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オッリぺッカ・ヘイノネン「学力世界一」がもたらすもの(NHK未来の提言) [本(教育]

『オッリぺッカ・ヘイノネン「学力世界一」がもたらすもの』
オッリぺッカ・ヘイノネン(フィンランド元教育大臣)
佐藤学(教育学者)
NHK出版(2007)


教育の真の価値を知る良書。

フィンランドの教育は平等かつ高水準である。
学力格差の最も大きいドイツのエリート教育機関ギムナジウムよりも、
最も格差の少ないフィンランドのトップ校が上回った。
これはドイツに衝撃を与えたらしい。

なぜ教育では平等が必要なのか。
教育で重要なのは教師と生徒の意欲である。
不公平であること、差があることは、
教師や生徒の意欲を奪ってしまうのだ。
フィンランドでは、6段階学力の区分で最低レベルは1.5%しかいない。
日本は4.7%であり、世界平均は11.0%である。

またフィンランドでは教師の水準が高い。
すべての教師は大学院で修士号取得しているのだ。

フィンランドは歴史的にも教育を重視してきた。
1686年に法律で、聖書の読めない者は結婚が許されなかった。
これでは勉強せざるを得ない。
人口56万のヘルシンキには図書館が38館もあり、
国民の図書館利用率も世界一である。
だがガリ勉というわけではなく、
フィンランドの校外学習時間は日本より短く世界最低レベルである。

教育は家族や学校だけでできるものではない。
アフリカの格言がある。

一人の子どもを育てるにはひとつの村が必要
It takes a village to raise a child.

家庭教育だとか、学校崩壊がとか、マスコミで騒ぐ馬鹿は、
教育についてもう少し勉強するべきだろう。

フィンランドでの教育を支援する体制。
小中学校の給食は無料、教材と筆記用具も無料、
大学の授業料も無料であり、教育予算の比率は日本の1.6倍である。

それでもフィンランドの子ども一人当たり教育費や教師の給与水準は、
世界の平均レベルである。

日本がいかに教育を軽視しているかわかるだろう。

教育はただ人を育てるだけではない。
フィンランドの90年代初は失業率20%を越えていた。
そこで不況を抜け出すため教育投資が始まった。
そして今、フィンランドの経済競争力は世界でもトップクラスである。

日本がその経済力を回復できない理由は明白である。
経済効果の高い部分に投資されていないのだ。
それは、教育と福祉である。
教育と福祉を放置して、あいもかわらずの土建国家の日本……

ではなぜ日本は方向転換できないのだろう?
思うに、女性の社会進出が先進国最低レベルであるのと関連している。
教育や福祉では女性が戦力として重要であるが、
土建業の現場で働くのは男ばかりである。
そしてそこへとお金を引っ張り込む国会議員もほとんどが男性である。
日本の議会における女性の少なさは先進国最悪である。

日本の経済停滞は、男性優位経済の限界を示しているのだ。

しかも恐ろしいことに、これがさらに悪化する兆候もある。
子どもの学習意欲低下は、男子よりも女子で顕著であることだ。
日本の女子生徒は、 頑張っても女性は日本では出世できないと諦めつつあるのだ。
日本には、女性の成功のモデルケースがもっと必要であり、
マスコミはそれを積極的に宣伝するべきなのだろう。

・今日の一言
It takes a village to raise a child.
一人の子どもを育てるにはひとつの村が必要だ。
아이 하나 키울려면 온 마을이 다 달라붙어야 한다.
养育一个孩子,需要全村的力量。

フィンランドの事例は教育投資で不況を抜け出すことができることを示している。
핀란드의 사례는 교육 투자에 의해서 불황에서 빠져 나갈 수 있다.
芬兰的实例表示,通过教育投资才能摆脱经济萧条。
The Finnish case indicates that educational investment can overcome economic depression.

日本の経済停滞は男性優位経済の限界を示している。
일본의 경제 정체는 남성 우위 경제의 한계를 나타내고 있다.
日本经济停滞表现了男性优势经济的极限。
The Japanese economic stagnation indicates the limitation of male-dominated economy.

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