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ブラック・スワン[下]-不確実性とリスクの本質 [本(論理思考]

『ブラック・スワン[下]』
ナシーム・ニコラス・タレブ(不確実性科学)
ダイヤモンド社(2009)


統計と行動経済学のだらだらした話。

技術進歩は本質的に予測できないもの。
私たちは将来何が発明されるかわからない。
わかっていたら今発明できる。
故に将来何が起こるのかわからない、

企業競争の厳しさ。
1957年の株価指数の500企業。
40年後に生き残ったのは74社のみ。

ベル・カーブ的かマンデルブロ的か。
自己アフィン性。
帰納と黒い白鳥の問題。
などなど、正直ちょっと退屈な本。

・今日の一言
私たちは将来何が発明されるかわからない。わかっていたら今発明できる。故に将来何が起こるのかわからない。
우리들은 장래 무엇이 발명될지 모른다. 알고 있으면 지금 발명할 수 있다. 그러므로 장래에 무엇이 일어날지 알 수 없다.
我们不知道未来发明什么东西。要是知道的话,现在就能发明了。所以我们才不知道未来会发生什么事情。
We can't know what will be invented in the future. If we know it, we can invent it now. Therefore we can't know what will happen in the future.

ブラック・スワン[上]-不確実性とリスクの本質 [本(論理思考]

『ブラック・スワン[上]』
ナシーム・ニコラス・タレブ(不確実性科学、数理系トレーダー)
ダイヤモンド社(2009)


統計と行動経済学のエッセイ。

正直かなり退屈な本。個人的な話ばかり続く。

ブラック・スワンとは、
異常、衝撃的、事後予測可能な存在。
技術革新は黒い白鳥である。

無作為に選んだ1000人の財産に、
ビル・ゲイツが混じっていたら統計の価値は吹っ飛んでしまうこと。

ビギナーズラックとは。
運の悪かった人はすぐやめてしまいサンプルから外れるため。

著者はヨギ・ベラが大好きで、
その言葉を何度も引用している。

工事は何でも予想より遅くなるもの。
例外はエンパイア・ステイト・ビル。
予定より早く安く完成したという。

内容は要するに、
事象には外に開いたものと閉じたものがあり、
外に開いた複雑系事象は予測不可能性が強く、
黒い白鳥が現れるということ。

統計的な錯覚。
成功すると才能があることになるのでありその逆ではない。
成功は運に過ぎず、運が良かった人間を才能があると思うのだ。
しかし統計を知っていれば、
能力などなくとも成功する人がたくさんいることはすぐわかる。

著者についての偶然も面白い。
飛行機がオフィスにつっこむ確率について述べた前著《まぐれ》。
この原著は2001年9月11日の一週間前に出版されたのである。
著者にどうして予言できたのか、連絡がひっきりなしであったという。
もちろん偶然である。

未然に防ぐ英雄は評価されない。
失敗の後に活躍する人間は有名になるが、
失敗を最初から防いだ人は誰も気づかずに終わるのだ。
ちなみにかの諸葛孔明も光武帝について評するときに、
同じことを述べている

・今日の四言
曲突徒薪為彼人,焦頭爛額為上客。(諸葛亮)
劝人趁早把烟囱造弯、柴推移开火源以预防火灾的人,他的功劳被人遗忘了,奋勇救火而受伤的人反倒被尊为上宾。(诸葛亮)
事前に煙突にカーブをつけるように勧め、薪を火の元から離し火災の予防をした人は、その功績が人から忘れられるけども、勇気をふるって消火活動し怪我をした人は、かえって大事なお客として大切にされるものだ。(諸葛孔明)
사전에 굴뚝을 구부리는 것을 권유하고, 땔나무를 불씨에서 멀리 떼어 놓는 등 화재 예방을 한 사람은, 그 공적이 사람에게서 잊혀버리지만, 용기를 내어 소화 활동해서 다친 사람은, 오히려 중요한 손님으로서 소중히 대우받는 법이다. (제갈량)
People forget those who helped prevent fires from happening, such as a person who recommends curving a chimney or keeping firewood away from the fire, but a person who displayed great courage in fighting the fire and became injured is treated as an honored guest.(Zhuge-liang)

成功すると才能があることになるのでありその逆ではない。
성공한 사람은 소위 재능있는 사람이고 그 반대는 아니다.
人成功了,他会被认定为是有才能的人,这个前后是不可颠倒的。
The successful man is the so-called talented man, but the reverse is not true.

The future ain't what it used to be.(Lawrence Peter "Yogi" Berra)
未来は、かつてのような未来ではない。(ヨギ・ベラ)
미래는 지금껏 보아온 것과는 분명 다르다.(로런스 피터 "요기" 베라)
未来不是我们从前所熟知的样子。(勞倫斯·彼得·"尤吉"·貝拉)

It's tough to make predictions, especially about the future.(Lawrence Peter "Yogi" Berra)
予測をするのは難しい。未来についてはなおさらだ。(ヨギ・ベラ)
예상하는 것은 어렵다. 특히 미래에 대해선.(로런스 피터 "요기" 베라)
预测是件很难的事情,尤其是预测未来。(勞倫斯·彼得·"尤吉"·貝拉)

エビデンス主義-統計数値から常識のウソを見抜く(角川SSC新書) [本(論理思考]

『エビデンス主義』
和田秀樹(精神医学、受験技術研究)
角川SSC新書(2009)


根拠に基づく主張をしよう。

健康もトレードオフになるものがある。
コレステロールが低いと
癌になりやすく鬱病が治りにくい。
糖尿病でアルツハイマー型認知症にかかりにくい。

日本のメディアのひどさ。
WHOの勧告では自殺の方法を報じることは避けるべきとされるが
日本のマスコミは無視している。
ある特定の自殺方法が流行するのである。
日本のマスコミは自殺幇助の犯罪集団である。

拒食症の危険ラインは160cmで48kg。
これって芸能人はほとんどがアウトな気がする……

少子化対策は二つ。
フランス式に出生率を回復するか、
フィンランド式教育により子どもの質を高めるか。

・今日の一言
自殺の方法をメディアで報じることは避けるべきである。(WHOの勧告)
자살 방법을 미디어에서 보도하는 것은 피해야 한다. (WHO 권고)
媒体应该避免报道自杀的方法。(WHO的劝告)
The media should not report the method of suicide.(Recommendation of WHO)

タグ:和田秀樹

リスクにあなたは騙される-「恐怖」を操る論理 [本(論理思考]

『リスクにあなたは騙される』
ダン・ガードナー(コラムニスト)
早川書房(2009)

『///』


社会心理学と統計錯覚を知る。

犯罪、テロ、医療における統計的誤謬について。

私たちは歴史上最も健康で最も裕福で最も長生きな人間である。
1278年のロンドンの殺人発生率は10万人あたり15件。
現在の15倍である。

マスコミで騒がれるドーピング。
しかしドーピングよりスポーツ自体の方が遙かに危険である。

たくさんの心理法則が登場する。
確証バイアス(confirmation bias)
集団極性化(group polarization)
係留と調整のヒューリスティック(anchoring and adjustment)
代表性ヒューリスティック(representativeness heuristic)
利用可能性ヒューリスティック(availability heuristic)
情動ヒューリスティック(affect heuristic)
後知恵バイアス(hindsight bias)

直感的判断に影響を与えるのは実例をいかに容易に思いつくか
自分の行動の心臓病要因を三つか八つ挙げるように求める
三つ挙げた人は八つ挙げた人より心臓病の確率を高く見積もった

政治に詳しい人ほど恐怖宣伝の影響を受ける。
政治に関心がある人ほど騙されやすいのだ。

人は近所では犯罪は減り、
国全体では増えていると思う。
マスメディアの力である。

米国司法省の報告。
性犯罪者の再犯率は他の犯罪より低い。
だが人々は彼らに出所後の疑いを持つのだ。

・今日の一言
ドーピングよりスポーツ自体の方が遙かに危険である。
도핑보다 스포츠 그 자체가 훨씬 위험하다.
运动本身比使用肌肉增强剂更危险。
Sports in itself are far more dangerous than doping.

