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厚黒学(徳間文庫) [本(東洋史]

『厚黒学』
李宗吾(日中戦争時の四川在住の教師)
徳間文庫(2002)


面白過ぎ。
英雄豪傑はただ面の皮が厚く心が腹黒いだけだ!!!

中国最後の諸子百家、李宗吾の厚黒史観を見よ!
厚黒史観とは?
二十四史の英雄豪傑の成功の秘訣、それは面の皮が厚く腹黒いこと!

黒さとは何か?
曹操である。自分を信頼する人物を次々と殺して平然としている。
何と腹黒いことよ!
厚さとは何か?
劉備である。戦に負け続けて弱いくせに国をもらい平然としている。
何と厚かましいことよ!
三国志とは腹黒い曹操と厚かましい劉備の対決なのだ。
そして呉の孫権は、厚さと黒さを少しずつ兼ねることで国を建てた。

天下を統一したのは司馬氏である。
寡婦や孤児を欺く腹黒さと、
巾幗の辱めをものともせぬ面の皮の厚さを持つ司馬懿こそは、
厚さ黒さを兼ね持つ厚黒学の大家である。
著者は『三国志』を読み、司馬懿が孔明の巾幗を受け取ったとき、
ハタと手を打ち、"天下は司馬氏に帰す!"と叫んだという。(笑)

楚漢の戦いもまた、厚黒の法則通りに展開した。
厚さはあっても黒くなかったのが韓信である。
劉邦をだまし討ちにする腹黒さがなかった。
黒さはあっても厚くなかったのが項羽である。
郷里に帰って再興を目指す厚かましさがなかった。
そして厚さと黒さを兼ね備えた劉邦こそが天下を取ったのだ。
劉邦よ、司馬懿よ。厚いぞ!黒いぞ!

厚さと黒さのない人間に天下は取れない。
光武帝劉秀ですら、兄の死に平然と振る舞う厚さがあり、
河北自立のとき謝躬をだまし討ちにする黒さがあった。
唐太宗李世民だって、父を幽閉し兄弟を殺す厚黒さがあった。
宋太祖趙匡胤だって、酔ったふりして皇帝になる厚黒さがあった。

厚黒学が提示する策略は身も蓋もない。

・やがら切断法
矢の刺さった負傷者に、矢の柄だけを切り取り、
後は内科だといって治療費を請求した外科医。
やっかいな仕事はすべて他人に押しつける謀略である。
岳飛と秦檜を比べたとき、岳飛が失敗したのは、
鏃を自分で取ろうとしたからだという。

・鍋補修法
穴の空いた鍋の修理を頼むお客。
その客に用事を頼んで隙を作り、
その間に割れ目を広げて修理代を大きくしてから補修した鋳掛け屋。
斉の桓公が小国を援助しようとしたとき、
国が滅ぶ前に助けずに、滅んでから復興させることにしたケースである。
その方が利益が大きいからだ。

儒教経典の語句を入れ替えて書かれた厚黒経も面白い。
なかでも面白いフレーズは、

"いにしえをもって弟子となす"

古代の著者は学識が浅いから、自分が先生になって添削せよというのだ。
『論語』だろうが『孫子』だろうが、
そんな昔の知識のないやつの文章は間違いだらけだから
赤ペンで訂正してやれというわけだ。

この本は日中戦争の頃に書かれている。
腹黒く厚かましい日本に対抗するため、
中国人よ、より黒く、より厚くなれとはっぱをかけた本なのである。

・今日の一言
英雄豪傑はみな面の皮が厚く腹黒い。
영웅호걸은 모두 뻔뻔스럽고 속도 검다.
英雄豪杰都是厚颜无耻手狠心黑之辈。
All heroes are brazen-faced and black-hearted.

タグ:李宗吾
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