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「俺様国家」中国の大経済(文春新書) [本(中国事情]

『「俺様国家」中国の大経済』
山本一郎(ブログのライター)
文春新書(2005)


病的なピンぼけ本。経済の知識は多少あるらしい。

著者は、中国経済は怖い、
将来、アメリカの経済覇権を脅かすと指摘していたという。
また、スタンダード・アンド・プアーズの2004年の推計値を挙げる。
過去5年で23兆円の不良債権処理したが、残りまだ73兆円あるという。

アメリカの経済覇権を脅かすという部分と、
中国の経済的な問題点の指摘は矛盾するようにも思える。
むしろ中国経済は張り子の虎であり、
アメリカの経済覇権を脅かす前にしぼむと考える方が正しいだろう。

著者は、日本は軍隊を有事の際に使うものと考えているが、
中国は平時の影響力拡大に使うのだとあきれてる。

しかし、これは"著者のいう日本の常識"だけが間違っているのである。
『孫子』あたりでも読んでみると良いだろう。
アメリカみたいに実際に軍隊を使ってしまうのは愚の骨頂というもの。
外交のための道具としてこそ軍隊は存在するのである。
もちろん、日本だって外交の道具として自衛隊を正しく使っている。

正直、著者が精神的に病んでるんじゃないかと心配になる部分があった。

韓国の外資引き揚げによる経済の後退を指摘し、
"腹を抱えて笑うべき部分であることは言うまでもない"という。

また、イランと中国は問題の多い困った国民だとし、
"いつか両国で戦争をしてみて欲しい"という。

文春新書の編集部は何を考えているのだろう。
こんなのを喜ぶほど日本人の品性が下劣だと思っているのだろうか。
あるいは著者の将来を考えて、
この表現は削りましょうと言わないのだろうか。

著者はコンピュータゲームでもやりすぎたのではないかと思う部分。

日本の危機を打開する方法は二つだ。
中国に分断工作を仕掛けてバルカン半島化させるか、
欧米諸国と手を握って実質的に中国を植民地化するするかだという。

外交も歴史も何もわかっていない。
経済については何とか読むに価するんだが……

ここでは、もう少しまともな中国の将来像を描いておこうと思う。

まず当たり前だが、共産党独裁政権は永遠ではない。50年は絶対無理。
もってあと10~20年ぐらい。

中国の経済力というのは、ほとんどが外資に支えられている。
中国の貿易依存度は約30%前後。日本やアメリカは約10%である。
中国は資源も豊かではない。
人口が大きすぎるため、一人当たりでは日本と変わらないのだ。
もちろん、環境の悪さは日本以上である。
中国という地域は、あまり条件がよくないのである。
これらの条件が中国の経済発展の天井になる。
今は発展のS字カーブの真ん中にいるので凄く見えるが
減速する日はそう遠くない。

中国経済を見るとき、実質GDPなど見るのは馬鹿げている。
日中戦争のとき、中国の実質GDPは日本より大きかった。
国家を比べるのに日常生活の経済を含めても意味はない。

貿易依存度の異常に高い中国の主要貿易相手はアメリカと日本。
共産党政権が倒れたら大混乱になるのが必至で、
日米ともに経済ダメージを受ける。
日米中の貿易量の異常な規模を考えれば当然のこと。
要するに、共産党政権は、
アメリカと日本の支持によって維持されている。

だから日米中ともに中国の民主化では、
ソフトランディングする方法を探っている。
手ぶらで共産党が下野しては大混乱になる。

そこで第3次国共合作という方向を探っているわけである。
何とか台湾を巻き込んでから下野したい。
中国の完全統一という面子を確保して共産党が任務を終えるわけである。

とはいえ、台湾は既に民主国家。政治経済ともに後戻りを望まない。
単なる併合は容認できない。
考えられるのは、現状の大陸と台湾の枠組みの上にかぶせるように、
中華連邦を形成すること。
旧ソ連なのか欧州連合なのかよくわからない、
あいまいな連邦体制を作るといったところだと思う。

『「権力社会」中国と「文化社会」日本』
王雲海(中国人の法学者)
集英社新書(2006)


