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交通事故はなぜなくならないか:リスク行動の心理学 [本(社会心理学]

『交通事故はなぜなくならないか』
ジェラルド・J・S・ワイルド(交通心理学)
新曜社(2007)


名著。
真に安全な社会を構築するための人間心理を知る。

リスク・ホメオスタシス理論とは、
人間心理のリスクを一定に保つ傾向のこと。
あるリスクを減らすと、
その分のリスクで利益を得て、
リスクを一定にしてしまうのだ。
たとえば道路が安全になれば、その分だけよりスピードを出したり、
たくさん車に乗るようになるのである。
結果として事故は減らないのだ。
人々は安全技術を自分の利益に変換してしまうのである。

三角州の錯覚とは?
三角州に3本の水路がある。
水路の2本をせき止めれば水量は三分の一になると思うこと。
もちろん、残りの一本にすべてが集中するだけである。

シートベルト、エアバッグ、アンチ・ロック・ブレーキ……
これらはすべて死亡率を下げることがなかったのである。
その安全分が他の死亡原因に移動するだけなのだ。

さらに運転技能の良し悪しすら安全性に関係がない。
運転のうまい人はそれだけスピードを出してしまうのである。

事故経験の少ないドライバーとは?
・攻撃的男性的権威主義的傾向が低いこと
・向社会的価値観が強いこと
・学校で道徳の成績が良いこと
・安定した職業についていること

しかし、事故を起こしたドライバーを道路から追放しても、
事故率はわずかしか減少しない。
リスク・テイキングは人格特性ではなく、状況次第のものだからだ。

運転が丁寧でも事故の多い人がいる。
70年代のオンタリオ州のミセス"慎重運転"さん。
4年間で4回交通事故を起こし運転恐怖症になった。
ところがその事故には、彼女の責任によるものは一つもない。
あまりに用心深い運転のため他のドライバーが予測できず、
事故に遭うのである。
経験の浅いドライバーに事故が多いのは、
経験不足ではなく経験者と未経験者が混在するためという。
もしも経験の浅いドライバーだけの世界があれば、
事故率は相当に低くなるらしい。

不況時には交通事故死亡者は減少するらしい。
失業率と交通事故死亡は相関がある。
これはなぜでしょうね。運転する人と量が減るのかな?

保険という危険な存在。
自動車は保険はかつて犯罪を誘発するとして禁止されていた。

たとえばドライバーの無過失保険。
責任の所在に関係なく保障する制度だが、
このために事故が増加してしまったが、保険会社の利益も増加した。
保険会社は事故が多い方が儲かるのだ。
保険がいかに自由競争に適さない業種かよくわかる。

日本のライセンス保険。反則金を保障するもの。
これまた交通違反の助長する有害な保険である。

著者は、自動車保険会社を私企業でなく
公にすることのメリットを議論すべきという。
同感である。

『クルマを捨てて歩く!』
杉田聡
講談社+α新書(2001)


の著者は、"自動車保険とは殺人保険である"と断言しているほどだ。
保険が私企業による競争下にあるべきなのか、
もし私企業を認めるにしても、
相当に細かい法的規制が必要な業種なのは間違いない。
あるいはすべてNPOにすべきではないだろうか?
保険は純粋な営利企業が為すべき仕事ではない。

事故を減らすには、法、教育、工学アプローチより、
予防の動機付けアプローチこそがよいという。

健康と安全の習慣は将来に高い価値を持つ人々で一般的であるという。
著者の安全文化のための提案とは、
・子どもの小遣いを年ごとに増やす
・大学授業料を学年ごとに減らす
・最低賃金を年齢ごとに上げる
・未来の金銭的価値を上げること
……

これは日本の年功序列制に似ていないか?
日本は現在もなお世界の中で圧倒的に安全な社会であるが、
日本の年功序列制こそが日本の安全と安心を生んでいたのである。
とすれば、今もし一つ道を間違えれば、
日本の安全は失われるかもしれない。

・今日の一言
人々は安全技術を自分の利益に変換してしまう。
People change safety technology into their profits.
The more safety futures there are the dangerously people drive.
사람들은 안전 기술을 자신의 이익으로 변환해 버린다.
人们把安全技术变成自己的利润。

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コメント 2

私もクルマを捨てて歩いています。
それでも事故に遭った(笑)

交通の手段にリスクは付きものです。
交通事故がゼロになることはないでしょう。
量子テレポーションのような新たなテクノロジー革命が起こらない限り。
by (2007-09-28 23:14) 

Kay-akira_Hirota

私はもっぱら自転車ですが、幸い事故に遭っても打撲程度ですんでいます。ただ、交通事故は10回以上目撃したことがあります。車は怖いですが、田舎だとないと困るんでしょうね。
by Kay-akira_Hirota (2007-09-29 00:38) 

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