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意識の探求-神経科学からのアプローチ [本(脳科学]

『意識の探求(上)』
『意識の探求(下)』

クリストフ・コッホ(神経科学、生物物理学的コンピュータシミュレーション)

岩波書店(2006)

必読書・最も正しい脳と意識の研究方向

意識と相関しているニューロン・NCC
neuronal correlates of consciousness
を探す。
特定の現象としての意識状態を
生じさせるのに十分な最小限の神経活動がNCC活動だ。

意味とは何かを脳科学から考える。
意味とは勝利したニューロン連合が起こすポストNCC活動である。
どんな知覚にも意味という巨大な情報が詰め込まれている。

紫色を見たときに感じる質感クオリアはある明示的な記号である。
たとえば、ローマ帝国の紫や紫のアメジストや紫の名誉負傷章。
質感は意味と強く結びついている、

著者の仮説が正しければ、
前頭前野と運動前野を持っていない人には意識がないという。

ジャン=ピエール・シャングー
意識の相関する活動は
前頭前野、帯状回、頭頂葉からのフィードバックを受けることで
突発的に自己増幅するような活動だという。

これらはまさに脳科学の最も正しい道を歩んでいるといえる。

また、健常者も無意識のゾンビ・システムと
意識システムが共存しているという。

意識のシステムと無意識のシステムがあり、
それをうまく使い分けるようにできているのである。

それはどんなものだろうか?
私の多重ループ理論から解答を提示しておこう。
以下は、脳科学が将来に到達するだろう結論でもある。

かつてアリストテレスは、
生物は栄養的霊魂を持つとし、
動物は感覚的霊魂を持つとし、
人間は理性を持つとした。

実は、この区分に対応するものが実在する。
脳と環境における情報伝達を考え、
マクロ現象としての精神を見いだし、
それ全体を回路と見ることで、
対応する構造を見いだすことができるのだ。

物質は、ただ存在する。情報に動きがないので、回路は・の形である。

生物は、環境から栄養を摂取して変化する。
情報を受けて反応するので回路は∪の形である。

動物は、環境の情報に応じて行動し、環境を変化させる。
その情報は円を描いて循環するので、回路は○の形である。

人間は、環境の情報から、
行動せずとも行動したときの変化を脳内で再現する。
それは脳内の再入力回路による。
これはもともと行動のための脳の電気信号を感覚連合野に戻して
再感覚することで生まれたものだ。
すなわち、環境と人間との回路の○と、
それを再現した脳内の回路の○があり、
それが前頭前野で結びつくことで、8の字の形となる。
これが意識の回路の正体である。

物質・ 生物∪ 動物○ 人間8 
という回路のトポロジーがあるのである。
これが精神の在り方の違いを生み出すのだ。

この問題で難しいのは、再入力し循環するだけの回路なら、
どこにでもあるではないか、ということだ。
細胞の中でも物質は循環している。
あるいは人間の社会システムでも情報の循環がある。

この違いは環境変化と情報循環の速度の問題である。
ロボットの研究者である舘暲は、
0.1秒がクローズドループの限界であると述べている。
ロボットアームを操作するとき、
0.1秒以上のズレがあると操作が困難になるのである。

植物の回路が∪の形となり、○の形にならないのは、
環境への反応速度が遅すぎるためである。

また、情報回路の循環は、
環境の変化に対応するものでなければならない。
環境の変化に合わせて情報を変化させて、
環境にアプローチしなければならない。

情報が変化しなければ、それは環境とただ連動しているだけとなる。
コンピュータの中にはたくさんの循環する回路があるが、
それが自己意識を生み出さないのは、連動回路だからである。

人間は8の字の回路を持つことで、
環境情報に連動せずにその情報を蓄え、
多数の出力例を脳内に提示して選択する。
ここに選択する主体としての自己が生まれるのだ。
その8の字の結束点は前頭前野にある。
おそらくはブロードマンの46野が相当するだろう。

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