精神や文化から社会を見ることで日中を比べる。

中国の金持ち第一世代は受刑者が多いという。
それはそれだけ法の信頼がなく、
罰された人が悪い人とは限らないからだろう。

ホームレスを悪いものと見る日本人に驚く著者。
中国人は敬遠するが悪いとは思わないという。
この当たりは社会に対する信頼の違いでもある。
普通に生きればホームレスにはならないという認識が日本にあるのだ。
それが事実かどうかはともかく。

中華思想は周囲を征服しようとするものではない。
周囲の国から面子もらうものだという。
それが朝貢貿易というもの。
朝貢貿易は、中国が損をするようになっているのだ。

中国人の日本人への不思議。
広島長崎に原爆を落とし東京大空襲した米国を恨まず、
なぜ中国を敵視するのか?
中国人は一方的に殺され、さらにその戦争賠償も放棄したのに、
現職総理が靖国を参拝しないという程度の譲歩もしてくれない。

これがまあ確かに中国人の平均的感覚だろう。
ODAだって大半は金を貸しているだけでプレゼントではないし。

『歴史の嘘を見破る』
中嶋嶺雄(国際関係論)
文春新書(2006)


日本人の妄想を論破する。奇妙な本。

編者の専門は国際関係論であって、歴史家ではない。
すなわち、交渉のための議論。
また執筆者も半数以上は非専門家。
すなわち、論文に必要なレベルの議論を展開しない。

興味深いのは古田博司の言葉。
"北朝鮮ばかりか韓国もいまや中国の味方だ"と言われたら、
というのが筆者に振られた日本人にありがちな問いだが、
中国は決してこんなことは言わないだろうし、
北朝鮮も韓国もまず言わないということ。

この本の半数近くはあり得ない日本人の妄想であり、
論破するのが簡単なのも当然である。

06/09/24 追記
武侯仁従 さま
やっぱ歴史好きから見ると変ですよね、この本。

とうや さま
なるほど。理解しました。文春新書、最近は変なのが多いな……

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コメント 2

武侯仁従

>著者は、日本は軍隊を有事の際に使うものと考えているが、
中国は平時の影響力拡大に使うのだとあきれてる。

>しかし、これは"著者のいう日本の常識"だけが間違っているのである。
『孫子』あたりでも読んでみると良いだろう。
アメリカみたいに実際に軍隊を使ってしまうのは愚の骨頂というもの。
外交のための道具としてこそ軍隊は存在するのである。
もちろん、日本だって外交の道具として自衛隊を正しく使っている。

この本ある意味すごすぎてビッくらこいたことを思い出します。中国を舐めすぎているのも。中国が破綻したら困るのは日本もですのに。軍事力も「現存艦隊」という使用法があるのにその方法はふっとばしているが問題。

>著者はコンピュータゲームでもやりすぎたのではないかと思う部分。

>日本の危機を打開する方法は二つだ。
中国に分断工作を仕掛けてバルカン半島化させるか、
欧米諸国と手を握って実質的に中国を植民地化するするかだという。

そこまで銭を日本国民から搾り出させたいのか!日本人を貧乏にしたがっているとしか!

>中華思想は周囲を征服しようとするものではない。
周囲の国から面子もらうものだという。
それが朝貢貿易というもの。
朝貢貿易は、中国が損をするようになっているのだ。

それを知らない人が多すぎる・・・!

では再見!
by 武侯仁従 (2006-09-20 17:28) 

とうや

この著者について、「切込隊長」「山本一郎」などのキーワードで検索してみてください。
数々の疑惑追及サイトが上位にでてくるはずです。
驚くべき「嘘つき」であることがわかると思います。
経済の知識に関しても、たとえばライブドアの事件の際には、
「通常は50%を超えるまで公表しないものだがライブドアは公表した」と5%ルールを知らないような言動をしています。
また、みずほ証券の誤発注の事件のときは、
「個人投資家が踏んだら破産間違いなしの事例。胴元に近い場所は救われる」と、システムをまるでわかっていない発言をしています。個人投資家はシステム上、このようなミスはおこりえないのです。
他にも数々の事実誤認や、嘘が指摘されています。
by とうや (2006-09-21 17:43) 

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