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問題解決のための5つの視点 [その他]

■12/21-27に読んだ本
『公共哲学とは何か/山脇直司/ちくま新書/2004』
評価:公共哲学の思想史・可もなく不可もなし
思想家や哲学者の公共思想に対する論評。

『保守思想のための39章/西部邁/ちくま新書/2002』
評価:保守思想の神髄を述べる・いいとこ取りに注意して読めば可
でもこんな良質な保守系の言論人がそんなにいるか?

『「資本」論/稲葉振一郎/ちくま新書/2005』
評価:こんな程度のことをいうのにここまで遠回りするの?
ホッブズ、ロック、ルソー、ヒューム、マルクスなどの論評。
労働力=人的資本を理念の軸に位置づける。

上の3冊のような問題について実のある考えを生み出すには、
他に調べるべきことがあるだろう。
どうもこうした思想系の著者は、
"考える"と"調べる"のバランスが悪すぎる。
ある解決すべき問題にアプローチするには、
5つの視点の資料が必要である。

1.【過去】その問題にいたるまでの歴史的な変遷
2.【比較】類似する問題を抱えている同格の対象との比較
3.【内部】問題の内部構造を分解して因果関係を特定する
4.【対象】問題自体の価値の問い直し・人類学的方法
5.【未来】既に提示されている解決策の試験と再検討

哲学・思想系の著者はあまりに1.【過去】の資料に偏重しすぎている。
学問の世界は、対象でなく手法で縦割りにされているのだ。
これはまさに憂うべきことである。

5つの視点は、いろいろなところで応用できる。
例えば、本というのは
必ずこの5つの視点のどれかを中心にして書かれている。
しかし、良書であるほど、各章が各視点にわけられているものである。
著者の視点を知ると、その内容も頭に入りやすくなる。

人に何かを説得するときも、
この5つの視点を思い浮かべて並べていけばよいのである。
あるいは、論文を書くときの根拠にもこの5つを利用できる。

ある一つの事故があったとしよう。それを分析するには、

1.【過去】事故の歴史を調べる。
2.【比較】諸外国と比較する。
3.【内部】事故の車両構造や関係者の人事関係を分析する。
4.【対象】当事者・関係者の認識を再確認する。
5.【未来】他の研究者の提示している解決策を実験し検討する。

ということになろう。
もっと卑近な例でも利用できる。ある人を好きになったとする。

1.【過去】自分の今までの恋愛を振り返る。
2.【比較】他人の恋愛やデートなどを聞いてみる。
3.【内部】相手自身について良く知ろうとする。
4.【対象】自分自身の今の気持ちを再確認する。
5.【未来】誘い方やデートプランについてシミュレーションする。

ぐらいかな?

『シュメル/小林登志子/中公新書/2005』
評価:人類最古の文明の息づかいが伝わる良書!
学園もの文学がある。
子どもが先生に叱られ、父に先生をもてなすよう頼むと、
父親が先生を招待し、それから子どもに優しく態度を変えるという話。
身も蓋もない面白さではある。

『国家の品格/藤原正彦/新潮新書/2005』
評価:日本のあり方を数学者が問う
あらゆる理系の学問において美的情緒が重要。
論理の持つ美には妖しい魅力がある。
初めに基準がないと子どもは動けない。
悪いものは悪いと決めつけるべし。
米国の企業経営者の平均年収は13億・一般労働者は300万
こんな国を見習って欲しくないよなあ。
理工系大学院のアメリカ人比率は50%以下。
アメリカを支えているのは外国人なのだ。
アメリカは中身がスカスカの国になりつつある。
江戸末期の識字率は50%・ロンドンは20%。
日本はそのころから優れた文化を発達させていた。
明治維新の基礎が既にあったわけだ。

『労働政治-戦後政治のなかの労働組合/久米郁男/中公新書/2005』
評価:労働組合と政治の関係史・可もなく不可もなし
労働組合内部における民間組合の覇権が確立されている場合のみ
パフォーマンスが向上する。
日本はお役人の組合が強いのが致命的だ。

『霊長類のこころ/ファン・カルロス・ゴメス/新曜社/2005』
評価:ヒトを含む霊長類の知能発達比較・学者向けでまとまり悪い
隔離されて育ったチンパンジーは鏡テストに合格しない。
自己の発達には他者が必要なのだ。

『官僚たちの縄張り/川北隆雄/新潮選書/1999』
評価:官僚機構の実態・もうちょっと古いかも?
官僚の世界は女性の進出が遅い。
97年に初の事務次官が誕生したが、
それは女性大臣よりも30年も遅かった。
96年の高級官僚指定職1673人中、女性はたった10人。
比較すると、94年英国で課長以上12.9%、
93年フランスで局次長以上の15.4%、
アメリカの課長以上の10%超は女性だという。
男女格差の最も大きい世界なのである。

『日中はなぜわかり合えないのか/莫邦富/平凡社新書/2005』
評価:日中関係の冷静な分析・良書
インターネットをよく利用する胡錦濤や李肇星。
某国のイット革命の元総理とは少し違うようだ。
中国の有名企業ハイアールの本は最近読んだが、
ハイアールは製品の質の悪さをサービスで補っているという
中国における日本企業の問題点もわかる。
中国に対して雇用主として接し、消費者として接していない。
安い人件費のみを見ていたため、
急には「お客様は神様」の視点に戻せないようだ。
中国語の使えない携帯電話を中国に投入したり、
「横暴」という意味の名前を車につけたという。
中国は、2003年一人当たりGDPが1087ドルに到達した。
ここからが難しいという。
1000ドルラインをうまく超えた韓国とマレーシアになれるのか、
混乱と失敗を繰り返したブラジルとアルゼンチンのようになるか、
未だ先は見えない。
※日本の一人当たりGDPは31408ドルである。
日本に来る中国人に対する扱いも難しい。
アメリカに留学した中国人は親米になるのに、
日本に留学した中国人は反日になってしまうという。
詳しい説明がなかったので、そのデータと構造が知りたいものだ。
留学以外で日本に来るのが観光客。
2003年のオーストラリアへの中国人観光客は17万人もいるのに、
日本へは9万だという。
距離や経済規模を考えればかなり問題があるといえよう。

『世界をだました男/フランク・W.アバグネイル/新潮文庫/2001』
評価:あの映画の原作・制服など見た目の大事さがよくわかる
パイロット、小児科医、法律家に化けた小切手詐欺師は、
まだ20歳そこそこだった。
驚くべきは、彼が投獄されたフランス・ペルピニャン刑務所の過酷さ。
照明、ベッド、トイレも何もなく、
5x5x5フィートしかない真っ暗な穴蔵に、
ただバケツがあるだけだという。
自分の汚物にまみれながら生き、
囚人のほとんどは病気と狂気に陥るという。
フランスってどういう国なんだろ?


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