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生物と無生物のあいだ(講談社現代新書) [本(生物学]

『生物と無生物のあいだ』
福岡伸一(分子生物学)
講談社現代新書(2007)


分子生物学研究史。生命とは何かを知る詩的ムード漂う良書。

福岡伸一氏、現代の寺田寅彦、中谷宇吉郎になれるかも。

お札の肖像にもなった野口英世。
実は、今日に意味のある業績はほとんどない。
ほとんとが間違いだったのだ。

直感は研究の現場では負に作用する。
著者はセレンディピティの考えに反対だ。
思い込みとなり正しい判断を失わせるのだ。

PCR(polymerase chain reaction)
ポリメラーゼ反応を引き起こす10-20文字の一本鎖のDNAを二つ使い、
この二つで挟んだ部分だけの新しい2本鎖を複製する。
アイディア賞ですねー。

ワトソンとクリックまでの道。
ノーベル賞級のオズワルド・エイブリーは、
DNAが遺伝子であることを示していた。
ロザリンド・フランクリンは、
DNAの三次元形態を示すエックス線写真を撮影した。
それをウィルキンズが複写しワトソンは見たらしい。
それが後の発見のヒントとなったわけ。

パスツール:チャンスは準備された心に降り立つ
Chance favors the prepared minds.
発見は万全の準備の元にやってくるわけだ。

生物の形を決めるのは遺伝子だけではない。
生物の形態形成に分子の拡散がもたらす濃度勾配など
物理的な枠組みも重要なのだ。

シェーンハイマー
生命として存在するのは流れそのもの。
生物の物質はすべてが入れ替わっていく。
そのため、飢餓による生命の危険はエネルギー不足というより
タンパク質の欠乏らしい。
生命とは動的平衡にある流れであるという。
そして、平衡を維持するのは、タンパク質のかたちが体現する相補性。

小胞体の由来。
内部の内部は外部。
小胞体とは、細胞膜が内向きに陥没してできた区画、すなわち外部。
細胞生物学はトポロジーの科学なのだ。

もう牛を食べても安心か『』
福岡伸一(分子生物学者)
文春新書(2004)


と本すれすれか。自然科学者の弱さを見た気がする。

イギリスの狂牛病のアウトブレイクは、
レンダリング行程の簡略化のため。
肉骨粉の国内使用禁止にしたのにその後も輸出したという。
阿片戦争に中東に、この国はダブルスタンダードが平気だな。

シェーンハイマーの流れの生命観。
シェーンハイマーは、
重窒素15Nで体内のアミノ酸分子に目印をつけて追跡した。
結果、人間の身体は、
分子的実体として数ヶ月前とは全く別物になることが判明した。
生命とは流れの型であり、実体ではないのだ。

記憶の変容は分子基盤の変容かもしれないという。
そんなわけない。記憶とは回路の変形の問題である。

臓器移植や遺伝子組み換え操作に関する意見は、
かなり問題が多いようだ。
取り上げている相手の反論が極端なのである。

『皮膚感覚の不思議』
山口創(臨床心理学、身体心理学)
講談社ブルーバックス(2006)


専門でないのか解説に不自然が多い。

蚊に刺されるとなぜ痒いのか。
痒くない方が蚊に有利のはずだ。
実は、蚊でなく人間が蚊の唾液を不快に感じるように進化したのだ。
唾液の酵素が抗原となってアレルギー反応を起こすから痒いのだ。
だから、蚊に刺されたことのほとんどない乳幼児は痒みを感じないし、
異なる大陸の蚊に刺されても痒くないという。

『生きていることの科学』
郡司ペギオ-幸夫(理論生物学)
講談社現代新書(2006)


フランス現代思想の悪影響を受けた意味不明書。

誰もが小中学校の頃、意識を持って自由なのは
自分だけかもしれないという感覚に襲われることがあるという。
そうかあ? 俺はないぞ。
そんな難しいこと子どもの頃に考えるかねえ……

経験世界の描像をいかにして形式的に表現するかを論じているらしい。
意識と無意識、対象と行為、名詞と動詞、物体と認識とか、
そういう問題のような気がするが、
出口が私に結びつくところまで書かれていないので判断不能。

茂木健一郎氏によると、著者は別にクリスチャンではなく、
単にペンギン好きだからペギオらしい。本当かなあ?

『系統樹思考の世界』
三中信宏(進化生物学、生物統計学)
講談社現代新書(200)


系統樹思考の科学史。

宇宙進化論は進化でなく展開であるという。
宇宙の進化には淘汰という作用がないからである。

比較法に基づくアブダクション、
対立する他の仮説との相対的比較こそが歴史の科学だという。
とても優れた考えだが、まだこれからの学問である。

"棒の手紙"の手紙の変遷が笑える。
"棒の手紙"はこれを見た人は、
自分も何通も"棒の手紙"を書かなければならない。
不幸の手紙そっくりだが、それもそのはず、
誰かが不幸の手紙の"不幸"の字を間違って"棒"と書いたのだ。
それで"棒の手紙"が広まったのである。

・今日の一言(パスツール)
チャンスは準備された心に降り立つ。
Chance favors the prepared minds.
기회는 준비된 사람에게 온다.
机会总是垂青有准备者。

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