SSブログ

自己コントロールの檻(講談社選書メチエ) [本(社会心理学]

『自己コントロールの檻』
森真一(知識社会学、理論社会学)
講談社選書メチエ(2000)


正しい現状認識と空虚な構造分析の本

現代人は自己コントロール能力が
低下しているというのは嘘。
現代人は高度なセルフコントロール能力を
要求されているのだ。
EQに代表される「心理学的自助マニュアル」が
流行るのもそのためだ。

現代の若者を自閉的ととらえるなど、
人格崇拝が高度化した社会状況である。
こうした社会問題を個人に還元してしまう間違いを指摘する。

現代人は消費生活で道徳を忘れ欲望に振り回されているというより、
以前なら許せたことが許せなくなっているのだ

人格崇拝欲望に答えることで心理学はその状況を再生産し
心理学へのニーズを高めている。
著者は社会の心理学化を指摘するのだが、
問題は、著者自身もしっかり心理学化していること。
社会学者なら統計などの手法で、科学的に間違いを指摘できるだろうに、
なぜ著者自身が心理学化してしまうのだろうか?

著者の解答は、
聖なる自己が高度化、純化したためキレるという現象が増えたという。
こんものは原因ではなく言い換えに過ぎない。

正しい解答を提示しておこう。
産業構造が第三次産業、サービス産業へ移行することで、
高度なコミュニケーションスキルを必要とする産業の比率があがり、
そうしたスキルが不足する人が目立つようになったということである。
そして社会のサービス産業に対応するため心理学が流行るのである。

農村で田植えするのに、
コミュニケーションスキルはそれほど必要ではない。
例えば、自閉症者はいつの時代も一定人数いたのだが、
それが問題化することはなかった。
自閉症者に欠如するコミュニケーションスキルが
社会に要求されていなかったからである。

タグ:森真一
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。