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テレビ脳の大人たち [本(日本の問題]

『壊れる日本人/柳田邦男/新潮社/2005』
著者:医療系のノンフィクション作家
評価:危機感はわかるが対策は役立たず

西洋思考を嫌い東洋的なあいまい文化を勧めている。
困ったものだ。
"西洋思考"といい"あいまい文化"といい、実態を見ず十把一絡げ。
西洋の科学主義、合理主義、効率主義の歪みというが、
日本には効率主義はあるが、科学主義や合理主義があるとはいえない。
むしろ、日本的なあいまいさに、
西洋的な効率主義だけを導入したから歪んでいるのだ。
効率を支える土台である合理と科学が欠如しているのである。

子どもの変化の問題。
昔の子どもが"親はなくても子は育つ"と言われたのは、
親がいなくても親かわりがいたからである。
地域集団などがあり、親のかわりに模倣できる大人を発見できたからだ。
自分に適切な模倣対象を発見しやすかったのである。

この点で対策というなら、地域などの地縁組織の強化ということになる。
テレビの「ご近所の力」などの動きを強く推すことになろう。
子どもと大人の接点をいかに増やすか。
しかしそれには、大人の労働時間の短縮が不可欠だろう。

テレビなどメディア漬け問題。
しかし、これが重症なのは子どもではなく大人である。
50代以上の日本人は一日平均5時間以上もテレビを見ているのだ。
大人こそ「テレビ脳」に侵されてまともな思考力を失っている。
対して、子どもはせいぜい2時間ぐらいである。
大人がまず自分から率先してメディア離れしなければ成功しない。

こうした社会問題は、社会学の対策でなくては成功しない。
河合隼雄と対談したそうだが、どうもこの辺り、
心理学の有効領域と社会学の有効領域の混同をしているように思う。
質の低い心理学者には、
心理学の方法で社会問題を解決できると考えるものがいるので
要注意である。
心理学が解決できるのは個人の問題である。
90年代から心理学者と社会学者の領土戦争が激化しているが、
多くの問題で、社会学者に軍配が挙がる。

『日本人論の系譜/南博/講談社現代新書/1980』
著者:社会心理学者
評価:古いので。

福沢諭吉:西洋人は外の美、日本人は内の美
日本人は家内の人にして西洋人は戸外の人なりとのこと。

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コメント 1

武侯仁従

お久しぶりです。

テレビ脳の大人・というのは納得。

>質の低い心理学者には、
心理学の方法で社会問題を解決できると考えるものがいるので
要注意である。

ミクロ経済学ですべての経済問題が解決できる・という勘違いに似てますね。社会問題は基本的に社会学者の方が適当でしょう。社会心理学では戦争を止めさせられないですし、孫子とか「カビの生えた」兵法の方がまだ有効ですからね。て「カビが生えた」としかか考えないから質が低いのかな。

できたらブログにリンクさせていただきますが、よろしいですか。

では再見!
by 武侯仁従 (2006-08-13 17:54) 

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