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世界史の教室から [本(教育]

『世界史の教室から』
小田中直樹(フランス社会経済史)
山川出版社(2007)


世界史教師の実践の場から
歴史教育の目的と方法を探る

実際に世界史の教師にアンケートし、
歴史教育を客観的に探り、
さらに歴史学の思想を組み合わせて
考察するところが面白い。
科学的客観的な手法と、
思索的な手法のカップリングが珍しい。

教師の意見
歴史教育の方法として、
人権の歴史というテーマを設けるべきというものや、
歴史は現在地を知る手段というのが印象的。
実際の教育の場ではやはり、
歴史の大きな流れを捉えたいと考える人が多いようだ。

歴史学における二つの流れ。
自然主義的アプローチは、因果法則を導出して応用を目指す。
歴史主義的アプローチは、個々の史実を独自なまま叙述する。
因果法則は導出できないとして自然主義に反対する。

著者は、歴史の思考法として、
"つなぐ力"と"くらべる力"を提示し、この二つを育成するべきとする。
時間的に前後する事件の因果関係を"つなぐ力"と、
空間的に別の場所での事件を"くらべる力"である。
自然主義的アプローチは、"つなぐ力"と、
歴史主義的アプローチは、"くらべる力"と関連が深いようだ。

シーダ・スコチポルは
理論と史実を付き合わせて相互に修正する
仮説検証型というのを提示している。
これは、板倉聖宣の仮説実験授業の考え方に近い感じだ。

シャンタル・ムフの逆説的民主主義論
民主主義は個人の利害を調整して妥協し合意する制度ではない。
妥協と合意は異議申し立てを失わせる。
利害や意見の対立を永続させる民主主義、
多元主義的民主主義こそが必要なのだという。

思うに、民主主義は、不断に運動と変化を続けるような、
動的なものであるべきなのだと思う。

歴史を学ぶ重要な効用。
他者を敵対する存在でなく理解すべき存在とみなすこと。
アイデンティティ確立には他者の承認が必要であるため、
相手を理解することで自己のアイデンティティを確立できるという。

私の知っている英語の先生は、授業中に日本史の話をたくさんする。
他者を知って初めて自分を知ることができるし、
自己を知って初めて他者を良く理解できるのだと思う。

小田中直樹[本業以外]ネタ帳より

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