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いじめの社会理論 [本(教育]

『いじめの社会理論』
内藤朝雄(社会学者)
柏書房(2001)


正しい現状認識。ずれた構造分析。

英国や北欧の激しいいじめ。
英国では毎年6-7人いじめで自殺するという。

いじめ加害者に逐一反撃すると、さらにいじめを誘発する悪循環になる。
いじめられたら反撃しろというのは、正しくないのだ。

これは戦争に似ている。
侵攻されてから反撃しても戦争がなくなることはない。
報復合戦が繰り返され、戦争が激化するだけである。

正しくは、
いじめたら反撃されると"思わせろ"、
侵攻したら反撃されると"思わせろ"、
が、正解である。いじめは根から断たねばならないのだ。

ヤクザが見た目にも怖そうな服装をしているのもそのためである。
彼らはケンカや刃傷沙汰を起こしたくないから、
怖そうな服装をしているのだ。

いじめを無くすには、
いじめの多発する環境と発生しない環境を比べるのがよい。
いじめの多い環境とは、刑務所、捕虜収容所、強制労働キャンプなど。
戦時中の日本にも凄まじいいじめがあった、隣組制度のためである。

共通点は、法が通用しない孤立した世界ということである。
だから暴力系いじめに対しては、
学校内治外法権を廃して、
法システムにゆだねるべきとする著者の提言は極めて正しい。

学校ではさらに、ものわかりのいい教師がいる。
暴力をふるい、いじめのボス生徒と友好的であったりする。
このあたりの記述は、
著者の体験も含まれているのではないかと思わせるリアルさがある。

こうした異常さを排除するには、
子どもの法と人権を学校に正しく浸透させる必要があるだろう。

世の中には多様な人間がいる。
他者コントロールによる全能追求、
機会をめざとく捉え計算づくで悪のりするタイプがいる。
他人をさんざん利用して使い捨てたり、
人のいじめては自分の利益だけを確保する。
彼らは、他人への共感性が欠如している。

もちろん、こうした人たちといえども、
他人の気持ちが全く理解できないのではない。
他人が何を考え感じているのか考えることの優先順位が低いのである。
自分のことで一杯で他人について考える順番が回ってこないのである。

だからじっくり考えさせ反省させると理解はできるのだが、
その圧力から解放されるとまた自分のことばかり考えるようになる。

こうした人を矯正できると考えるのはあまり現実的ではない。
むしろその悪い面が表面化しないように
社会を設計することが大事なのである。

潜在的な悪人とも共存できる社会こそがよい社会である。

・今日の一言
潜在的な悪人とも共存できる社会こそがよい社会である。
The society which coexists with potential bad people is a good society.
잠재적 범죄자와도 공존할 수 있는 사회가 좋은 사회이다.
和潜在的坏人能共存的社会就是理想的社会。

タグ:内藤朝雄
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コメント 1

武侯仁従

なるほど、いじめは戦争・外交に似てますね。

だから、いじめに悩んでいた私は「兵法」に解決を求めたのか!とも思います。
無力で善良なだけでは、いじめの対象になるだけですからね。

再見!
by 武侯仁従 (2007-02-17 18:46) 

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