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20カ国語ペラペラ-30歳で世界主要語をマスターした猛烈な人生記録 [本(言語学]

『20カ国語ペラペラ』
種田輝豊(20ヵ国語を話す通訳)
実業之日本社(1969)


真に言語を理解する人物による名著!

英会話学校と解読専念主義は両極端という。
これらは、それぞれの問題点だけをピックアップして
否定しあっているのである。

読み書きができるのに話せない人は作文力を養っていないためで、
作文力を基盤にもたない解釈力は真の読解力ではないという。
同感である。真の高いレベルの語学力には作文は不可欠である。

新しい単語を覚えるには、単語に見入り、
印刷された字の第一印象を大切にし、
その第一義だけを読みとり絵に復元するという。
語の原義を知るというのは重要である。
言葉には必然の広がりというのがあるから、
原義を知ることでその広がりの根本を押さえることができるのだ。

著者はオウムに言葉を教えた。
すると、オウムは聞いてもオウム返しをしないことに気づく。
オウムは十分聞いて反芻し体得してから発音するのである。

言語学習法の本は、
こうした3ヵ国語以上話せる人の著書でないと信用できない。
というのも、一つの外国語を学んだだけでは、
その方法が良かったのか比較する対象がないからである。
何ヵ国語もマスターした人の場合、
それぞれの学習段階と効果を比較できるため信頼性が高いのである。

『ことばと心理』
石川圭一(音声学、心理言語学、応用言語学)
くろしお出版(2005)


非常によくできたテキスト・文句なし。

アメリカ人にロシア語を教えるとき、全く発音させない授業があった。
すると、読み書き話す聞くのすべてで、
普通に発音させる方法より成績がよくなった。
発音する学習より4技能すべてが好成績だったのだ。
言葉を表現する能力より先に認知能力を形成した方が効果的なのだ。
これは『20ヵ国語ペラペラ』のオウムの観察と一致している。
まず耳を作るのだ。

第二言語の中級学習者は、
単語をイメージすると、しないよりも記憶率が高い。
イメージで覚える効果である。
ところが、初級学習者はイメージしてもしなくても
記憶率に有意差がないという。
イメージで覚えようにも、初心者はそのイメージの広がりが貧弱で、
他のイメージとの連結がないため効果が弱いのである。
いわゆる右脳を使うと称する
イメージで覚える方法は初心者向きではない。

英語と日本語のリズムの違い。
英語はストレス・リズムの言語であり、
日本語はモーラリズムの言語である。
日本語はモーラ、すなわちかなの1文字当たりを
同じペースで読むようになっている。
それに対して、英語ではストレスが等間隔で登場するように発声される。
英語のストレスは、句=フレーズに1つあるものである。
語頭のストレスがあるのもそのためだ。
英語のリスニングでは、フレーズ単位で聞き取れるかが勝負である。
実際、ディクテーションテストで
句にポーズを入れたテープが最も成績が良くなるのである。
フレーズについては私のHPでも詳しく論じている。

言葉の意味は動作に存在するという。
語の意味の本質は身体運動感覚である。
あらゆる語の意味には身体運動感覚がある。
コア、あるいはルーツと呼ぶものである。
これは脳にも証拠がある。
神経心理学では、脳内カテゴリーというのが知られている。

文字、身体部位、家屋部位、屋内物品、色、
道具、生物、動作、数詞、動物、果実、野菜

である。失語症の例でこれらが単独で失われることがあるのだ。
さての分類は一体何を意味しているのか?
それは結びつく行為である。

文字:書く
身体部位:直接動かす
家屋部位:そこへ自分が行く
屋内物品:置く
色:見分ける
道具:手で動かす
生物:見守る
動作:動く
数詞:反復動作
動物:捕まえる
果実:直接食べる
野菜:調理する

というように、対応する行為が違うのである。

こうした、身体運動感覚から、
メタファー・シネクドキー・メトニミーの原理により、
意味が拡大される。さらに語と語が組み合わせることで、
合成語として発展していく。

言葉は今までにない新しい表現が次々と生まれる。
それは言葉が対象を示すものではないからだ。
もしも、対象そのものを示すなら、新しい言葉など生まれようもない。
身体運動感覚を基準として持つから、その身体の感覚に基づき、
新しい組み合わせを考えるのだ。
すべての言葉を使うものはまさに詩人である。

語の身体運動感覚を体得をしたとき、
真にその語を意味を理解したことになるのだ。

外国語学習法については他にも優れた本がある。
お勧めできるのは次の2冊である。

『語学で身を立てる/猪浦道夫/集英社新書/2003』
『外国語学習に成功する人、しない人-第二言語習得論への招待/白井恭介/岩波科学ライブラリー/2004』

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