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中国の不思議な資本主義(中公新書ラクレ) [本(中国事情]

『中国の不思議な資本主義』
東一眞(読売新聞記者、経営政策科学)
中公新書ラクレ(2007)


中国のヘデラ型資本主義の仕組みを解き明かす。面白い。

中国の道路交通は乱暴かつ騒々しい。
中国人は日本人や欧米人の80倍クラクションを使うという。
喧噪の凄まじさが想像される。

中国の電話の盗聴。
盗聴されているとハウリングが大きくなるのですぐわかるらしい。
さらに政府の悪口を言うとそのとたんに回線が切れるという。
あからさますぎてユーモラスですらある。

ウェーバーのプロテスタンティズムの倫理
職業をそれ自体が絶対的な目的であるかのようにとらえる心的態度。
これが英米の社会資本である。
日本の社会資本は、共同体の相互監視の目、すなわち世間である。
こうしたものに対応する社会資本、中国では宗族となる。

中国では人間関係こそが真の財産である。
だから親しい中国人同士は
口約束だけで資金を融通しても裏切りは起こらない。

中国の資本主義を著者はこう名づける。
ヘデラ型資本主義
人的ネットワークを利用した不正な利益追求が横行する資本主義のこと。

政府の建設プロジェクトに関する不正の日中比較。
日本は談合という横の不正だが、中国は贈収賄という縦の不正。

個人の権限で可能なことは何でもしてしまう。
役人ポストまでが金銭で売買されるが、驚くべきは検察長。
法を取り締まる役職までが売買されたのだ。

小さな権力を換金する権力換金システムだらけ。
コンサートでは、組織的で巨大なチケットの横流しが行われる。
そうした利益はを汚職役人のギャンブルで浪費したが、
その金額は何と国家予算の2割に相当するという。
無茶苦茶である。

中国でお金を荒稼ぎした人たちは、
企業家ではなくほとんどが土地成金。
中国の土地は、個人の所有ではないのにである。

これらはすべて、中国社会における人間不信が原点にある。
そのため信頼することができず、信頼がないため団結ができない。
鉄鋼生産は今や中国が最大である。
しかし、鉄鉱石価格は新日鉄と鉱石生産企業の交渉で決まっている。
最大手の中国企業には交渉力がないのだ。
それは中国企業同士の横の連携がないからであるという。

著者の提示する資本主義の4つの型
ライン型:集団主義的で高い社会規範。日本とドイツ。
ネオアメリカ型:個人主義的で高い社会規範。アメリカとイギリス。
イタリア型:集団主義的で低い社会規範。イタリアなど。
ヘデラ型:個人主義的で低い社会規範。中国など。

韓国はイタリア型かな?
台湾はネオアメリカ型だろうか?
ブラジルもヘデラ型かもしれないとのこと。
ラテン系は家族主義だから、イタリア型かも。

中国社会の不信の連鎖構造はゲーム理論からも支持される。
アクセルロッドは、囚人のジレンマゲームで、
全面裏切り戦略は常に集団安定とした。
全員が裏切りの集団には他の戦略が入れないのだ。
入った瞬間にカモとなり食い尽くされてしまうからだ。
中国はまさに全員が裏切りで動くルールの世界である。

ただ、複数のしっぺ返しが集団で侵入するのが唯一可能らしい。
すると、ここにルールのある存在は、
個人でなく集団ならば割り込むことが可能なようだ。

いろいろな意味でも中国は外資頼みなのである。

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