アブダクション-仮説と発見の論理 [本(論理思考]

『アブダクション』
米盛裕二(哲学、パース)
勁草書房(2007)


発見の論理を探る。

パースのアブダクションについて解説した本。
アブダクションの基本公式
・驚くべきCが観察される
・もしHが真であればCは当然の事柄であろう
・よってHが真であると考えるべき理由がある
構造は論理学の後件肯定の誤謬であるのが面白い。

アリストテレスの演繹の論理学
ベーコンとミルの帰納の論理学
パースの探求の論理学
第三の論理学の世界である。

アインシュタイン
経験をいくら集めても理論は生まれない。
ヘンペル
科学理論は観察された事実から導かれるのではなく、
観察された事実を説明するために発明される。

帰納から仮説を作るのは難しいのだ。

発見の二分類。
楕円運動・ケプラーの"ということの発見"
万有引力・ニュートンの"なぜかの発見"
原因と理由の違いである。

仮説選択の4基準
・もっともらしさplausibility
・検証可能性verifiability
・単純性simplicity
・経済性economy

仮説と帰納の違い。
帰納はある事実から同種の事実を推論するが、
仮説は事実から別の種類の事実を推論する。
仮説には飛躍があるのだ。

思うに、大きな疑問点もある。
仮説によって事実を集めるということ。これは少しおかしい。
仮説なしに集めれば、データが膨大になり集められないというが、
これは現実を無視した2分法である。
実際には"集めやすいものから集める"のである。
研究者の身近なところから集めたり、問題の周辺から集めるのだ。
そこには仮説など関係がない。
問題事象の周辺からデータを集め、
そこから帰納もしくは類推することで仮説を得るのである。

・今日の一言(Wikipediaより)
Abduction allows inferring a as an explanation of b. Because of this, abduction allows the precondition a to be inferred from the consequence b.
アブダクションは、 b についての説明として a を推論することを可能にする。 このために、アブダクションは「a は b を必然的に伴う」の前提条件 a がその帰結 b から推論されることを可能にする。
溯因允许推导 a 作为 b 的解释,溯因同演绎反向,通过允许“a 蕴涵 b”的前件 a 推导自结论 b;换句话说,溯因是解释已知事物的过程。
귀추법(歸推法)은 a를 b의 설명으로 추론해내는 방법. 이때문에 귀추법은 "a는 b를 수반한다"의 전제조건 a가 결과 b로부터 추론되도록 한다. 연역 추론과 귀추법은 "a는 b를 수반한다"라는 규칙을 이용해 추론할 때 방향이 다르다.

タグ:米盛裕二

ネット時代の反論術(文春新書) [本(論理思考]

『ネット時代の反論術』
仲正昌樹(社会思想史、比較文学)
文春新書(2006)


ネット議論の虚しさを知る。

心理学的にも、ネットでの議論はあまり成功しないと考えられている。
ネットはどちらかというとブレーンストーミング向きだよね。

ネットの議論での錯覚。
本音をぶつければ何か新しいものが生まれてくるという錯覚。
もちろん生まれたりしません。

見せかけの論争では固定した味方がいなれけばまず敵を作る。
敵を叩くことで味方からいい人と思ってもらえるように、
アピールする友/敵論。
これで成功したのが小泉純一郎というわけ。

法の現実。
裁判における真理/正義はその時の力関係や社会通念で決まるらしい。

ネットは神経戦。
相手が痛くもない腹を探ったらこちらも同じ方法で返すという。
疲れるよね。

最後は粘ったものが勝つ。
時間と体力を持て余している方が勝つのがネットの議論。
実に虚しい。
ですから私もネットでは議論は受け付けません。
みんな本当に人生暇なんだね……

『考えるとはどういうことか?』
井崎正敏(批評、ちくま新書編集長)
洋泉社(2008)


レイコフの認知意味論と論理学についての素人の感想。

認知意味論と論理学の研究を紹介して、自分の意見を付け加えたもの。
どうもあまり正しく理解できていないらしい。

いかなる論理操作の起源も身体的な活動から。
身体と論理の関係について興味深い。

p156に、クレタ人のパラドックスの解説があるが、
よくわかってないようだ。

『合理的とはどういうことか』
岡部勉(哲学、芸術学、コミュニケーション学)
講談社選書メチエ(2007)


価値の実在をめぐる現代哲学の議論を紹介。

興味深い視点。
・考えるとは反応を遅らせる仕組みの帰結
・こころとは行為の選択装置

内容は哲学の議論そのままで、部外者にはその意義が読み取りにくい。

疑似科学入門(岩波新書) [本(論理思考]

『疑似科学入門』
池内了(宇宙論、科学・技術・社会論)
岩波新書(2008)


疑似科学を分類して整理する。あくまでも初歩。

疑似科学の三分類
第一種:占い・超能力・超科学系・疑似宗教系
第二種:永久機関・ゲーム脳・マイナスイオン・健康食品・統計トリック
第三種:環境問題など複雑系の過剰な断定

一番多い錯覚のパターンは、不調のときの行為に原因を求めること。
あることを行った後に良くなると、
それが効果があったと思ってしまう。
人生は山あり谷ありだから、
谷のときの行動に効果があると思ってしまうのだ。

疑似科学は反証ができない。
ラッセルのティーポットとは?
地球と火星の間に、
楕円軌道を描いて公転している陶磁器製のティーポットが存在している。
これは反証ができないが実在すると主張するのはおかしいわけ。

複雑系の問題では論理が不明瞭だからといって否定できない。
日本政府はフロンもBSEも科学的証明がないとして拒否した。
複雑系の困難さを利用して、
科学的根拠なしを当て嵌めるべきではないのだ。
他にも、脚気のビタミン説がその根拠がないとして否定され、
陸軍に大被害を与えたのが有名だ。

・今日の一言
人生は山あり谷あり。だから、人は谷のときの行動が効果があったと誤解する。
Life has its peaks and valleys. Therefore we always misunderstand that the behavior in a valley is effective.
인생은 산도 있고 계곡도 있고. 그러므로 사람은 계곡에서 한 행동이 효과가 있었다고 오해한다.
人生充满了欢乐与痛苦。因此,人们误解在痛苦时候的行为见效。

タグ:池内了

なぜビジネス書は間違うのか-ハロー効果という妄想 [本(論理思考]

『なぜビジネス書は間違うのか』
フィル・ローゼンツワイグ(経営学)
日経BP社(2008)


微妙。
ビジネス書が科学的でないことを指摘した本。

当たり前という気がするが……
否定の否定は肯定ではないことを知るべき。

ソーンダイクのハロー効果とは?
優秀なものは
すべての点で優秀と認識されること。
企業パフォーマンスを決定する要因と
思っている多くの事柄は、
業績を知ってそこに理由を帰した特徴に過ぎない。
要するに後付けなのである。
優れた人材が成功に導くのでなく、
成功すると優れた人材が揃っていると見なされるという。

思うに、これは後者は前者を否定する文章でない。
成功すると優れた人材が揃っていると見なされたからといって、
優れた人材が成功に導いたことを否定することにはならないのだ。

科学的に検証に耐えるレベルにないこと。
ただしその条件では自分でも何も言えないことも述べている。

それじゃ意味がないんだが。
まずこれでは人文系の研究はほとんど否定されてしまう。
ビジネス書に求める要求水準が高すぎるだろう。

しかも条件を高めたのに、
自分はその高めた条件に沿った内容は提示していないのだ。

また問題のスケールを見間違っている。
時空間における因果関係の論理ブロックには大きさがあり、
それぞれブロックの大きさの違いごとに、
異なる因果関係が並行して共存するのだが、
著者は対象の本よりも小さいブロックで論じている。
これではかみ合わないのは当たり前である。

実はこの本は、対象としている本の主張を否定していない。
主張の方法を否定しているだけなのだ。
主張の方法を否定するというのは、
相手の主張の正解率をランダムに近づけるということであって
打ち消すことはできない。
だからこの本の方法では、
「そんなに説得力はないよね」としか言えないのだ。

ビジョナリー・カンパニー2の問題点。
ビジョナリー・カンパニー2のメッセージは、
目標を絞ってねばり強く追いかければどんな企業も偉大になれる、
目標を明確に設定して不屈の精神でやり遂げろだという。
また言葉がうまいと指摘する。
第五水準のリーダー、ストックデールの逆説、
カッテージチーズを洗う、ハリネズミと狐、弾み車と悪循環など。
さらに偉大な企業は安定した業界の企業に過ぎないことも指摘する。

あれ?ビジョナリー・カンパニー2の主張ってこんなんだったっけ?
私は全く気づかなかったんだが。
私が一番重要な主張と理解したのは、
方向性決めるより先に人を集めろだったのだが……
確かにこの主張が主旨ならくだらないことに同意する。

・今日の一言
ソーンダイクのハロー効果。優秀な人はすべての点で優秀と見なされ、駄目な人はすべての点で駄目だと見なされる。
손다이크의 후광효과(halo effect). 우수한 사람은 모든 점에서 우수로 간주되고, 열등 사람은 모든 점에서 열등으로 간주된다.
桑代克的光环效应。大家认为优秀的人是什么地方都优秀,不好的人是什么地方都不好。
Thorndike's halo effect. We consider an excellent person is excellent in all points and an useless person is useless in all points.

