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不平等国家中国-自己否定した社会主義のゆくえ(中公新書) [本(中国事情]

『不平等国家中国』
園田茂人(比較社会学、現代中国研究)
中公新書(2008)


客観的な統計的研究の良書。

マルクス主義による生産手段の国有化。
階級対立は存在しないはず。

農民と都市の格差は、
都市の中国人はそれほど深刻に捉えていないらしい。
これはむしろ危険な兆候だろう。

経路依存性(path dependence)という考え方。
これはあらゆる問題を考えるに重要なこと。
それまでの道筋が結論に影響するのだ。
複雑性の考え方とも共通する。

意外な事実。
都市の出稼ぎ者は、都市住民以上に生活に満足している。
それだけ農村がひどいということでもある。

毛沢東の言葉。天の半分を女性が支える。
夫婦で妻の方が収入が多いのは、
日本は3%だが中国は26.6%である。
夫婦の四人に一人は妻の方が収入が高いのだ。

この8年間で国家機関の管理職が急激に豊かになった。
共産党政権の中核の富裕化が進行している。
中国の勝ち組は共産党なのだ。

著者の結論は、過去へ進化する社会主義。
学歴主義と科挙、エリートと士大夫の類似。
エリートに人民の利益を代表するように、
人民も期待するのではないかとしている。

ジェームス・マンの指摘とも関連する。
中間層が民主主義を求めるというのはアメリカ人の幻想。
これは確かに思う。

思うに、ジェームス・マンは著書で超大国化した中国の危険を描くが、
本当に中国はアメリカを超えるような大国になるだろうか?
私はそう思わない。
人口が多いので当然アメリカを超えると思っている人が多いようだが、
これは全く逆で、人口が多いから超えられないのだ。
中国の人口が5億程度だったら、アメリカを超えると思う。
しかし13億もいては、自国を維持するので精一杯だろう。
水資源、公害、鉱物資源、農業、すべての条件が悪すぎる。

国家の競争力は、国内の生産の合計値ではない。
合計値から国内の必須消費を差し引いた分が競争力になるのだ。
中国は必要な消費が多すぎて、大きな余剰を生み出す条件がない。
中国経済は少しずつ減速して、安定した停滞へと向かうだろう。

・今日の一言
妇女顶半边天。(毛泽东)
天の半分を女性が支える。(毛沢東)
여성들이 하늘의 반들 떠받치고 있다."(모택동)
Chinese women hold up half the sky.(Mao Ze-Dong)

タグ:園田茂人
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