子どもにとっては口話はあまりに負担が大きく、
また最も自然な母語である手話から切り離され、
思考の言葉の形成に失敗し、知力が発達しない危険が生じる。
これは人間として生きることができるかという、
根源に関わる問題である。

ろうの子どもを巡っては、

親とろう学校vs.ろう社会

という明確な対立が生じている。

ろうの子どもを聴者の社会に帰属させようとする親と学校と、
ろう社会へ引き込もうとするろう者が闘争しているのだ。
"口話でなく手話を"というのは、
他人であるろう者が、聴者である実の親から子どもを奪うこと。
親にはそう感じられるからだ。

アマゾンで手話文化、ろう文化の本を調べると、
バイリンガル教育に辛辣な批判を投げる人たちがいるが、
まず親とろう学校サイドの攻撃と理解して間違いないだろう。

口話は必要なのか?
口話の訓練は犬のしつけのようなものだったという。
子どもにとって極めて不快だったようだ。
確かに、自分にわからないものをマスターしろというのは、
心理的に相当苦痛であると思う。

そして卒業したらみんな手話を使い、口話は使わなくなる。
変な声で話しても変な目で見られるだけだからだ。
筆談した方が速いのだ。
これはろう者の口話を聞いたことがあればすぐわかると思う。
ろう学校の教育者でない一般人は、
ろう者の口話を好意的に聞いてくれるほど心優しくはない。

聴覚障害者とろう者。
聴覚障害者の多くは老人性難聴で300-400万人。
それ以外にも中途失聴者も多い。
ろう者=先天的に耳が聞こえない人というのは、
聴覚障害者の中でも少数派なのである。

中途失聴者や難聴者にとって日本語対応手話は、
便利な日本語の代替手段である。
だからそうした人たちにとっては日本語対応手話が大切である。

ろう学校では、
デフ・ファミリーの子が成績が優秀であるという。
家庭で手話を学ぶため、母語が自然に構築されるからだ。

日本手話と日本語の違いは、
日本語と英語より大きいという人もいるらしい。
語彙には共通点が多いが文法構造が全く違うのだ。

これは当然である。
日本語をそのまま手の動きに対応させた日本語対応手話は、
日本語よりも単位時間当たりの情報量が少ない。効率が悪いのだ。
日本手話では、手の動きを効率的にするため、
機能語の多くを、頭の動き、口や眉の動きなどに対応させ、
効率的に構成されている。
日本手話は独立した一つの言語だが、
日本語対応手話は日本語の一部であり、完全な言語ではないのである。

・今日の一言
日本手話と日本語の違いは日本語と英語の違いより大きい。
The difference between the Japanese sign language and Japanese is bigger than the difference between Japanese and English.
일본 수화와 일본어의 차이는 일본어와 영어의 차이보다 크다.
日本手语和日语的差别比日语和英语的差别更大。

タグ:斉藤道雄
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