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貝と羊の中国人(新潮新書) [本(中国事情]

『貝と羊の中国人/加藤徹/新潮新書/2006』
著者:京劇研究者
評価:中国人を理解できる良書・多少変な点も

殷の貝の文化、周の羊の文化の対比で理解する。

中国人の死生観
銃殺の弾丸の請求書が遺族に送られることも。
死刑囚の臓器は今も移植のために使われる。
死刑囚はさんざん迷惑をかけたのだから、
臓器を利用して罪を償うのは同然と考えるという。

中国が支那と呼ばれるのに抗議する理由が詳細でわかりやすい。
普通の国名は地域名+理念だが、
日本は地域名のみで、中国は理念のみで構成される。
中華民国政府の抗議を無視し、1930年まで支那共和国を使用した日本。
支那が明白に戦争に結びついているのだ。

現代中国社会の理解のため補助線として、
昭和初期の日本社会を使うのがよいという。
これは適切。
日本と中国は社会成熟からくる時代が違うのである。

戸籍人口6000万、実人口1億が限界ラインで、
ここに近づくと社会不安が起こる。
人口増減サイクルが王朝の寿命を決定するという。

これは因果関係が完全に逆。王朝が崩壊して人口崩壊するのである。
人口の限界ラインで崩壊することもあれば、
長期維持しているときもあるし、
人口に関係なく崩壊することもある。
日本と違い、中国が激しい人口変動を示すのは、水力文明だからである。
ウィットフォーゲルなどを確認すること。
中国は黄河の治水をベースにしているため、
王朝権力と食料生産力が直結しているのだ。
中国で食料生産が崩壊しても援助できる国はない。
王朝の崩壊は常に飢饉に結びつくのだ。

清の時代の中国の構造。直轄部と藩部と冊封国に分かれる。
藩部:内モンゴル・モンゴル・ウイグル・チベット
冊封国:朝鮮・琉球・ベトナム・タイ・ビルマ

藩部も冊封国も自国領という考え方が中国人に錯覚を起こさせている。
そもそも清王朝は国民国家ではない。
中国を近代国家として考えること自体が間違いなのである。

よく考えれば、中国と他の国が対等というのはかなり変である。
中国人は日本人の10倍はいる。中国と日本が対等なら、
中国人10人が日本人1人と対等になってしまう。
国民国家はヨーロッパのような中規模国家群に生まれた考え方であり、
東アジアでは別の考えが必要になるだろう。
国家と異なるレベルの組織が重層的に構成されない限り解決できまい。

ユーチューブで話題のチベットも難しい問題である。
チベット問題で比較できるのが日本の朝鮮の植民地支配である。
中国のチベット占領と日本の朝鮮植民地支配には共通点が多い。

もしも朝鮮半島の植民地支配を肯定的に捉えたいのなら、
中国のチベット占領を支持すべきである。
もしも朝鮮半島の植民地支配を絶対悪として断罪したいのなら、
中国中共のチベット占領に抗議しなければならない。

ところが、おかしなことに、
植民地支配を肯定する人の多くは中国のチベット政策を支持せず。
植民地支配を否定する人の多くは中国のチベット政策に異議を出さない。
すなわち、こうした人たちは思想の一貫した主張しているのではなく、
単に好みの側を応援しているだけなのだ。

冊封国としてのチベットは、今のチベットのような状態ではなかった。
チベット支配は朝鮮植民地支配と同様、
現状維持が許容されるべきものではない。
逆に言えば、冊封国としてのチベット国に戻すことで、
解決の道を探ることができるはずだ。

・今日の一言
清王朝は近代国民国家ではない。
Qing dynasty is not a modern nation state.
청조는 국민 국가가 아니다.
清朝不是近代国民国家。

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