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量子が変える情報の宇宙 [本(物理/天文]

『量子が変える情報の宇宙/ハンス・クリスチャン・フォン=バイヤー/日経BP社/2006』
著者:物理学、テレビ番組制作
評価:量子理学と情報科学の関係を知る物理学史・面白い

モンティー・ホール問題。
3つの箱の中に1つ賞品入りの箱がある。
回答者は一つ選ぶ。
その後、司会者が一つの箱を開けて見せるとそれは空だった。
もちろん、司会者は空の箱を選んで開けたのである。
さて、回答者は、
そのままの箱にすべきかもう一つ残った箱に変えるべきか?
箱の中身は同じなのだから、変えても変えなくても同じようだが、
実は変えた方が当選確率は高くなる。

この本ではわかりやすい例を挙げてある。
ボックスを1000個にして、
司会者が998個の空ボックスを空けたと考えるのである。
すると俄然変えた方がいいと感じられるだろう。
自分の選んだ箱は、
賞品の有無にかかわらず、司会者は空けることができないが、
もう一つの残った箱は
ほぼ入っているから空けなかったとしか考えようがないからだ。

理論物理学者のジョーク。
搾乳場の建物の問題解決を求められたときの言葉
"まず球形の牛を考えよう"
何でも理想化して考えるのが物理学の手法である。

量子notゲートは、
入力ビット⇒ビームスプリッタ
 ⇒キュビット⇒ビームスプリッタ⇒出力ビット
の5つの要素で作られる。
一個のビームスプリッタは"notの平方根"ゲートである。
二回繰り返して否定になる操作であり、虚数ゲートなのである。

量子コンピュータの解説では、
北極点に1、南極点に0と記した球でキュビットを表現する。
これは面白そうなので、
他の量子コンピュータ解説本もあたってみようと思う。

2020年代にメモリセルが1ビット当たり1原子レベルに到達する。
現在のコンピュータが限界に達するのが2020年代というのは、
専門家の一致した意見らしい。
2002年の量子コンピュータの現状。
15を3と5に因数分解する装置が組み立てられた。
……まだしょぼいな。

ボーア
"パラドックスは進歩の前兆"
矛盾こそが進歩を生む。まさに弁証法的発展の世界である。

エントロピーや情報量の定義はいろいろとあり、
未だ確定ではないようだ。

ルドルフ・クラウジウスのエントロピー
熱を温度で割ったもの。

エントロピーはその物体について私たちが何を知っているかに関係する。
情報の欠如に関係したものだ。
主観的に意味が変わる数値ということになってしまう。
熱を温度で割ったものと違うような。

アルゴリズム的複雑性
数の複雑性をその数を生み出すことのできる
最も簡潔なアルゴリズムの長さとして定義する。

ゲルマンの論理深度
データの組織量を生成に必要なコンピュータの計算時間で定量化する。
プログラムの長さでなく実行されるステップ数で数値化。

クラッチフィールドの統計的複雑性
これはメモリのサイズによるもの。

情報逓減の法則
中継回路は情報量を増加させない。

中国語がわからない人に中国語の文に情報量はないが、
わかる人が翻訳すると情報が増してしまう。
これでは駄目なわけ。

ポアンカレ
"科学の対象は物同士の関係。
関係以外に知り得るものはない"
対象の存在を知っているわけではないのだ。

ボーア
"物理学は存在論でなく認識論"
量子力学の観測問題が認識論の側面をクローズアップしたのである。

ワインバーグ
"世界は場だけでできている"
重力や電磁力など力の場ですべてが説明されるのだ。

私は、物質のもつ波動性と粒子性は、
場の波動性の結果として説明できると思う。
すわなち、粒子性は根源的ではない。粒であるより波である方が根源的。

光のスピードとは何なのだろう。
光速度に近い速度で動く存在は、時間が遅れる。
光速度である光子自体は、時間は流れないのだろうか。
すべての物質はいつかはすべて光子に崩壊するというが、
光子からはもう崩壊しないのか。

二重スリット実験で疑問に思うのは、
光子は本当にスリットを通ったというべきなのかということ。
光子が通ったとわかるのは、スクリーンに反応が出るからで、
誰もスリットを通るところを見るわけではないのだ。当たり前だけど。

私は、光は伝播するだけで動いたりしないと思う。
70個の炭素原子からなる巨大分子も波動性を示す。
スクリーンだって波動性を示すはずだ。
波動性と波動性の衝突の結果現れる波の頂点が粒子ではないかと思う。
素粒子とは波動性の頂点ではないのか。
どこまでも波で考えれば粒子性を追放できるように思う。

EPRパラドックスも、
粒子性の根源性を否定できればパラドックスではなくなる。

こうしたことを考えると光速度というのは何なのか考えさせられる。
光速度という定数には何か深い意味があるような気がする。

・今日の一言
球形の牛を考えよう。(理論物理学者)
Consider a spherical cow.(theoretical physicist)
구체(球體)의 젖소를 생각하자.(이론 물리학자)
首先考虑球状的乳牛。(理论物理学者)

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コメント 4

はじめまして。

「都筑卓司記念室」主催してますはっこうです。
光速、量子力学、エントロピー、さまざまなパラドックス、、、記事を楽しく読ませて頂きました。
"まず球形の牛を考えよう"、、、けっこうウケました(^^)
これからも面白い記事を楽しみにしています。
by (2007-07-26 11:07) 

Kay-akira_Hirota

どうも~。都筑卓司先生面白いですね。誰か後継者出て欲しいです。
by Kay-akira_Hirota (2007-07-26 23:17) 

ナイスを頂きありがとうございました。

私のブログの「都筑卓司記念室」シリーズの中に、恩師の書いた本が韓国語や中国語に翻訳されているという記事があります。
これらを日本で持っているのは数少ないと思うのですが、韓国語や中国語がまったくダメでして、飾ってあるだけです。

物理啓蒙の後継者は今のところ恩師を越える方に出会っていません。まだまだ長生きして欲しかったと思うばかりです。

私の個人的なテーマは「カオス」「複雑系」「エントロピー増大の法則」などです。これからもよろしくお願いします。
by (2007-07-27 23:20) 

Kay-akira_Hirota

都筑卓司先生、ファンなんです。本も24冊もってます。比喩がうまいですよね。
by Kay-akira_Hirota (2007-07-29 00:26) 

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