哲学ディベート-〈倫理〉を〈論理〉する(NHKブックス) [本(論理思考]

『哲学ディベート』
高橋昌一郎(論理学、哲学)
NHKブックス(2007)


これぞ本当の道徳の授業というべき良書。

倫理問題の問題を洗い出す議論するディベート。
勝ち負けでなく、
問題を洗い出し検討するディベートである。
さまざまな倫理問題が提示され、
それが多角的に議論されていく。

思うに、各章の最後に、
バランスシートを書いてまとめてくれると、もっとよかったと思う。

兵士の倫理の厳しさ。帝国陸軍マニュアル。
手榴弾が投げ込まれたら近くにいる兵士が覆い被さること。
そうすれば本人は死ぬが周囲の人たちは助かるのである。

カントの実践理性批判の簡潔なまとめ。
君がやったことを皆もやっていいと思うかい?

動物虐待な世界の珍味。
満漢全席の猿脳とは、
猿を生きたまま意識のある状態で頭蓋骨を開いて脳を食べること。
恐怖でおびえた猿を見ながら、
スプーンで脳みそをすくって食べるらしい。
怖すぎる。

フランスのフォアグラ。
チューブで胃に蒸しトウモロコシを詰め込んで、
ガチョウの肝臓を20倍に肥大させる。
これもほとんど拷問のような方法である。

宅間守の異常な生涯。
猫焼き殺し、暴行、強姦、近親相姦の末の殺人事件だった。
しかも死刑を希望していたので犯人の望みが叶ったのである。
これは明白に脳の異常だと思う。精神病院の体制に問題がある。

"目には目を"は復讐を勧めているのではない。
"目には目を"とはそれ以上の復讐は禁止ということ。
ハンムラビ法典では、
死刑にしろと訴えて被告が死刑に相当しなければ、
原告が死刑になるらしい。
それでは訴えられないような……

終身刑は死刑の代わりになるか。
終身刑は死刑よりも残虐だとする人もいる。
終身刑者から死刑の嘆願がフランスであったらしい。

死刑を肯定する論法。
人に襲われたときに殺した場合、
正当防衛で無罪になることがある。
国家が代わって正当防衛したと考えれば死刑が肯定可能だという。

日本の自殺の問題点。
日本では自殺幇助は犯罪だが自殺は犯罪ではない。
自殺未遂者に罰則をという考え方もあるようだ。

世界の国の10万人当たり世界の自殺率で気になった国を挙げる。
リトアニア 44.7
ロシア 38.7
日本 24.1
フィンランド 21.0
韓国 14.5
中国 13.9
カナダ 11.7
アメリカ 10.4

フィンランドは教育大国として注目されるが意外に自殺率が高い。
閉塞した側面もあるようだ。

またアメリカの自殺率は日本の半分以下だ。
ちなみに10万人あたりの殺人事件数は、
日本 1.2
アメリカ 5.5

さて私は思うに、自殺は自分を殺す殺人である。
また自殺者のほとんどは鬱病が原因であり、
社会に殺されるということもできる。

だから自殺も殺人であることに変わりはない。すると、
日本の殺人率は 24.1+1.2=25.3
アメリカの殺人率は 10.4+5.5=15.9

日本人はアメリカ人より約1.6倍も人を殺すということがわかる。

・今日の三言
君がやったことを皆もやっていいと思うかい?
Is it right that everyone behaves what you did?
니가 한 일을 모두가 해도 좋다고 생각하는가?
你认为大家可以做跟你一样的事情吗?

手榴弾が投げ込まれたら一番近くにいる兵士が覆い被さって皆を助けるべし。
When a hand grenade is thrown, the nearest available soldier must throw himself over the grenade to help everyone.
수류탄이 떨어지면 제일 가까이에 있는 병사는 수류탄 위에 몸을 던져 모두를 살려야 한다.
假如手榴弹被投到,最近的士兵应该用自己的身体掩盖手榴弹,救大家。

日本人はアメリカ人より約1.6倍も人を殺す。
Japanese kills people about 1.6 times more frequently than Americans.
일본 사람은 미국 사람보다 약1.6배도 사람을 죽인다.
日本人杀人的比率是美国人的1.6倍。

タグ:高橋昌一郎

議論のルールブック(新潮新書) [本(論理思考]

『議論のルールブック/岩田宗之/新潮新書/2007』
著者:フリーエンジニア
評価:ネットでの議論の方法を考える

もともとウェブページの文章をまとめたもの。

議論ができないのは、人の話を聞く能力が足りないから。
議論とは人の話を聞くことである。
また言葉は伝わらないのが当たり前と考えるべきという。

不存在の証明を悪魔の証明と呼ぶ。
何かがあることを証明するには、それを見つければよいだけだが、
ないことを証明するには、その範囲をすべて調べなければならず
ほとんど不可能なのだ。

この世には科学で説明できないこともあるという決まり文句。
これを言う人は科学を盲信している人だという。
この言葉の裏には、
ほとんどのことは科学で説明できるという前提が隠れているのだ。

インチキ理論の提唱者には"間違っている"と言わず"、
まだ足りないところがある"と言うべき。
そうすれば喧嘩にもならなくて便利なのだ。

議論の意義。
議論はそれぞれが違う発言をすることに意義がある。

議論の三分類。
討論:観客が意見を聞き結論を決める
議決:発言者が結論を決める
対話:発言者が意見を聞く
いまの議論がこのどれに該当するか考えることが大切だ。

一般論は普遍的な答えではない。
特別な条件がないときの考え。
だから特別な例外で反論しても意味はない。

主張には前提がある。
議論で対立することで隠れた前提が明らかになる。
そして新しい主張が生まれる。これをヘーゲルは止揚と呼んだ。

主観的な意見は一片の真実を含んでいる。
だから主観的な意見を否定するのもまた変なのだ。

"聞いたことに答えろ"は傲慢だ。
教えてもらう立場の言葉ではないという。
確かにネットには"教えて君"が多すぎる。

自由に責任が附帯するのは言葉の定義。
罪はもう二度としないと決めれば再発しないもの。
自由意志で選択したもののみが罪足りうる。

このあたり罪と責任について、
面白いので私ももう少し考えてみたいと思った。

『学者のウソ/掛谷英紀/ソフトバンク新書/2007』
著者:映像メディア工学、先端学際工学
評価:著者の文章読解力が悲惨・志は高いが力不足

嘘と間違いを区別しない上に、
部分と全体のすり替えや勝手な定義が多すぎる。

ゆとり教育批判。
ゆとり教育は個性は育ってこそ擁護できるが、
育っていないという。
これは同感。

緑のダム構造の問題点
洪水の危険はより高まったというが、
水害の発生件数は昔に比べて大幅に減っているという。
これは昔はいつを示すのかが問題。
著者は江戸時代にしているが、
元文は数十年前を想定しているのではないだろうか?

ダムの保水量は森林の20-30%。
森林7割の日本では森林は増やせないからだめという。
しかし、森林面積でなく森林の質の問題ではないのか?
林業の荒廃で森林が整備されていないことが問題だと思うのだが?
どんな森林でも保水力は同じだと思っているのだろうか。

年3000億の新エンゼルプランで、保育所の充実を計ったが、
出生率は回復せず。予測は間違いとする。
そもそも保育所は充実したのだろうか。そういう話は聞かないのだが。
著者は少子化対策について赤川氏の解析を出すが、
その赤川氏の統計解説自体もかなり恣意的と感じられるものだし。

出生率は失業率と相関するという。
これは同感で、本当の少子化対策は、景気対策である。

実存主義は自己決定原理の生みの親、
自分のあり方を自由に欲求できるとしたという。
そんな話は聞かない。強引な解釈ではないだろうか?

