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不況のメカニズム(中公新書) [本(経済学思考法]

『不況のメカニズム/小野善康/中公新書/2007』
著者:マクロ経済動学
評価:労働資源の効率配分の経済学をケインズ「一般理論」から考える

需要刺激策は失業者対策ではなく経済全体の効率化。
無駄な公共事業は失業手当と同じ。
公共事業の維持費は単なる再配分。
乗数効果は存在しない。
不況時期における労働資源を無駄をなくすことが必要なのだ。
景気対策とは余った労働資源を活用して経済全体の効率化を目指すことである。

セイの法則:供給はみずからの需要を生み出す
というものがあるらしい。
デタラメである。これを真に受けたから、日本の不況があるわけだ。

なぜ不況が起こるのか。
市場に不安がある。投資せず貨幣を保有する。総需要が低下し不況となる。

流動性の罠である。
物価の低下する。貨幣の価値が上がる。投資するより貨幣の所有がよい。
需要が不足し雇用を圧迫する。物価が低下する。貨幣の価値が上がる……
と循環して、他の要因による下げ止まりまで転落していくのだ。

住宅のないホームレスが増加するのに
住宅産業は仕事不足で倒産が相次ぐという矛盾。
これは政府が介入するしかないのだろう。

ゴーン改革は2万人規模のコスト削減による効率化である。
これは1社だけの改革で、日本全体にはマイナスである。
もしすべての会社がゴーン改革をすれば、日本全体が全滅することになる。
他の会社がしないから有効なだけなのだ。

破産した夕張市の教訓とは。
夕張市が使ったお金による仕事は周辺自治体に流れた。
夕張市が興した仕事が夕張市民のみを雇用していたら借金は返済できた。
北海道の他の地域は夕張市のお金を受け取り節約したのだ。
もし北海道全域が夕張市のように振る舞えば北海道の経済は活性化したとする。
非常に面白い考えである。

こうした合成の誤謬は経済ではしばしば起こることだ。
個人として正しい判断が、全員がすると全員が全滅になる。
これがゴーン改革である。
全員としては正しい判断が、自分一人だけだと、自滅になる。
これが夕張市の破綻である。

どうすれば不況を脱出できるか。
不安が解消されて流動性選好がなくなるまで不況という。
そして不況脱出には不安を解消することしかない。
それは世代交代による景気循環、35年かかるかもしれないとする。

ただ不安という要因がそこまで大きいというのには異議がある。
所得と資産のバランスの崩壊が不況の原因というのが私の考えである。
すなわち、所得が個人の消費率を決め、資産が消費の上限を決める。
バブル期以降、所得の大きい人が資産も大きいという状態から、
所得はないが資産の大きい人と、
所得は大きいが資産のない人が多数生じてしまった。
すると、日本全体では消費率が大きく低下するのだ。
このことは以前のエントリーでも書いたし、HPにも書いた。
私は、現在の日本の不況対策には税制改革が正しいと考える。
ちなみにケインズも不況対策として、
1に税制改革、2に金融改革、3に公共投資として挙げている。
その効果と対象は1が長期、2が中期、3が短期であり、
日本の長期不況に対応するのは税制改革なのだ。

経済学の間違いは、お金を見過ぎるのことだと思う。
お金の本質は、労働交換券である。お金を得るとは、他人の労働を得るということ。
国家経済を見るときは、お金の動きでなく、労働の動きを見なければならない。

例えば、お金の動きというだけなら、
私とあなたとの間でただ紙幣を交換するだけでも経済行動になってしまうが、
労働交換としては0となる。

あるいは、ボランティア活動ではお金はほとんど動かないが、
労働交換としては激しく動きがある。

経済学は、無意味なお金の動きを無視するべきだが、
ボランティア活動は捉えねばならない。

労働資源という観点からマクロ経済を見る小野善康は、
なかなか重要なことを言っているのだ。

・今日の一言
経済学は労働交換を解き明かす学問でなければならない。
Economics has to be the science which solves the mechanism of labor exchange.
경제학은 노동 교환을 밝히는 학문이 되야 한다.
经济学必须是阐明劳动交换的学问。

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