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癒す力をさぐる 東の医学と西の医学-図説 中国文化百華009 [本(科学史/医学史]

図説 中国文化百華009
『癒す力をさぐる 東の医学と西の医学』
遠藤次郎(薬剤師)
中村輝子(鍼灸師)
マリア・サキム(ウイグル医学者)
農文協(2006)


面白い。
東洋医学を世界の伝統医学との比較で理解する良書。

西域医学との導入で発達した中国医学。
その東西医学の対立と融合を明らかにする。
正しい視点だ。
東洋医学を現代の科学西洋医学と対比する人がいるが、
それは間違いなのである。
東洋医学と比較すべきなのは、
インド医学、ギリシャ医学、アラブ医学なのである。

中国医学は独自に発達したというだけでなく、
他の医学系統も取り入れて発達進化した。
今また西洋の科学医学との接触により、新しい道を生み出すのだろう。

三大伝統医学とは?
ギリシャ医学とアラブ医学、ウイグル医学
インド医学と仏教医学
中国医学と日本漢方、韓国漢方など

仏教医学の四大説やアユルヴェーダの医学理論のトリドーシャ説、
ギリシャ医学の四体液説などの比較が面白い。
アラブ医学では、蒸留による蒸露剤や蜜膏剤などが使われる。
あの万能薬テリアカは、解毒剤であったが、
後に鎮静剤と考えられるようになった。
アムステルダム薬局方では鎮静剤として記録されているらしい。

中国医学の誤解。
医食同源は、1970年代の日本製の言葉。
薬膳は1980年代の中国で生まれた言葉。
どれも中国の伝統の考えとは言い難い。

ヒポクラテス:病気は自然が癒してくれる。
Nature is the best physician of diseases.
自然治癒力こそが病気を治す力である。

紀元前のアレキサンドリアでは人体解剖がしばしば行われた。
実は中国でも解剖は行われている。
紀元後16年、王莽が王孫慶を解剖し、
1045年には欧希範が解剖された。
その解剖後は解剖図が正しくなるのだが、
しばらくすると記述が元に戻ってしまうらしい。

華陀は西域の人かも。
イラン人説とイラン人に学んだ説があるようだ。

医師が薬局を持つことを禁止した
神聖ローマ帝国フレデリック二世1194-1250。
医薬分業の起源である。

中国人と日本人の体質と気質の違い。
薬用量が日本人の3~10倍である。
何でだろう。遺伝的には体質に大きな差があるとは考えられないので、
子どもの頃から飲むことで体が慣れているのかな。

安産樹に見る象形薬理的病理論。
生薬の形や色から薬効を理解する。
……それは類感呪術というもので、
象形薬理的病理論などと評価すべきではないと思う。

ただ、この本はそりゃないよという部分もある。
多成分の混合状態で用いる方が
単一成分より作用が強く副作用が少ないという。
100%有り得ない。作用が強ければ副作用も強いのだ。

伝統医学としてのホメオパシー療法を紹介する。
これは疑似医学だ。ホメオパシーの効果は100%プラシーボである。

日本ではじめて人体解剖したのは山脇東洋だという。
これも正確には部落の人であろう。

私は、光武帝の生涯を描くことを考え、
その対立的存在として耿弇という人物を描きたいと思っている。
耿弇(紀元後3~58)は光武帝の将軍として常勝将軍として知られる。
無敗の将軍ではなく、全勝の将軍である。
引き分けすらないほどの名将であったが、
30代前半で引退してしまい、後半生は医師として生きたと推定される。

無数の命を奪う道から、一個の命を救う道への転身。

名門の御曹司でありながら、師である安丘望之に従い、
遍歴医として生きる耿弇を描きたいのだが、
耿弇を視点人物に取るには、
漢代の医学知識が必要なので、これが難しいんだよな……
竹簡には、耿弇の処方箋が残っているけど、
元将軍だから、外科もやらないはずがないし。
当時は王莽の解剖実験の直後なので、まだ解剖知識が残っていただろう。
『傷寒論』すらない時代だから、今の中国医学とは大きく違うだろう。
『黄帝内経』はちょうど編纂された頃だろうから体系は同じか。
まだ時間がかかりそうだ。

図説 中国文化百華005
『しじまに生きる野生動物たち』
今泉忠明(哺乳類の分類学・生態学)
農文協(2003)


中国の話は少なく、日本の話も多い。動物のルーツの本。

孟子に記録された家畜による自然破壊。
臨淄郊外の牛山は禿げ山になってしまった。

中国の自然破壊は古代から凄い。
黄河もかつては水が透き通り、黒い河と呼ばれていたぐらいだ。

インド北部の人食いヒョウは18人を殺す。
捕獲されてラクノウ市の動物園にいる。
……それって、動物園で見られるんですか?
18人喰いのヒョウを。怖いです。

パンダの謎。
つい最近までパンダといえばレッサーパンダだった。
染色体数の比較。

レッサーパンダ36
ジャイアントパンダ42
クマ類74
アライグマ類38

パンダはクマに近くない。
ユーラシアのアライグマの系統が次第に絶滅し、
残ったのがレッサーパンダとジャイアントパンダらしい。

スローロリスやコアラは動きが鈍い。
毒素を摂取する動物は低代謝なことが多いらしい。

図説 中国文化百華007
『王朝の都 豊饒の街』
伊原弘(宋代の研究者)
農文協(2006)


図版たっぷりに中国の都市を知る。
ただし宋が中心。

都市の思想を知る。
清明上河図の詳しい解説など。


・今日の一言
自然は最良の医者である。(ヒポクラテス)
Nature is the best physician. (Hippocrates)
자연은 가장 훌륭한 의사이다. (히포크라테스)
自然是最佳的医生。(希波克拉底)

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