自分の利益に反対しないマスコミの例。
デジタル放送への公的資金の投入。
当然、マスコミは批判しない。
アガリスク宣伝を載せた新聞に自己批判なし。
自己破産件数は消費者金融CMの本数に連動する。
失業率や倒産数とは連動しない。
これもマスコミの責任である。
さらにメガバンクと消費者金融が、
手を組むことへの批判記事を書くと広告出稿ストップの圧力も。

マスコミはしばしば視聴率のためというが
その視聴率ですら、自分の利益よりは大事ではない。
最高税率引き下げを行ったとき、
これは金持ち優遇として視聴者受けするのに
批判をほとんどしなかったのだ。
フジや朝日の平均年収1500万以上で総合職はさらに高い。
自分の利益には反対しないのがマスコミであるという。
こうしたマスコミ批判は大胆であり面白いと思う。

ジェンダー・フリーとは、
女らしさはすべて社会から押しつけられたものだという。
これは勝手な定義だろう。
社会から押しつけられた女らしさを解放すべきというのが、
ジェンダー・フリーのはずである。

世襲型の会社は長期的視点で会社を運営するという利点があるという。
これは会社への愛着やアイデンティティーの問題であり、
世襲である必要はないと思われる。

痴漢対策としての女性専用車両は、
痴漢可能性の高い時間帯に絞っていないし、
年齢制限がないのがおかしいという。
非現実的過ぎて馬鹿馬鹿しい。実行できないのはすぐわかるではないか。
政治や政策はその結果で判断すべきものである。
だから、実際の痴漢件数で判定すべきである。

著者は論者の右傾化論に、若者の不安はいつでもあったから変だという。
しかし、若年失業率が高くなったのは近年特有の現象である。
またインターネットの右傾化に説明なしという。
これは匿名とアイデンティティーの問題でありはっきりしている。
左翼メディアも元気だというが、
右翼メディアとの比率で見れば低下はあきらか。

倫理学の可逆テスト
行為主と行為対象を入れ替えてそれぞれの立場に立ってみること。
その例として奇怪な論理の意見を述べている。
国旗掲揚反対派は
北朝鮮や中国の国旗掲揚強制を問題視していないので、
テストをクリアしているという。
どう読んでも全く逆。
北朝鮮や中国の国旗掲揚強制を問題視しなければ駄目だろう。

洗脳と納得の違いは後で正しかったと思わせるものという。
後で正しかったが、何度も反転することがあり判断にならない。
あるとき正しいとされたことが間違いとわかったのが、
さらに正しいと判明することもある。
"後で正しい"などは判定基準にはならない。

夫婦ともフルタイムで働けるのは経済的強者だという。
少し変だ。一番苦しいのは、その中間の存在である。
主婦のいる家庭は経済的に豊かな家庭が多い。
一番苦しいのは派遣やパートの共働きである。

現行の男女共同参画社会は格差を拡大するという。
ならば男女共同参画社会が悪いのではなく、
その手法の問題であるのに、理念ごと批判するのはおかしいだろう。

山田昌弘批判
企業は博士号取得者を取りたがらないというが、
そういう印象はないという。
はっきりいって個人体験では意味がない。
著者は理系であり、文系とは全く状況が違う。

山田昌弘氏がフリーター博士は20年後10万人を超えるというが、
有り得ないとし、間違っていたら預託金没収宣言している。
しかし、文脈からみても山田氏の発言は警告であるし、
同じ条件の予測でなく不公平だろう。
著者は条件を分けて1.05万と3.45万の二つの数値を挙げている。
不公平と言わざるを得ない。

どうやら、批判対象の文章をまともに読んでいないか、
あるいは、背景となる文脈や周辺資料に当たっていないか、
著者の読解能力に欠陥があるか、このいずれかであると思われる。

・今日の一言
議論とは人の話を聞くことである。
Argument is listening to other people.
논의는 남의 이야기를 듣는 것이다.
所谓议论是听别人的话。

タグ:岩田宗之

人はなぜ簡単に騙されるのか(新潮新書) [本(論理思考]

『人はなぜ簡単に騙されるのか』
ゆうきとも(クロースアップ・マジックの専門家)
新潮新書(2006)


マジックに強くなって詐欺に騙されないようになろう。

マルチプル・アウト
答えを分けて全部用意しておく方法。
相手の行動を予言する手品でよく使われる。
どこに答えがあるかは言わないのがミソ。

探し物がどうしても見つからないのに後で目立つところで発見する。
ミスディレクションの例。
これって、セレンディピティにも似ている。
周囲を調べ尽くした後の最後の一ピースがセレンディピティなのだ。

自分は詐欺にかからない、自分の目で見ないと信じないからという人。
それは、自分の目で見たら信じるということだから、
詐欺師にとって最高のカモなのだ。

マジシャンを超能力者と思わせる心理学実験。
最初にトリックと強調しても58%は本物と信じてしまった。
人は見たものを信じてしまうのだ。

マリック氏を本当に超能力者と思った人たちがたくさんいた。
病気を治してというお願いや、
大金を持って教祖になってと持ちかける人もいたらしい。
下の方は信じたというよりビジネスチャンスと見た感じだ。

著者が激しく憤りを表明するもの。
超能力者を使った行方不明者探し。
藁をもつかむ気持ちの人たちの心をもてあそぶ卑劣な番組という。
全く同感。あんなものをゴールデンタイムに流す奴らは、
犯罪者というべきだ。
私は以前からオカルト関連番組は深夜限定にすべきと考えている。
ゴールデンタイムに放送することは、
その内容を放送局が保証しているのと同じ効果を持つからだ。

人は一度思いこんでしまうと、
なかなか元の状態にリセットできないもの。
だからこそ、人々に第一次情報を与える教育と放送は重要なのだ。

説得力のない嘘でもひたすら言い続けると説得力が生まれるもの。
人はそんな馬鹿なことができる人がいると信じられないのだ。
ところがそういう全く想像力のない人が存在するのだ。

これは人間は嫌なことを考えることを回避するからである。
精神ストレスに対する耐性がなく、
嫌なことを考えない人間は、平気で嘘をつき続ける。
彼らは本当のことを言う苦痛に耐えられないのだ。
葛藤に直面して現実を直視することができない人間の特徴である。

怪しげな情報に踊らされるのは想像力の欠如という。
とはいえ、どう想像するのかという問題がある。
私は、エネルギー保存の法則を考えるのがよいと思う。
エネルギー保存の法則は、無から有は生じないということ。
得する話があれば、誰かが損するのだ。
利益の裏には必ず危険が隠れている。
物事にはすべて両面があるもの。
表を見たら必ず裏を想像する習慣が欲しい。

『わかりあう対話10のルール』
福澤一吉(言語病理学、認知神経心理学)
ちくま新書(2007)


日常会話の論理分析例と問題集。

こんなこと日常会話でできません。(笑)
もっとルールを簡単にしないと……

・今日の一言
自分の目で見たものしか信じない。(カモ)
I only believe what I see.(easy prey)
자신의 눈으로 본 것만 믿는다. (봉)
我只相信我看到的。(冤大头)

データはウソをつく-科学的な社会調査の方法(ちくまプリマー新書) [本(論理思考]

『データはウソをつく』
谷岡一郎(犯罪学)
ちくまプリマー新書(2007)


社会調査研究の入門書。テキストっぽい。

N線事件。
フランスで発見された新しい放射線N線。
300もの論文が書かれたが結局は実在しなかった。
思い込みとは恐ろしいものである。

ヒトラーの宣伝相ゲッペルズの言葉
ウソも百回繰り返すと本当になる。
疑い続けるというのは難しいことなのだ。

GIGO="Garbage In, Garbage Out"
ゴミを入力すれば、出てくるものはしょせんゴミ。
2ちゃんねるのことだな。

選択肢の基本思想
・必要最小限
・わかりやすい
・相互排他的
・全体をカバーする
これは調査するときの資料の集め方にも共通する感じだ。
MECE(Mutually Exclusive collectively Exhaustive)だね。

