神々の沈黙 [本(哲学思想]
『神々の沈黙』
ジュリアン・ジェインズ(動物行動学、哲学、英語学、考古学)
紀伊國屋書店(2005)
意識の進化と文明の発達の関係を探る。野心作。
意識という言葉の定義が普通ではない。
この本の定義における意識として見れば非常に面白い本だ。
意識は言葉の比喩によって創造された、
意識は比喩から生まれた世界のモデルだという。
意識は言語に基づいて創造されたアナログ世界であり、
意識は言語の後に生まれたという。
イーリアスには、精神的な事柄を示す言葉が欠落している。
神々が行動を起こさせている、
命令を下す神と従う人間で構成される二分心で構成されているのだ。
そして著者は神々の声と右脳の共通性を指摘する。
デネットは、これを意識を進化でなく、
学習で誕生したとする考えと評した。
数千年前まで人類は意識を持たず二分心で動いていた。
文字と比喩の発達で意識が誕生したという。
意識が生まれたというのは明らかに変だが、
文字と比喩により意識が進化発達したということは正しいだろう。
意識するのは特定のある木であり概念の木ではないという。
間違い。これは全く逆なのだ。
我々は特定の木などは意識できない。
意識できるのは概念=運動感覚の方なのである。
特定の木は意識できず、ただ知覚できるだけだ。
思考は意識されず自動的だという。
これも間違い。
意識することそのものが意識されないのは当然のことだよ。
よく考えて見よう。
ネアンデルタール人が現代人に繋がるという記述。
これは原著が古いための間違い。
『新書365冊』
宮崎哲弥(仏教哲学に詳しい評論家)
朝日新書(2006)
新書をたくさん読みました。
社会哲学系の評論に良いものが多い。
社交的であることは差別的であること。
納得した。周囲の人の中でも好悪のはっきりし、
人を差別する人ほど付き合いが広かったりする。
公的な差別は悪だが、私的な差別は悪ではない。
日本人には法が権力から人民を守ってくれるという感覚がないという。
まあ実際、日本は法は権力から分離できていないからね。
精神科の入院患者数は34万人で世界最多らしい。
日本の恥の概念と関係するのかも。
介護も売春も同じ労働カテゴリーに入るという。
まあ、どちらも女性が多いけど……
仏教がインドで衰退した理由。
反ヒンドゥーとしての生まれた仏教がヒンドゥー化してしまい、
反ヒンドゥーのイスラムの流入で衰退した、ということらしい。
仏教はどこまでも因果律に則った自由意思という。
仏教の論理性と認識論の秀逸さには格別のものがある。
鈴木大拙の禅の思想も面白いし。
上田紀行批判がかなりマヌケ。
上田は人類学者だから、仏教の本質から氏を批判しても何の意味もない。
人類学はその場にあるものを捉える帰納的なもの。
それが真の仏教かどうかはどうでもいいことなのだ。
『知の歴史』
ブライアン・マギー(史学、哲学、政治学)
BL出版(1999)
西洋哲学史の解説。ビジュアルな哲学入門でわかりやすい。
西洋哲学史の解説としては優れている。
英仏独米の哲学が網羅されている。
ただし東洋哲学もアラビア哲学も一切扱われない。
東洋哲学は現代科学につながらないから無視するのはわかるが、
ギリシャ哲学の後継者たるアラビア哲学を無視するのは、
西洋人らしい傲慢さと言わざるを得ない。
ギリシャ哲学は現代ヨーロッパ哲学の先祖ではなく
アラビア哲学を経由して西洋に伝わったのである。
タイトルが『知の歴史』なのに、
ギリシャ哲学と近代以降のヨーロッパ哲学しかほとんど登場しない。
西洋人がヨーロッパにしか文化がないと考えていることが
よくわかる構成である。
『心身の合一』
モーリス・メルロ=ポンティ(現象学)
ちくま学芸文庫(2007)
原典を参照しながら読む講義録。
しまった。マールブランシュとビランって誰だ。(笑)
ベルクソンとメルロ=ポンティしか知らないのに無謀だった。
・今日の一言
仏教哲学の認識論は非常に優れている。
Buddhist epistemology is very excellent.
불교 철학의 인식론은 매우 우수하다.
