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日本の科学/技術はどこへいくのか [本(科学史/医学史]

『日本の科学/技術はどこへいくのか/中島秀人/岩波書店/2006』
著者:科学史、科学基礎論
評価:あれ?日本の話じゃないぞ。科学史書評エッセイ。面白い。

資源生産性の尺度エコリュックサック
エコリュックサックとは、
ある有用資源を得るために動かされた物質量、
電信柱の資源生産性は、
コンクリートより鉄が高く、鉄より木材が高いらしい。

科学活動の中心国は移動しているという。
1540年~1610年はイタリア
1660年~1730年はイギリス
1770年~1830年はフランス
1810年~1920年はドイツ
そして1920年からはアメリカである。

アメリカの発展も歴史的には最近である。
アメリカ工業の発展は1865年の南北戦争終結後であり、
アメリカでノーベル賞候補者が増えるのは1930年代からだ。
そのアメリカのノーベル賞受賞者のピークは1970年代である。
そしてアメリカの科学の発展が50年かかったのなら、
衰退にも50年とし2020年まで繁栄と予測している。

これは私も同意する。
アメリカの覇権は2020年ぐらいまでは続くだろう。

ハンガリー現象とは?
20世紀初頭ハンガリーにノーベル賞級科学者が集中して輩出した。
これはちょっと興味深い。
当時のハンガリーにどんな状況があったのか、
科学教育という観点からも有益と思う。

西洋の中世の時間概念の漠然さ。
トマス・アクィナスですら生年の記録はまちまちであるという。
古人で生年がわかっている人はほとんどいないのだ。

これを考えると光武帝劉秀は凄いぞ。
光武帝は、紀元前6年12月甲子の夜に生まれ、
西暦57年2月戊戌に亡くなっている。
甲子は一日、戊戌は十五日だっけ?
よくわからないが、計算できる人なら、
ユリウス日から今の暦にも直せるようだ。
生没年月日が公式記録に残存している史上最古の人物は、
光武帝劉秀ではあるまいか?

※追記070918 : 検索したところ、
紀元前5年1月15日生、西暦57年3月29日没、
らしい。計算の仕方はわからない。

科学革命とは何か?
16世紀のコペルニクス地動説提唱に始まり、
ガリレオを経てニュートン力学までの150年間である。

西暦1300年頃、視覚によって事物を対象化して正確に記録が始まる。
均質化して分割計算する数学化への道である。
こうした計算を生み出したのは都市の商人であり、
その複式簿記がもたらした影響は計り知れない。

なぜ西欧で科学が生まれ、その他の地域が生まれなかったのか。
その原因となる考えは既にたくさん提示されている。
西洋の言語の特性であったり、数学的な考え方であったりする。

大事なことは、それらすべてが正しいということである。
それらすべてが作用して科学が誕生したのである。
さまざまな思想と知識が集結することで科学革命が起こったのである。
そのどれかが特別というわけではないのだ。

だから、なぜ科学が西欧で誕生したのかと言えば、
西欧の地理的条件が、
情報の吸収と蓄積に有利であったからということになる。
山脈、半島、海などの地形のため小さく区画され破壊されにくく、
それでいて世界の交通から隔離されていなかったためである。

科学革命の凄さとは、科学が自己増殖するシステムだということだ。

これはそれまでの哲学、宗教、思想とは全く異なっている。
哲学は思索による認識であり、
宗教は行動のために思考することである。
哲学も宗教も、それぞれ人間のために思考するものであり、
一つ一つの思考は孤立したものであり、
ただ積み重なることで発展していた。

ところが、科学とは実験や調査など行動による思考である。
行動によって新たな思考を得ると、その新たな思考によりまた行動する。
思考と行動が循環してとどまることがなく、
ポジティヴ・フィードバックを起こして発展していくのである。
そして科学は一度誕生すると、全世界へと波及して広がっていくのだ。

ときどき、西欧以外の文化に非科学性の理由を見出す人がいるが、
荒唐無稽であって話にならない。
西欧と東洋やその他の地域との違いは、
情報量の差であって、質の違いではないのだ。
東洋と西洋の思考法を比較して、だから科学は西洋的な……
という議論は全く無意味である。

なぜ西欧以外で科学が誕生しなかったのか?
それは単に先に西欧で誕生したためである。
科学革命は圧倒的な爆発力と伝播力を持つため、
一度ある場所で誕生すれば、
他の地域で誕生する時間はないのである。

ある西欧の科学者は、
日本に科学革命が起こらなかったことを謎とし、
科学革命目前だったとしている。
しかし科学革命が発生するより先に伝播してしまった。
科学は世界共通であるので、
既に伝播してしまうと、新たに発生することはできないのだ。

繰り返す。西洋の思考の優越性とは知識量の差に過ぎない。
東洋の思考法が劣るということではない。
ただ量が足りなかったのである。

・今日の一言
科学とは行動と思考による循環システムである。
Science is a circulation system of thinking and action.
과학은 행동과 사고에 의한 순환 시스템이다.
科学是用行动和思考的循环系统。

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