セレンディピティ
・ゴミの中から本物を嗅ぎ分ける能力
・掘り出し物を見つける能力
発見能力だけど、ずっとこの能力が気になっている。

世論調査で"やむを得ない"を肯定にカウントした読売新聞。
著者がこれを中央公論で批判すると、
親会社なのでと、書き直しを求められる。
それを拒絶してそのまま載せると、連載はその回で終了してしまった。
中央公論も読売新聞の圧力に屈したのであります。

『データの罠』
田村秀(自治省)
集英社新書(2006)


統計トリックを知る。

有効回答率が低い調査は信用できない。
回答しないという人に一定の傾向があるからだ。

ビデオリサーチとニールセンで水戸黄門の視聴率が6%違ったことも。
視聴率ってあてにならない。

経済効果はプラスだけを楽天的に推測し、
関係するものをすべて合計したもの。
いつも思うが本当に馬鹿馬鹿しい。

統計の騙しの例。
2004年の勤労者世帯の貯蓄額の平均は1273万
しかし中位数は805万で、モードでは200万未満になる。

TOEFL受験者数は、日本でなく韓国が一位。
韓国人って海外に逃げたがっているよな。

人口千人当たり公務員数
日本35.1人、英国73.0人、フランス96.3人、米国80.6人、ドイツ58.4人
日本が一番少ない。

さらに公的部門雇用者の比率に拡大しても、
日本9.2%、英国31.4%、フランス32.6%
米国18.3%、ドイツ25.8%、イタリア24.4%、スウェーデン38.2%
で、日本政府はめちゃめちゃ小さいことがわかる。

・今日の一言(ゲッペルズ)
嘘も百回繰り返すと本当になる。
If you tell a lie one hundred times, it begins to look like truth.
거짓말도 100번하면 진실이된다.
谎言重复一百次,就会成为真理。

納得の構造 [本(論理思考]

『納得の構造』
渡辺雅子(教育社会学)
東洋館出版社(2004)


日米小学校の文章比較・叙述の順番から文化の特徴を解明する。

『納得の構造』 (小田中直樹[本業以外]ネタ帳)で、
面白そうなので読んだ。

日本で成績に問題のなかった生徒がアメリカでは学習障害に疑われた。
その謎が、文章の書き方の違いにあった!

アメリカ児童の作文は因果律による。総括が不可欠だ。
まず総括を書いてなぜそうなったのか説明するのである。
アメリカ人は一連の出来事を並べるだけでは不十分な説明と感じる。
またエッセイを発表するとその後に批評会があるという。

私の知る限り、これは中国でも同じようだ。
中国語の作文練習で何かを描写したことを書くと、
中国人に"それで何が言いたいの"と聞かれることがあった。
また、日本の文学作品について聞くと、
"何が言いたいのかわからない"ということがあった。
全体として総括され何か主張がないと不自然に感じるようだ。
また、中国でも学級で作文の批評会があり、
その思想性を問題にするそうだ。
韓国ではどうだろうか? 今度、聞いてみよう。

英文法のbe going toは15世紀に発明された。
文法の変化は生活や経験の変化を表しているという。
言語の変化は文化や社会の変化の後に来るのだ。
すなわち、言語を社会の変化の理由と考えるのは間違いなのだ。
例えば、印欧語の冠詞が科学を生んだという人がいるが、
言語学者池上嘉彦は、冠詞の有無は、
対象が具体的個体か抽象的なものかではなく
話し手の主体的な対象をどう捉えるかという問題と述べている。
冠詞の出現も文化に要求されて生まれたのである。

日米の歴史教科書を比較する。
アメリカは日本の15倍の質問がある。1頁あたりでも5倍である。
教師が定めた結果の原因を過去に遡って見つける訓練をするのが特徴だ。
日本では、時系列に従って理解するのに対し、
アメリカでは、因果関係を考えて、過去に遡るのである。

この因果関係を遡る考えの究極の姿が、
進化論であったり宇宙のビッグバンなどであろう。
もうすぐ『神は妄想である』の日本語訳が出る進化生物者、
リチャード・ドーキンスの
『祖先の物語(上)-ドーキンスの生命史/リチャード・ドーキンス/小学館/2006』
『祖先の物語(下)-ドーキンスの生命史/リチャード・ドーキンス/小学館/2006』
は、何と現在から過去へと遡るように描かれているのだ。
これぞまさに因果思考の究極の姿であろう。

とはいえ、因果関係とは何なのかは難しい。
哲学者ヒュームは、
時間的に連続した二つの出来事が反復したときに因果を認めるとした。
after this, therefore because of this
(その後に起こったから原因はそれだ。)
は、論理的に誤った推論だが、それが繰り返されると因果と思うのだ。

アメリカのエッセイの基本パターンは、五段落エッセイ。
まず主張して、次ぎに3つの証拠を挙げ、結論を述べる。
また、アメリカの歴史授業では、
決断、目的、時間、分析などがキーワードになるようだ。

西洋を一つの文化にまとめるのは演説だという。
主張、証拠、結論というエッセイのパターンは、
演説文の原稿ではないだろうか?

なぜアメリカでは演説が重視されるのか?
おそらくはその国内の民族の多様性から、求心力が必要だからだろう。
今、中国がそれと似た国語教育をしているのも、
同じく多民族国家として求心力を求めているからではないか。

丸山真男の述べる日本人の歴史意識
歴史は作られたり生まれたりするものでなく自然に成り行くもの。
これは言語学者池上嘉彦の、
「なる」型言語の日本語と「する」型言語の英語という考えに似ている。
日本人の文化意識がこのような言語を求めるのだろう。

英語では話し手の今ここが基準である。
対して、日本語ではある行動の完了の前後の順序が基準となる。
日本では過去の出来事を現在完了の出来事として認識する。
事象の完了の相に注目している。
対象を叙述する基準点が、英語では話者なのに対し、
日本語では、対象そのものなのである。

アメリカでは分析力が重視され、自身の決断が求められるのに対し、
日本では共感力が重視される。
日本の良い作文は、生き生きとした気持ちの表現があるもの。
先生は子どもの作文の批判をしない。
作文を批判すると子どもは本音を書かなくなるという。
作文で重要なことは心の目を養うことという。
そして日本の評価対象は内面的な発達と態度という。

事象を分析するには、
(a).その出来事を描写して客観と主観を入れ替える
(b).過去の出来事から一貫性を読みとる
(c).類似する例を比較して共通性を読みとる
(d).内部の構造から必然的なシステムを取り出す
(e).未来を推定しその分析の持つ力を確認する

という5つの方法がある。
日本の教育では、(a)と(b)が重視され、
アメリカの教育では、(d)と(e)が重視されているということだ。

・今日の一言
その後に起こったから原因はそれだ。
After this, therefore because of this.
까마귀 날자 배 떨어진다.(カラスが飛んだら梨が落ちる)
在它之后,所以是因它而发生。

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つっこみ力(ちくま新書) [本(論理思考]

『つっこみ力/パオロ・マッツァリーノ/ちくま新書/2007』
著者:千葉在住の自称イタリア人の社会学者
評価:メディア批判のつっこみ力を考える・あまり成功していない

メディアリテラシーの代わりにつっこみ力を。
実社会では公平な立場の議論なし。
そうしたとき、ツッコミが役に立つ。
昔から権力者には、諷刺で対抗するもの。
別に特別なアイディアでもないんだけども。

アメリカの笑いにつっこみなし。
そうなのか。日本以外にツッコミがいるのってどこの国だろう。
中国にも韓国にも漫才はあるけど、
あれもボケとツッコミの組み合わせなんでしょうか。
中国の漫才(相声)など、笑いの外国語は一番難しくて、
よくわからないんですよね。
ボケ潰しタイプが多いと思うけども。

笑いの仕組みを解き明かすのは永久に不可能という。
もう解けているんですけどね。まあそのうちに気づくでしょう。

ラッセルの言葉
どういう選択をするのかを論じるのが経済学
選択の余地がなぜないかを論じるのが社会学
わかりやすいかも。
相補的な関係にあるよね。

血液型占いやゲーム脳などを考えた人は天然ボケの持ち主だ。
まあ、ボケてなきゃ、こんな馬鹿なこと思いつかないってこと。

日本の格差問題
収入格差を問題視して資産格差を問題視しないのは欠陥。
これは確かに思う。
資産を基準にした研究がほとんどないのはなぜだろう。

"地価が下がると経済に悪影響"は金持ちのたわごとという。
これも全く正しい。
テレビに出るエコノミストは金持ちのために行動する存在。
だって投資家の相談が仕事に多いからね。
奴らにとって金を出さない貧乏人は人間には入らないのよ。

