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怒りとは何か-怒りの社会的役割 [本(心理学]

私は感情の心理学が自分の知識の焦点であると考えている。
私はHPや著書で、多様な感情が生物進化における行動の分岐に対応し、
各感情のそれぞれが進化系統関係にあることを主張している。
進化の系統図思考を用いることで、
あらゆる感情の論理構造を説明することができるのである。

怒りとは何か?
怒りは、ある行動や思考が阻害され、停止されるときに生まれる。
怒りとは、突破行動の予期感覚である。
怒りを感じるとは、今から突破行動をしようという自覚である。

動物がそのテリトリー哨戒時に、
侵入した相手を撃退する行動が怒りの行動である。
人間で言えば自分の権利や行動、自分の領域が奪われるとき、
怒りを覚えるわけである。

怒りの本質は防御的なもので、
すぐ怒る人とは防御反応が過剰だということである。
ゆえに真に自分の能力に自信のある人間は、むやみに怒らないものである。

もちろん、突破行動すべきでない場面もたくさんある。
人はそうした突破行動すべきでない状況を経験することで、
7つの下位感情を発達させる。
それが不平不満、恥、軽蔑、憤り、恨み、悔しさ、焦燥感である。
精神の安定した人は、これら下位感情のバランスに優れている。

現代人の問題は、怒りが多すぎて困るよりむしろ、
むしろ怒るべきところで怒れないことである。

なぜ怒ることができないのか?
それは理性が強すぎるため、利益を考えるからである。
利益で行動する人は怒ることができないのだ。

なぜなら怒ることは、肉体的な対決をもたらし、
経済的な利益になることもなく、時間が消耗するだけであるからだ。
理性的に考えると、怒ることには何の益もないのである。

ところがこれは長期的かつ社会的には不利益をもたらす。
例えば、禁煙の場所でタバコを吸う人がいても誰も怒らなければ、
吸う人はいなくならない。
マナーと呼ばれるものの多くは、怒る人がいないと成立しないのである。
このとき怒ると、相手の逆ギレの危険があるから、
自分個人としては明らかに損な行動であるが、
そういう人がいてこそ社会全体としてはマナーが向上することになるのだ。

個人のいじめにおいても同じである。
個々のいじめに対して怒ることは、反撃を引き出して危険であるから、
短期的にはマイナスである。
理性的に考えると怒ることができない。
しかし怒らないことにより、相手のいじめ行動は継続し固定されてしまう。
いじめの本質は、群れ動物における順位付け行動であり、
怒らないことは、劣位個体という認定を容認することになるのだ。
怒らないことで、相手に容認のシグナルを送ることになるのだ。
長期的にはやはり怒らないことが不利益を生み出す。

優れた人間観察力を持った孔子の言行録である『論語』には、
唯仁者能好人,能惡人。
(思いやりのある人でこそ人に優しくでき、よく人を悪むことができる)
という言葉がある。
利で動く人は怒ることができず、
仁(人を大切に思う気持ち)があってこそ怒ることができるのだ。

自分の肉体や金銭的な利益でなく、
自分自身の精神性を大切に思う気持ち、
すなわち自尊心(自分へ向けられた仁)が強ければこそ怒ることができる。
そして、それでこそ他人が虐げられているときも怒ることができる。

怒ることができない人の典型は、
権力者に張り付いているおべっか使いに見ることができる。
彼らは、ご主人にどんなに罵られても怒らないものだ。
知恵を重視し、利益を見る人はあのようになってしまうのである。

怒りは教育にも関係する。
子どもが悪いことをしても怒ってはいけない、叱るのだ、
という言葉を聞いたことがないだろうか?

これは間違いなのである。
相手が大人なら叱ってもよいが、子供には怒らなければならないのだ。
理性的に叱ると、子供は自他の分離感が弱いため、
大人の冷静さを受け取ってしまい、叱った言葉を真剣に受けとめないのだ。
大人が自分自身の不快さをあらわにして怒ることにより、
子供もまたその不快さを受け取り、
自らの不快さとして受け入れることで、
大人の怒りを真剣に受けとめることができるのだ。

叱ると怒るの違いとは何か?
怒るはその当人の防衛反応であり個人的なことであるが、
叱るは相手のための訂正行動であり、あくまでも他者に向けたものだ。
ところが子供は自他の分離が弱いので、
他者として叱っても効果が弱いのである。
子供には、叱るでなく怒るでなければならないのだ。

大人はよく怒らねばならない。

・今日の一言
利益で行動する人は怒ることができない。
The person who acts from self-interest is not able to get angry.
이익을 위해서 행동하는 사람은 화낼 수 없다.
只顾个人私利的人不会发怒。


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武侯仁従

こども相手に怒るのは難しい。怒らないと、その意図が通じない。だが、怒りにまかせると、八つ当たりも含まれ、こどもを使ってストレスの発散・いじめと同様になる。

よく怒る。大切ですね。
by 武侯仁従 (2007-04-13 15:47) 

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