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日本人になった祖先たち [本(東洋史]

『日本人になった祖先たち』
篠田謙一(分子人類学)
NHKブックス(2007)

DNAから人類進化と日本人の由来を解明する。
良書。

ネアンデルタール人は70-50万年前に分岐した。
すなわち私たち現代人とは異なる枝の人類である。

著者はDNAや遺伝子を
アナロジーに使うことを嫌っている。
"創業者のDNA"、"ものづくりのDNA"などの表現は、
DNAを誤解させるからだ。
私も同感で、このような衒学的な表現は恥ずかしいものと思う。

著者は高校では生物学は必修科目でないことを憂いている。
これは全く同感である。生物学はただ理科の科目というだけでなく、
人権や差別、さらに道徳問題に関係する重大なものであるる
生物学は、すべての人にとって必須の学問なのだ。

一般に隣接して暮らす人々は最もDNAを共有する。
フィンランドやハンガリーは、東洋系の文化と言語を持つ国だが、
その人たちは完全に西洋人の風貌であり、
DNAも周囲の西洋人と同じなのである。

酒を飲めるかどうかのアセトアルデヒド分解能力を持たせる遺伝子。
酒に弱い変異型は中国南部で生まれた。
正常遺伝子が2つある日本人は、約56%。
1つが変異型の人は約38%。
2つとも変異した人は約4%。
1つだけ変異した人の分解能力は、半分ではなく約6%しかない。
日本人の半数は酒が飲めないのである。

ミトコンドリアDNAで人類を分類すると4種になる。
その内の3種はアフリカ人だ。
それほどアフリカ人は変異が大きいのである。
男性平均身長が140cm以下のピグミーから
180cm以上のマサイまでいるのだ。

インド人の60%はアジア系DNAを持つ。
言語的には印欧語族と呼ばれるがDNAは違うのだ。

沖縄の人の由来。
沖縄は狩猟採集で永住するには狭すぎる。
農耕を持ち込んで定住可能になった。
南太平洋に最初に移住したのも中国南部の農耕民であった。
今の沖縄人は本土から南下した人たちである。
台湾とは関係がない。

朝鮮半島に縄文人と同じDNAの人たちがいる。
北部九州と朝鮮半島南部は同じ地域集団に属しているのだ。
これは古代の九州王朝を支持しているといえるだろう。
半島南部と九州北部の海洋王朝があったのだ。

朝鮮半島と日本人の近縁性を説明するのに、
埴原和郎は100万人渡来説を出した。
しかし今は縄文人と弥生人の人口増加率の差で説明可能とする。
農耕の力による人口爆発があれば、
最初に渡来した人の数は少なくてよいのだ。
さらにもう一つ要因を考えることもできる。
『旅と病の三千年史』
のように、渡来人は結核とともに来たという考えである。
縄文人は結核に抵抗力が全くなく、
少数の弥生人の子孫のみが繁栄したのかも知れない。

日本人に近縁なのは朝鮮半島、遼東半島、山東半島の人々である。
これら韓国人、中国人は、アイヌ人や沖縄人よりも
日本本土の人たちに近縁なのだ。

これは結構、重大な意味がある。
というのも、沖縄人は日本本土から移住した人たちであり、
『新説!日本人と日本語の起源』
にも書かれているが、3世紀に南九州人が琉球へ南下したのであり、
これはほぼ確実なものと考えられているのだ。

その沖縄人よりも中国人、韓国人の方が近いというのは、
日本人が遼東半島、山東半島の中国人や朝鮮人と分離したのは、
その3世紀より後であることを示唆するからだ。

岡田英弘は、
『倭国-東アジア世界の中で』  
において、中国春秋時代の越国を日本人、韓国人の祖先と想定している。
越は呉と戦い勝利して、中国の覇者となり、山東半島まで進出し、
その後、忽然と崩壊する。
その前5世紀の越人が、
華南⇒青島⇒朝鮮半島⇒日本と移住したと考えているのだ。
呉越同舟や臥薪嘗胆がまさか日本人と韓国人のエピソードだとは……

DNA分析が示した、
日本人と、朝鮮半島、遼東半島、山東半島の人々の近縁性は
氏の強引な推測が、正しい可能性を示している。

これらの分析はミトコンドリアDNA、すなわち女系の分析である。
対して男性の系統である、Y染色体の分析もある。
ところこの場合、大陸と日本のY染色体DNAは、
大きく異なっているのだ。
そして、これは大陸側に原因があるという。

これは何を意味しているのか?
朝鮮半島、遼東半島、山東半島では、
男系のDNAが断絶しているということだ。
別の民族の侵入により、大量に男性が死んだことを意味する。
モンゴルや清により、男性の系統が入り交じっているのである。

『倭人と韓人-記紀からよむ古代交流史』
上垣外憲一(日韓文化交流史、比較文学、比較文化)
講談社学術文庫(2003)


古代の列島と半島の関係を知る。

古事記でいう高天原は朝鮮半島だそうだ。

半島から鉄を輸入し、奴隷、玉、織物を輸出していたという。
日本から輸出された翡翠が新羅や加羅で発見されているらしい。

神功皇后の新羅征伐とは新羅系である下関王朝の打倒のこと。

豊かな木材による造船の発達が4-5世紀の倭国の強さ。
韓国は木が少なく海軍力が制限されるのである。

『日本人とは何か』
宮城音弥(日本の心理学者の草分け)
朝日新聞社(1972)


多角的かつ客観的な良書

日本人の会話には失文法的傾向があるという。
そこに南洋系の語彙に、アルタイ系の文法が融合した可能性を見る。

日本の精神病者には宗教妄想がなくかわりに天皇妄想がある。
キリストの弟子でなく天皇の弟になるという。

欧米人はいう、日本人は嘘をつくと。
それは個人の責任を重視しないため、
騙すのでなく自分の発言を重要視しないからだという。

日本人論の問題点3つ
・自分の狭い専門からだけ考察する
・一つの標語で表そうとする
・明治以来の政治教育のもの

私は宮城音弥の本はほとんど読んでいるし、できるだけ買っている。
なぜ宮城音弥の文章が好きなのか。
まず一文が短く、歯切れがよい。本も薄い。
そして常に多角的であり、客観的でのめり込むところがない。
私の思考にフィットする部分が多いのである。

朝鮮語と日本語の語彙の類似点
水・ミル、釜・カマ、事・コト、串・コス、酢・スー、
熊・コム、暖か・タッタト、鍋・ナンビ、朝・アシャムなど。

日本語:"買う"の過去形は"買った"
韓国語:"사다サダ(買う)"の過去形は"샀다サッタ(買った)"
など、文法でも気になる類似は多い。

『日本人のルーツ 探索マップ』
道方しのぶ(フリーライター)
平凡社新書(2004)


考古学の話。

華北の新石器時代人は、現代華北人より
華南人や東南アジア人に似ているという。

これの理解としては、
後から中央へと別民族が進出し、
元々いた民族が東南アジアや日本や韓国へ押し出されていくのである。
だから中国人というのは、文化は古いが遺伝子はちっとも古くない。

日本人も韓国人も中国人も、
民族の移動というものをまともに理解していない。
3000年前に住んでいた中国大陸、朝鮮半島、日本列島の古代人は、
今の中国人、韓国人、日本人とあまり血縁関係はない。
当たり前だが北京原人と中国人に血縁関係は全くない。

・今日の一言
越王句践は日本人の先祖かもしれない。
King of Yue "Goujian" may be an ancestor of Japanese people.
월나라 왕 구천은 일본인의 조상일지도 모른다.
越王句践说不定是日本人的祖先。

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