この本の後半は、つっこみ力とは関係なく、自説の主張。
すなわち、自殺率は失業率と連動しているわけではなく、
住宅ローンの方式に原因があるとのこと。

自殺率と失業率の相関のグラフは、
日本とフランスは明確だがアメリカとオーストラリアには相関がない。
実際には、失業して借金が返せなくなって自殺するという。

まあそれでも普通は失業と自殺が相関するっていうんだけど。
因果関係という言葉の意味をわかってないね。著者は。
原因というのは一つではないし、
原因は連鎖するから、原因の原因もある。

それでも、平成10年はゆとりローンの犠牲者による自殺増であり、
住宅ローンの方式を変えること、
家そのものだけしか担保にできないことにすることが必要との提言は
興味深く思う。

『逆説思考/森下伸也/光文社新書/2006』
著者:社会学、ユーモア理論
評価:分類して解説・楽しく読める本

以下の3つの分類
転倒思考:戦争は善である
逆因果思考:急がば回れ
因果反転思考:泣くから悲しい

アインシュタインは頭頂葉に傷害があったなど、
正高氏の妄想を真に受けすぎなのが気になる。

実際の逆説。
借家人の権利を保護したため家賃が高騰していること。
借りた人を追い出しにくいため、
物件があっても貸す人が少なく家賃が高くなってしまうのである。

・今日の一言
アメリカの笑いにつっこみなし。
American stand-up comedians have not "Tsukkomi".
미국 개그맨은 "쯧코미"는 없다.
在美国谐星里没有逗哏儿。

※追記
中国の相声にはボケとツッコミがあるらしい。
韓国にはないらしい。
日本と中国にあるのに、韓国にないとは不思議だ。

論より詭弁-反論理的思考のすすめ(光文社新書) [本(論理思考]

『論より詭弁/香西秀信/光文社新書/2007』
著者:修辞学、国語科教育学、"生涯一ソフィスト"
評価:論理思考とディベートの問題点を指摘する・面白い!

議論が対等な人間関係で起こることはない。
ディベートで設定される議論は、ディベート大会だけである。

言葉で表現するとない順序を作ることになる。
表現したい三次元あるいは四次元の内容も、言葉で表現すると、
時間的な一次元の表現になってしまうのだ。
必然的にできる順序により、事実そのままは表現できなくなる。
言葉の意味は生み出す運動感覚なので、
一番最後の言葉が力を持つため、最後の言葉が強調されるのである。

事実を選択することで意見としての性格を持つ。
議員の海外視察か見物かで既に意見になる。

否定表現は意見である。
"ない"は虚偽ではないが事実と言えない。
事実そのままに言うなら、何も言わないのが事実なのだ。
"机の上に本がない"といえば、ないことの裏に主張があるのである。

根拠は多ければよいとは限らない。
一人の人間の思想からは出ない根拠を並べると心理的に不自然になる。
ボランティアを相手に勧めるとする。
ボランティアは現代人の義務だ、また進学就職に有利だよ、
というと、論理的には根拠を増すが、
義務と利益を主張するという、
という一人の人間の思想として不自然なものになり、
相手の信頼を失うのである。

煙草が体に悪いから止めろと主張するヘビースモーカーがいれば、
まずお前が止めろと言いたくなるが、論理的には関係がない。
しかし、これは話のすりかえでなく、
より重要なことへ議論を移行させたというべきとする。

レトリックの本で有名な言葉、
君はもう奥さんを殴ってはいないのか?
では、YesでもNoでも、殴ったことがあることになってしまう。

retortで立証責任を返すべきである。
「殴ったことなど一度もねえや」と言い返すのだ。
相手に、殴ったことを立証する責任を返すのである。

これらは、立証責任を本来負うべき側に与える適切な方法である。

人を見て議論するのは悪いとは限らない。
同じ言葉でも誰が語るかで意味が違うのである。
言葉にはすべて文脈というものがあるのだ。

私が思うに、本を読むときも、その著者の専攻や、
その著者の知識の頂点を捉えるべきだし、
何かを学ぶときも、
そのテーマを知識の頂点とする著者の本を調べるべきである。

著者が高齢ならば、その専攻が知識の頂点である。
著者が若ければ、今まで出した本のリストを確認し、
最もたくさん書いたテーマが知識の頂点である。

和田秀樹なら受験勉強研究であって精神医学ではない。
野口悠紀雄なら成人教育であって経済学ではない。
西尾幹二ならドイツ文学であって外交問題ではない。

いろいろなテーマの本を書く著者の本は、
それぞれのテーマの専門家と対照して読まない限り、
百害有って一利無しである。

香西秀信は、真に議論の専門家であり、
面白いものが多いのでお勧めである。
・香西秀信の本 を読むと、
実在の議論の仕組みを理解して、主張を仕方を学ぶことができる。

この本で挙げられた事実と価値が区別できないことは、
アフォーダンスの議論に結びつくものである。
・河野哲也の本 を読むと、
言葉を意味を知り、我々の認識世界の構造を学ぶことができる。

また論理的に正しくない循環する議論の例もあるが、
これは、科学哲学と関係する。
議論の循環には悪いものと良いものがあり、
科学思考は良い循環構造を持つのである。
・戸田山和久の本 を読むと、
科学的な真理を探究する思考法を学ぶことができる。

・今日の一言
否定表現は意見である。
Negative expression is opinion.
부정 표현은 의견이다.
否定表现是意见。

プロ弁護士の思考術(PHP新書) [本(論理思考]

『プロ弁護士の思考術/矢部正秋/PHP新書/2007』
著者:弁護士、企業監査
評価:7つの思考法を解説する

7つの思考法とは?
・具体的に考える
・選択肢を発想する
・実質を直視する
・相手に共感する
・予想外に備える
・主体的に考える
・遠くを見る

弁護士は個別を扱うもの。だから抽象的に考えず具体的に考えるべし。
なるほど、科学者とは論理の用途が違うわけだ。

反対意見を聞くのは他人のデータベースにアクセスすることと考える。
違う意見こそ自らの知識を増やす良い意見である。

著名人の名言
・アラン
憂鬱な人は遠くを見なさい、
・スピノザ
人生を永遠の目を通して眺めよ
sub specie aeternitatis
・イェーリング
権利のために闘うことは自分自身のための義務である

権利のために闘う、すなわち、怒ること。
怒りとはテリトリー防衛反応のことである。
良く怒るというのが難しい。

・今日の一言
良く怒るのは難しい
It's difficult to get angry appropriately.
적절히 화내는 것은 어렵다.
适当地发怒很难。

タグ:矢部正秋

ダメな議論(ちくま新書) [本(論理思考]

『ダメな議論/飯田泰之/ちくま新書/2006』
著者:経済政策
評価:現代日本にはびこる妄説を斬る・良書

私たちは自分が日頃から抱いている信仰に、
お墨付きを与える本を選んでいるに過ぎない。
自分が読んで心地よいものを読む。
自分を安心させる言説を支持するのだ。

教育の外部性
学校教育は個人には投資金額ほどのリターンはない。
大学へ行ってもその教育に見合うだけの給与は得られないのだ。
ただし国民全体の利益になる。

日本のタバコへの税金価格60%は世界的に見て低い。
価格もイギリスの1/3以下、ドイツの1/2。
日本のタバコは安いのである。

日本の高度成長は政府官僚の力だったか。
通産省は企業行動を変化させる政策手段を持っておらず、
拘束力のある規制を行ったこともない。
すなわち、民間の力で成長したのだ。

人はしばしば相手へ反論し、自分が正しいと主張する。
しかし、Aは誤りという命題がBは正しいという結論を導くのは、
AとBに排中律が成り立つ場合のみ。
相手の否定が自己の正当性を支持するのはまれなケースである。