佛教哲学的认识论非常出色。
ジュリアン・ジェインズ(動物行動学、哲学、英語学、考古学)
紀伊國屋書店(2005)
意識の進化と文明の発達の関係を探る。野心作。
意識という言葉の定義が普通ではない。
この本の定義における意識として見れば非常に面白い本だ。
意識は言葉の比喩によって創造された、
意識は比喩から生まれた世界のモデルだという。
意識は言語に基づいて創造されたアナログ世界であり、
意識は言語の後に生まれたという。
イーリアスには、精神的な事柄を示す言葉が欠落している。
神々が行動を起こさせている、
命令を下す神と従う人間で構成される二分心で構成されているのだ。
そして著者は神々の声と右脳の共通性を指摘する。
デネットは、これを意識を進化でなく、
学習で誕生したとする考えと評した。
数千年前まで人類は意識を持たず二分心で動いていた。
文字と比喩の発達で意識が誕生したという。
意識が生まれたというのは明らかに変だが、
文字と比喩により意識が進化発達したということは正しいだろう。
意識するのは特定のある木であり概念の木ではないという。
間違い。これは全く逆なのだ。
我々は特定の木などは意識できない。
意識できるのは概念=運動感覚の方なのである。
特定の木は意識できず、ただ知覚できるだけだ。
思考は意識されず自動的だという。
これも間違い。
意識することそのものが意識されないのは当然のことだよ。
よく考えて見よう。
ネアンデルタール人が現代人に繋がるという記述。
これは原著が古いための間違い。
『新書365冊』
宮崎哲弥(仏教哲学に詳しい評論家)
朝日新書(2006)
新書をたくさん読みました。
社会哲学系の評論に良いものが多い。
社交的であることは差別的であること。
納得した。周囲の人の中でも好悪のはっきりし、
人を差別する人ほど付き合いが広かったりする。
公的な差別は悪だが、私的な差別は悪ではない。
日本人には法が権力から人民を守ってくれるという感覚がないという。
まあ実際、日本は法は権力から分離できていないからね。
精神科の入院患者数は34万人で世界最多らしい。
日本の恥の概念と関係するのかも。
介護も売春も同じ労働カテゴリーに入るという。
まあ、どちらも女性が多いけど……
仏教がインドで衰退した理由。
反ヒンドゥーとしての生まれた仏教がヒンドゥー化してしまい、
反ヒンドゥーのイスラムの流入で衰退した、ということらしい。
仏教はどこまでも因果律に則った自由意思という。
仏教の論理性と認識論の秀逸さには格別のものがある。
鈴木大拙の禅の思想も面白いし。
上田紀行批判がかなりマヌケ。
上田は人類学者だから、仏教の本質から氏を批判しても何の意味もない。
人類学はその場にあるものを捉える帰納的なもの。
それが真の仏教かどうかはどうでもいいことなのだ。
『知の歴史』
ブライアン・マギー(史学、哲学、政治学)
BL出版(1999)
西洋哲学史の解説。ビジュアルな哲学入門でわかりやすい。
西洋哲学史の解説としては優れている。
英仏独米の哲学が網羅されている。
ただし東洋哲学もアラビア哲学も一切扱われない。
東洋哲学は現代科学につながらないから無視するのはわかるが、
ギリシャ哲学の後継者たるアラビア哲学を無視するのは、
西洋人らしい傲慢さと言わざるを得ない。
ギリシャ哲学は現代ヨーロッパ哲学の先祖ではなく
アラビア哲学を経由して西洋に伝わったのである。
タイトルが『知の歴史』なのに、
ギリシャ哲学と近代以降のヨーロッパ哲学しかほとんど登場しない。
西洋人がヨーロッパにしか文化がないと考えていることが
よくわかる構成である。
『心身の合一』
モーリス・メルロ=ポンティ(現象学)
ちくま学芸文庫(2007)
原典を参照しながら読む講義録。
しまった。マールブランシュとビランって誰だ。(笑)
ベルクソンとメルロ=ポンティしか知らないのに無謀だった。
・今日の一言
仏教哲学の認識論は非常に優れている。
Buddhist epistemology is very excellent.
불교 철학의 인식론은 매우 우수하다.
佛教哲学的认识论非常出色。
タグ:宮崎哲弥 ジュリアン・ジェインズ
コメント 0