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故事成語でわかる 経済学のキーワード(中公新書) [本(経済学思考法]

『故事成語でわかる 経済学のキーワード』
梶井厚志(理論経済学、情報経済学、ゲーム理論)
中公新書(2006)


中国の故事で社会構造の論理性を知る。
社会科学を知る良書。

世の中が論理で割り切れない不可解なものと
突き放してしまう人は是非読んで欲しい。
複雑な社会といえど論理的に動いていることが理解できるはずだ。

覆水盆に返らずは、サンク・コストのこと。
蛇足は、追加的便益について、
余分なものの価値は本来部分の価値と異なることを教えてくれる
他山の石から、比較優位の原則を学ぶ。

サッカーくじの失敗。サッカーくじはなぜ赤字か。
宝くじのような6等がない。だから誰も当たりを経験しない。
あまりに当たらないとやる気がなくなる。
ほとんどの人が当たらないサッカーくじは、
数回試しただけでみな止めてしまうのだ。

グローバル化は世界全体の便益を増やすが、
誰がそれを享受するか語らない。
中国などで安く作ることで、世界全体の利益は増すが、
その利益を誰が受け取るかはわからない。
こうした世界の利益を適切に分配するシステムが、
世界には求められているだろう。
国連などの国際組織の強化が必要なのである。

経済学の基本、水とダイヤモンドのパラドックス。
人間に必需の水は不要なダイヤモンドよりなぜ安いか。
すなわち、価値は希少性が生み出すのである。

市場経済の競争を規制すると何が起こるか。
ある優れた品物を市場に任せず、抽選で分配するとしよう。
しかし、それでも買いたい人は、
抽選で当たった人に頼んで購入するだろう。
すると、抽選で当たった人が価格をつけて販売することになってしまう。

これが大きな問題になるのは、
すなわち、価値を生み出した生産者でなく、
偶然の当選者が利益を得るシステムになるからだ。
結果、価値を生み出す生産者はやる気をなくし、産業の質が低下する。

これこそまさに共産主義が失敗した理由であろう。

疑わしきは罰せずは、書経・大禹謨篇より。
罪を悪んで人を悪まずは、孔叢子の刑論より。
古い言葉なのに驚き。

・今日の一言
疑わしきは罰せず。
의심스러운은 처벌하지 말.
罪疑惟轻。
The benefit of the doubt.

タグ:梶井厚志
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