『統計数字を疑う/門倉貴史/光文社新書/2006』
著者:エコノミスト
評価:統計の作られ方と正しい読み方・意外に難易度高い

2005年交通事故車数は、警察庁発表で6871人。
厚生労働省発表では9970人。
警察庁は事故24時間以内で、厚生労働省は事故一年以内のため。
警察庁統計での死亡数の減少は、事故の減少でなく、
緊急医療技術の向上を意味している。

女性の晩婚化と男性の非婚化におけるトリック。
結婚しない人は結婚年齢の統計に入らない。
結婚しないという、結婚年齢∞では計算から排除されてしまうので、
結婚年齢は実感より低くなるわけ。

サービス残業ゼロにしたときの雇用創出効果
150.2万人分であり、失業率が2.2%低下し、
個人消費は4.8%拡大するが、設備投資は2.3%減少する。
合計では、実質GDPが2.3%押し上げる効果がある。

失業が問題であるのにサービス残業を放置するのは論外と思われる。

野球チームの優勝による経済効果の試算は無意味だ。
代替効果の無視。
そのことにお金を使えば、その分だけ他のことにお金を使わなくなる。
○○の経済効果というものは、ほとんど意味がないものばかりである。

『バカとは何か/和田秀樹/幻冬舎新書/2006』
著者:精神科医、勉強法研究家
評価:バカについての羅列・常識を確認するのみ

勉強できないのではなくやり方を変えられないのがバカ。
バカの一つ覚えっていうように、
頑固で融通が利かないのをバカというわけ。

自分の都合の悪い推論ができない人たち。
わざとではなくよかれと思っているらしい。
日本の経済について議論する人たちもそうだろう。
合成の誤謬とか理解できない人たちが、この国を動かしているのだ。

結局、バカかリコウかは結果で判断される。
これって最後までわからんということでもあるけど。

『弁証法はどういう科学か/三浦つとむ/講談社現代新書/1968』
著者:社会科学
評価:相互因果の事象発展の論理学の枠組みを語る

アマゾンの書評などを読むと
三浦つとむ氏はずいぶんと誤解されているように思う。
"信仰的な解説ばかりでちゃんとしたこの著者の研究書がない"とは、
全くその通りだと思う。

この本の内容は今の科学哲学の理解からは科学とは言えない。
科学には反証可能性が必要だが、それが欠けているのである。
この本では何かを予測することはできないからだ。
予測がなければ検証ができず、反証可能性がない。
予測するために必要なものは何か?
それは数学である。
数学化されていないことが、予測能力を生まなかった原因である。

これは数学化がもともと不可能な内容ということではない。
複雑系の研究などは、この本の内容と重複するものである。
あるいは、ルネ・トムのカタストロフィー理論などが
それに相当するかもしれない。

この本でいう弁証法とは何か? この本は何を語っているのか?

社会などの相互因果の事象がどのような構造を持ち、
どのように発展するかその論理構造を述べた本なのである。

この本では質は述べられるが量は述べられていない。
だから、具体的状況にあてはめて答えを出すには使えないが、
問題にあてはめて、間違っていないか確認することができる。
この本では間違った思考の例がたくさん挙げられるのもそのためである。

全世界をつながりにおいてとらえる。
世界はできあがった事物の複合体ではなく過程の複合体である。

弁証法のキーワードである。
対立物の相互浸透、否定の否定の法則、矛盾の止揚などが解説される。

複数の主体がかかわる社会の事象などは相互因果の関係にある。
相手が自分の行動の原因であり、
相手もまた自分の行動を原因として動いている。

例えば、メディアの暴力表現と、暴力事件の数である。
暴力事件が起こることでメディアの暴力表現が流行るし、
メディアの暴力表現を増えることで暴力事件が誘発されやすくもなる。
どちらかがどちらかの原因というわけではなく、
お互いがお互いの原因なのである。

こうしたシステムでは、
ポジティヴ・フィードバックを起こすか、
ネガティヴ・フィードバックを起こすかである。

ポジティヴ・フィードバックの場合は、そのまま崩壊が起こるか、
あるいは第三の勢力の力により均衡するかである。

発展の論理構造:対立⇒相互浸透⇒相互移行⇒否定の否定
これは心理学の悲嘆の段階にも似ている。
主体同士が相互作用する場合、みな似たような変化を見せるのである。

『後悔しない意思決定/繁桝算男/岩波科学ライブラリー/2007』
著者:心理測定、多変量解析、ベイズ統計学
評価:主観的期待効用モデルによる意思決定の方法を知る

心理学者マズローは決定は二者択一という。
自己実現に近づくが苦労が多い方向と、
自己実現に遠いが楽な方向である。
これは多く前者がいいように思えるな。

ベイズの定理は、結果から原因を探る道具、逆確率の定理という。
ベイズの定理は面白いけど、難しいし、直観に反するんだよな。

判断の間違いのパターン。
代表性ヒューリスティックスとは、
典型例に類似するものを高い確率と考えること。
条件が多いがイメージにぴったりなものが、
条件が少ないものより確率が高く思える錯覚である。

利用可能性ヒューリスティックスとは、
思い出しやすいものを頻度が高いと思うこと。
テレビで殺人事件の報道が多いので日本は犯罪が多いと思うとかも、
これに近いかな。

アンカーリングヒューリスティックスとは、
最初の評価に引きずられること。
人間は最初の思い込みが消えないものなのだ。

・今日の一言
人は自分の考えを支持する本を良い本と思う。
You regard the book which supports your idea as a good book.
사람은 자신의 생각을 지지하는 책을 좋은 책이라고 여긴다.
人们把支持自己的意见的书看做好书。

だまされない〈議論力〉(講談社現代新書) [本(論理思考]

『だまされない〈議論力〉』
吉岡友治(比較文学、演劇理論)
講談社現代新書(2006)


志高い野心作。ただし著者の論理力には問題が多い。

正解がないのが議論の始まり。
正解が見えない問題こそ議論する価値があるわけだ。
この本で扱われる問題も多く倫理問題である。

ナチスの暴走は民主主義に従い立憲主義を無視した結果という。
立憲主義は、時空を越えた民主主義といえよう。
民主主義はその場にいる人の協議だが、
立憲主義はそこに過去の人を巻き込むことができるのだ。

判断したものが、
判断される対象から反論されない構造の場合に注意が必要という。
まさしく。俗流若者論が流行るのも、
テレビ新聞の情報ループに若者が含まれないことが原因である。

今や、5権分立の時代が来るのかもしれない。
立法、司法、行政、マスコミ、インターネットである。
『産廃ビジネスの経営学』
石渡正佳(産廃Gメン)
ちくま新書(2005)

で、挙げられた5つの異議申し立て窓口である。

主観的な選択と考えられるものこそ、
統計調査して関係を見いだす価値がある。
人それぞれは他を尊重するようでコミュニケーションの拒絶になる。
これらは真に思考を深めるために大切なことだ。

中国は地域共同体が強いというが、これは事実ではないです。

高校生の規範意識のグラフの読み方。
ほとんどの項目に対して高いは事実誤認という。
どう見ても事実誤認ではないです。
その後の論証がまずいのであって、問題はそこではない。
どうも結論に導くための強引な論証と感じられる。

移植くじ問題
臓器の悪い人のためにくじ引きでドナーを決める。
一人のドナーが死ぬことで二人助かるなら、
この移植くじは実行するべきなのか?
ほとんどの人が反対と感じることだが、
全体の幸福度を考えれば実行することになってしまう。
このパラドックスはなぜ生まれるのか?

特別な自分を他者と同じと見なし、
全体の幸福計算に組み入れることを求めるができっこない、
だから間違っている、が著者の解答。
しかし、こんなの全然説得力ないでしょう?
"できっこない"が論証か?

