日本手話とろう文化-ろう者はストレンジャー [本(手話/聴覚障害]
『日本手話とろう文化』
木村晴美(ろう者、手話通訳教官)
生活書院(2007)
聴者文化と異なるろう者の文化を語る良書。
ろう者は単なる日本人ではない。
日本手話を母語とする一種の外国人である。
ろう者は推定6万人の少数民族である。
ろう文化は、日本語文化とは大きく異なる。
日本手話では相手に何をして欲しいのか最後まで言語化する。
日本的な察する文化は、ろう文化には存在しないのだ。
特徴としては、部屋のノック、すいませんという呼びかけ、
腕組み、アイコンタクトなどの意味が聴者と全く異なる。
ろう者の世界を変えた科学技術。
1981年、ミニファックスの発売。ろう者にとっての電話である。
1997年頃、携帯のメール機能が必須になった。
ろう者にとってのメールは聴者とは異なるのだ。
2005年、見えるフォンの発売。直接、会話できるようになったのだ。
後、最近のYou Tubeなども影響が多いと思う。
You Tubeを"木村晴美"や"手話"で検索すると多数ヒットする。
ろう者がその会話を語る技術は急速に発達しているのだ。
ただまた異なる方向がある。
高性能の人工内耳の出現である。
デンマークでは乳幼児への人工内耳装着率はほぼ100%。
これはろう者を滅ぼすということである。
著者はかなり複雑な気分なようだ。
ろう者のプライドの問題。
聴者に手話が間違っていると指摘されることがある。
これはアメリカ人に英語を間違いを指摘するようなもの。
ネイティヴ相手に違うと指摘するのは、
ろう者を軽く見ているからだ。
また"ろう者"と呼ぶことを回避するメディア。
"耳の不自由な"と表現したりする。
しかし、著者は"耳の不自由な教官"や、
"耳の聞こえない手話キャスター"と紹介されたくないと憤る。
これは考えれば当たり前のことである。
"耳の不自由な"より"ろう者"と呼ぶべきなのだ。
ろうは不便だが、手話には利点もある。
ろう者は座席の距離に関係なく会話すること。
聴者は隣の人と話し、遠くの人と話すには席を移動するが、
手話ではそれが必要ないのである。
ろう者の差別問題。
宿泊拒否などもあるらしい。
ハンセン病元患者や外国人への宿泊拒否と比較する。
私が思うに、この問題はやや単純化されていると思う。
ハンセン病元患者宿泊拒否は、確かに差別であること疑いない。
だが残酷な言い方だが、ハンセン病元患者宿泊がすることで、
その宿屋が損害を受けることは事実だと思う。
おそらくほとんどの人が嫌がるだろうからだ。
結論から言えば、宿泊することで客が減った場合、
その宿へ補償が出るべきだと思う。
手話の誤解。
ろう学校では手話が教えられているわけではない。
手話はその国や地域の子どもが生み出したものであり、
学校ではむしろ禁止されてきたのだ。
学校で教えられているのは日本語対応手話。
日本手話と日本語対応手話では語順が異なるのだ。
ゴリラやチンパンジーの手話研究の問題点の話もある。
著者は、あれを手話を呼ぶのは、
手話を言語と見なさないからではないかとし、
いかがわしい研究と考えているようだが、これは誤解。
別に手話に限ったことではないのだ。
キーボード言語研究のボノボのカンジや、チンパンジーのアイ、
英語で直接研究しているオウムのアレックスなども、
言語といえるか論争になっている。
いずれも十分な文法構造を持たないからである。
そうではなく、ただ言語の定義が異なっているのである。
文法がないものを言語に含めれば言語/手話と呼びうるし、
文法構造がないものを言語としないのなら、
手話とも言えないということだ。
著者の主張。
ろう児にバイリンガルろう教育を。
第一言語を日本手話とし、
第二言語として書記中心の日本語を学ぶのである。
思うに、言語はコミュニケーションの道具であるが、
一番重要なコミュニケーションの相手とは、他人ではなく自分である。
自分とコミュニケーションすることが思考なのである。
その思考の言語として第一言語が必要なのだ。
ろう児に日本手話をしっかり教えないことは、
思考力を育てることすら難しくなってしまう危険なことである。
著者のブログ
ろう者で日本人で・・・
面白いと思ったのは、
日本手話の言語的特徴の一部が中国語に似ていること。
できるだけ言語化して、一つ一つ明示すること、
語彙を時系列通りに並べることなど。
漢字という視覚表現の影響が大きいことが関係するのかもしれない。
・今日の一言
日本手話と日本語対応手話は文法が異なる別の言語である。
Japanese Sign Language and manually-coded Japanese are two different languages with different grammar.
일본 수화와 일본어 대응 수화는 문법이 다른 다른 언어이다.
