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大地の咆哮-元上海総領事が見た中国 [本(中国事情]

『大地の咆哮』
杉本信行(元上海総領事、法学)
PHP研究所(2006)


人のまさに死なんとするやその言や善し。中国を知る良書。

著者は末期癌で死の淵にある。
日本と中国の関係を憂い、最後の気力を振り絞って書いた本である。

中国ではかつて、外国人に対する犯罪に厳しかった。
だから外国人とわかる格好なら安全だった。
盗難に遭っても被害を訴えると品物がすぐ戻ってくる。
それは凄まじい監視社会だったからだ。

日本の年金破綻は有名である。
しかし、中国の年金はもっと完全に破綻しているという。

中国へのODA総額3兆の内、2兆は実質的に贈与である。
では、中国を経済的に支援するべきではなかったのか?
著者は、もし中国を放置すれば北朝鮮化しただろうという。
ODAなしは、より危険なのである。

アメリカが台湾を見捨てることは有り得ない。
アメリカのイデオロギーの放棄につながる。
自由と民主の国を見捨てることは、
アメリカのアイデンティティーを崩壊させるからだ。

日本のODAの日本企業の受注率は32.1%。
日本のODAはひも付きではなかった。

義務教育費用の7割は受益者負担。
国家は3割で、7割は地方なのだが、
その地方分が実質個人が払うのである。

泥棒被害を警察に届けると警察署に被害額の半額を払うのが常識。
これはひどい……。
けど途上国では、警察は泥棒の一種のところが多いからなあ……

靖国問題を中国が受け入れられないわけ。
一部の軍国主義者=A級戦犯が悪いとした
日中国交正常化の前提を破壊するから。
賠償を廃棄し、国交を復交させたときのロジックに抵触しているのだ。

もしも、民間賠償訴訟で日本企業が敗訴すると、
雪崩を打って資産差し押さえの危険もあるという。
著者は、A級戦犯の分祀もしくは
それに類する方法を模索することを提案している。

中国の貧富の差。
ジニ係数は81年は0.281だったのが、2005年は0.5以上である。
所得税もまともに払わないし、
固定資産税、贈与税、遺産相続税も未整備のまま。
景気がいいといっても実際の失業率は十数%である。

20階以上の高層ビルの数。東京は100だが、上海は4000。
かなり意外な数字である。

中国を変える第一歩。
中華人民共和国とバチカンの国交正常化をすること。
これにより中国に情報網が整備されるとする。

私はこうした宗教組織の力をあまり買わない。
ネットによる情報網により、
中国内部の情報格差=教育格差の是正から始めるべきかと思う。
『ウェブ進化論』
梅田望夫
ちくま新書(2006)

に描かれたように、ネットにはその潜在的な力があると思う。


・今日の一言
鳥のまさに死なんとするやその鳴くこと哀し、人のまさに死なんとするやその言や善し。
When a bird is about to die, its notes are mournful; when a man is about to die, his words are good.
새가 죽으려 할때 그울음이 슬프고 사람이 죽으려 할때 그 말이 선하다.
鳥之將死,其鳴也哀;人之將死,其言也善。

タグ:杉本信行
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