いつ死ぬかわからないのがよくないというなら、
交通事故もそうだという。
しかし交通事故はなくすべきと考えられているのであって、
肯定されているのではない。

これは自由の問題を考えるべきだと思う。
交通事故は自分で避けることができない……だろうか?
違うだろう。ある程度の回避性がある。
外に出掛けない、車に乗らない、
車は安全運転する、など確率を変化させることができる。
交通事故の被害にもある程度の自由があるのだ。

ところが、移植くじには完全に自由がない。
この自由を奪うということが許されないと感じられるのだ。

人を殺したら罪なのに牛を殺して罪にならないのはなぜか?
これは共感性の問題である。
相手の生命に精神性が感じられ、
その精神に共感し同調できるものは殺すべきではないと感じるのだ。
従って牛やイルカに共感を想定する人間は、殺すことを嫌悪し、
罪であるとして欲しいと感じるのである。
かつて奴隷が殺してもよいと考えられたのは、
奴隷の精神は共感の対象ではなかったからだ。
あるいは、人種差別を行う人がいたり、
戦争において民族が異なり言葉通じないほど虐殺が起こるのも、
その共感の困難性の問題である。
言語で意志疎通できることほど共感を高めるものはないのだ。

この手の議論や論理をテーマにした本には変なものが多い。
議論がテーマなのに著者一人で考えたものだからではないだろうか?
こうした議論や論理の本は、
複数の著者による共著にしてこそ優れた本ができるのではないだろうか?

『論証のレトリック』
浅野楢英(論理学、弁証法、レトリック)
講談社現代新書(1996)


アリストテレスのレートリケーの理論を整理解説。

弁論の3種
・審議弁論
勧奨と制止するもので、将来のための利益と損害を民会議員に述べる。
・法廷弁論
告訴と弁明をするもので、過去についての正と不正を裁判委員に述べる。
・演示弁論
賞賛と非難をするもので、現在についての徳と悪徳を観衆に述べる。

それぞれ使用される論法が違ってくるというわけ。

『論理表現のレッスン』
福澤一吉(認知神経心理学)
生活人新書(2005)


非常に初歩的な話が難しくわかる。

土井たか子の言葉
"ダメなものはダメ・説明してもわからないヤツは話にならない。"
これって本当かな。文脈がわからないが、
これでは事実上、議会制民主主義を否定しているよなあ。

・今日の一言
論理をテーマにする本は共著にすべきである。
When you write a book dealing with logical thinking, you should make it as joint authorship.
논리를 테마로 하는 책은 공저로 해야 한다.
写逻辑思考的书,应该做共同著作。

愚鈍な文化相対主義 [本(論理思考]


『ウンコな議論/ハリー・G.フランクファート/筑摩書房/2006』
著者:道徳哲学者
評価:ウンコ議論=おためごかしについて・非常に薄い本

愚鈍な文化相対主義。
すべての文化的知見が同じぐらい正しいとし、
魔術や迷信を正統化してしまう。

不確定性原理をたてに、
あらゆる現象は観察者次第で客観的事実はなく
それを前提にした西洋科学は間違っているとする。
あるいは、不完全性定理をもとに西洋科学だって不完全だとする。
その正しい意味を理解せず、断片的な言葉を利用して、
その考えを当てはめるべきではない対象に当てはめる。
こういう手合いは科学嫌いに多い。困ったものだ。

あるいは、東洋と西洋を対立させ、
西洋=科学とし東洋的な思想と対比したりする人もいる。
これも完全に間違い。
東洋思想と対比してよいのはキリスト教思想とか、
ギリシャ思想とかインド思想とかである。
科学は思想ではない。
例えば、東洋医学は西洋医学と対比するものではない。
東洋医学と対比するべきなのはアーユルヴェーダや、
アラビア医学や各国の伝統医学である。

なぜ東洋で科学が生まれなかったのか?
それは科学が西洋的なものだからではなく、
ただ単に先に西洋で生まれたからである。
科学は普遍的で力が強いため、
一度生まれれば他のところで生まれるより速く伝播していくのである。
東洋より情報の蓄積度が高かった西洋が先に到達しただけである。

情報量=知識量の多さが
その知識そのものの構造を変えたのが科学革命である。
知識量の増大が知識の質の変化を生み出す、
質量転化の法則であり、相転移というべきものである。

科学知識の特徴は、知識を生み出す知識であることだ。
自ら自己増殖する構造を持つため、爆発的に広まったのである。
科学は知識そのものの普遍的な構造である。
科学とは知識の内容でなく、その構造のことなのだ。
地域を問わず普遍的なものである。

科学はたまたま西洋で生まれたに過ぎず、
西洋的特性とかいうものではなく、より普遍的なものなのだ。

『使える弁証法/田坂広志/東洋経済新報社/2005』
著者:経営コンサルタント
評価:ヘーゲルでIT社会の未来を読む・意外に良い本

これはあくまでの経営コンサルタントの本。
ヘーゲルの勉強のために読む本でない。
それがわかっていればかなり良い本だ。

物事は螺旋的に発展する。
螺旋は上から見ると元に戻るように見えるが一段高くなっている。
物事はこのように少しずつ上に登るが、
それが見た目には同じことが繰り返されるように見えるのである。
そのため、懐かしいものがさらに便利になって戻ってくるという。
これを本では例を挙げて説明していく。

弁証法はさまざまな事象の変化の法則を述べている。
弁証法自体は、直接答えを導く力はないが、
思考や変化の枠組みを決め、間違いを消去する力がある。

亀井勝一郎の言葉:割り切りとは魂の弱さである。
ものを割り切って行動するのは楽である。
割り切るとは、それと対面するのを捨て次の行動に移ること。
苦悩せず安易な行動するということで、
悪く言えば逃げているということだからだ。

『行動経済学入門/多田洋介/日本経済新聞社/2003』
著者:経済学者
評価:まとまり悪い・これからの学問という感じ

認知科学の実験の紹介。
利用可能性の近道バイアス。
英単語のrで始まる語と3番目がrの語はどちらが多いかを問う。
ほとんどの人はrで始まる語が多いと答える。
しかし、正解は3番目がrの単語。
rで始まる単語の方が思い浮かべやすいための錯覚である。

言葉の言い方で変わる印象。
ある国で伝染病が流行り対策が必要となった。
このまま放置すると600人死亡する。

対策Aでは200人助かり、
対策Bでは1/3の確率で全員助かり、2/3の確率で全員死亡する。

すると、2/3の人が対策Aを選んだ。
次に、これを言葉を言い換えて質問した。

対策Aでは400死亡するが、
対策Bでは2/3の確率で生存者0となり、1/3の確率で死者0になる。

すると、2/3の人が対策Bを選んだという。
内容は同じなのにである。

『社会病理学概論/星野周弘/学文社/1999』
著者:社会学者
評価:教科書・多様な考えがまとめられている


科学的」って何だ!(ちくまプリマー新書) [本(論理思考]

『「科学的」って何だ!/松井孝典・南伸坊/ちくまプリマー新書/2007』
著者:惑星物理学、アストロバイオロジー
評価:はっきり言ってただの雑談。底が浅すぎ。

南伸坊の質問のレベルが低すぎ。
何であんな安直な答えで納得できるのか。

科学そのものに関してはまっとう。
"科学的にわかりません"はない、
"ここまでわかっている、ここから先はわかりません"がある。
私なら"こうすればいずれわかるでしょう"という。
これはとても良い模範的な解答だと思う。

科学とは共通性を持つこと。
だから数学など万人に共通する言葉が必要なのだ。

他の星の生命体はどんなか。
同じ宇宙に住むというのは、同じ教科書で学ぶということ。
だから人間と知識は似たものになるらしい。

松井氏は、専門の話からそれるととたんに怪しくなる。

魂とは関係性を持つ粒子という。
違います。心理事象はそんなに小さくありません。
心理事象はミクロ事象じゃないんです。

今の日本は懐疑の精神を失った中世のようだという。
今も昔も変わりません。典型的な"今の若者は……"病です。

我慢の精神を復活させないと制度を変えても無意味という。
それも制度が変えないと無理です。
制度が精神を作るんです。

社会学、教育学、経済学……何も知らないようだ。
惑星科学者だから当然なんだけど、自覚はないみたい。

論理アタマのつくり方 [本(論理思考]

『論理アタマのつくり方/小西卓三/すばる舎/2003』
著者:ディベート、議論教育、議論研究、クリティカルシンキング
評価:ディベート方式のクリシンの本

演繹、帰納の代わりとして許容性、関連性、強固性を使うと言う。
うーん、そもそもそれは全然別ものなんだが。
演繹と帰納の意味を理解してないよね。

ディベートを学んだ人はみんな非論理的なのが面白い。
検証の理論を知らないからかな。
相手に勝利して、事実とはかみ合わない結論を出すものね。

日英バイリンガルプラクティス方式ということで、
英語の勉強になります。

タグ:小西卓三
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