日本手语和日语对应手语是文法不同的另外的一种语言。
木村晴美(ろう者、手話通訳教官)
生活書院(2007)
聴者文化と異なるろう者の文化を語る良書。
ろう者は単なる日本人ではない。
日本手話を母語とする一種の外国人である。
ろう者は推定6万人の少数民族である。
ろう文化は、日本語文化とは大きく異なる。
日本手話では相手に何をして欲しいのか最後まで言語化する。
日本的な察する文化は、ろう文化には存在しないのだ。
特徴としては、部屋のノック、すいませんという呼びかけ、
腕組み、アイコンタクトなどの意味が聴者と全く異なる。
ろう者の世界を変えた科学技術。
1981年、ミニファックスの発売。ろう者にとっての電話である。
1997年頃、携帯のメール機能が必須になった。
ろう者にとってのメールは聴者とは異なるのだ。
2005年、見えるフォンの発売。直接、会話できるようになったのだ。
後、最近のYou Tubeなども影響が多いと思う。
You Tubeを"木村晴美"や"手話"で検索すると多数ヒットする。
ろう者がその会話を語る技術は急速に発達しているのだ。
ただまた異なる方向がある。
高性能の人工内耳の出現である。
デンマークでは乳幼児への人工内耳装着率はほぼ100%。
これはろう者を滅ぼすということである。
著者はかなり複雑な気分なようだ。
ろう者のプライドの問題。
聴者に手話が間違っていると指摘されることがある。
これはアメリカ人に英語を間違いを指摘するようなもの。
ネイティヴ相手に違うと指摘するのは、
ろう者を軽く見ているからだ。
また"ろう者"と呼ぶことを回避するメディア。
"耳の不自由な"と表現したりする。
しかし、著者は"耳の不自由な教官"や、
"耳の聞こえない手話キャスター"と紹介されたくないと憤る。
これは考えれば当たり前のことである。
"耳の不自由な"より"ろう者"と呼ぶべきなのだ。
ろうは不便だが、手話には利点もある。
ろう者は座席の距離に関係なく会話すること。
聴者は隣の人と話し、遠くの人と話すには席を移動するが、
手話ではそれが必要ないのである。
ろう者の差別問題。
宿泊拒否などもあるらしい。
ハンセン病元患者や外国人への宿泊拒否と比較する。
私が思うに、この問題はやや単純化されていると思う。
ハンセン病元患者宿泊拒否は、確かに差別であること疑いない。
だが残酷な言い方だが、ハンセン病元患者宿泊がすることで、
その宿屋が損害を受けることは事実だと思う。
おそらくほとんどの人が嫌がるだろうからだ。
結論から言えば、宿泊することで客が減った場合、
その宿へ補償が出るべきだと思う。
手話の誤解。
ろう学校では手話が教えられているわけではない。
手話はその国や地域の子どもが生み出したものであり、
学校ではむしろ禁止されてきたのだ。
学校で教えられているのは日本語対応手話。
日本手話と日本語対応手話では語順が異なるのだ。
ゴリラやチンパンジーの手話研究の問題点の話もある。
著者は、あれを手話を呼ぶのは、
手話を言語と見なさないからではないかとし、
いかがわしい研究と考えているようだが、これは誤解。
別に手話に限ったことではないのだ。
キーボード言語研究のボノボのカンジや、チンパンジーのアイ、
英語で直接研究しているオウムのアレックスなども、
言語といえるか論争になっている。
いずれも十分な文法構造を持たないからである。
そうではなく、ただ言語の定義が異なっているのである。
文法がないものを言語に含めれば言語/手話と呼びうるし、
文法構造がないものを言語としないのなら、
手話とも言えないということだ。
著者の主張。
ろう児にバイリンガルろう教育を。
第一言語を日本手話とし、
第二言語として書記中心の日本語を学ぶのである。
思うに、言語はコミュニケーションの道具であるが、
一番重要なコミュニケーションの相手とは、他人ではなく自分である。
自分とコミュニケーションすることが思考なのである。
その思考の言語として第一言語が必要なのだ。
ろう児に日本手話をしっかり教えないことは、
思考力を育てることすら難しくなってしまう危険なことである。
著者のブログ
ろう者で日本人で・・・
面白いと思ったのは、
日本手話の言語的特徴の一部が中国語に似ていること。
できるだけ言語化して、一つ一つ明示すること、
語彙を時系列通りに並べることなど。
漢字という視覚表現の影響が大きいことが関係するのかもしれない。
・今日の一言
日本手話と日本語対応手話は文法が異なる別の言語である。
Japanese Sign Language and manually-coded Japanese are two different languages with different grammar.
일본 수화와 일본어 대응 수화는 문법이 다른 다른 언어이다.
日本手语和日语对应手语是文法不同的另外的一种语言。
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