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王朝文学の楽しみ(岩波新書) [本(東洋思想]

『王朝文学の楽しみ』
尾崎左永子(歌人、エッセイスト)
岩波新書(2011)


主語は敬語で見分ける

やがて=そのまま
やをら=静かに
あたらし=もったいないことに
ゆかし=見たい、知りたい
恥しき人の御ふるまひ=あまりに立派で、
こちらが恥じてしまうほど見事な態度

ということは、「やまとことば」の長歌や短歌は、
古くから声に出して歌われて来た、
ということでもある。
「文字以前」から存在したのだから。

見渡せば 柳桜を こきまぜて 都ぞ春の 錦なりける。素性法師
あなた方は山を見上げては秋の錦だ、と秋を喜ぶけれど、私からいわせれば、都こそ、柳の若芽花びらを扱いてまぜた色の、美しい「春の錦」ではないですかね。

醍醐天皇による古今和歌集
宇多天皇と六歌仙

古今和歌集をくだらぬと一蹴した正岡子規
万葉集4500首はすべて漢字表記
古今集1100首は平仮名中心

月やあらぬ 春やむかしの 春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして。在原業平
月は去年の月ではないのだろうか。春は去年の春とはちがうのだろうか。ああ、この身ばかりは、去年と少しも変わらずあの人を思っているのに……

春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えぬ 香やはかくるる。凡河内躬恒
春の夜の闇って、ほんとにわけがわからないなあ、いくら梅の花を隠したって、香りまでかくれるだろうか、かくれるはずがないのに……

蜻蛉日記。夫への嫉妬
歌物語:伊勢物語、平中物語
物語の出で来はじめの祖なる竹取の翁
香は「かぐ」ではなく「聞く」
宮廷内の不倫を題材とする源氏物語
光源氏は母の身分が低く、紫上は子に恵まれない
自らの知らぬ「幻の母」の像を求めての旅
出家でのみ男から独立できる女たち

当時は尼さんになるといっても、
頭を剃るわけではなく、黒髪をばっさり剪るのです。

「よばい」は「夜這い」ではなく「呼ばひ」

紫式部は藤原氏、清少納言は清原氏
源氏物語の空蝉は紫式部の自画像
清少納言と夫橘則光は離婚したのちも兄妹と呼び合う
をかし=趣がある
滅多に出会えない幸運を海月の骨に喩える
西行は鳥羽中宮待賢門院璋子への恋を絶って出家したとも

私は、『新古今集』のことを、
今にも壊れそうな薄くて透明なガラスの球を、
そっと両掌に包んで捧げている、
王朝の形見である、と思うことがある。

☆☆☆☆☆
難易度3/5 推薦度5/5

文章が実に美しい。日本語うまいな。
土佐日記の紀貫行は、最古のネカマか?

・今日の一言(本文より、紀貫行)
力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女の仲をもやはらげ、猛きもののふの心をも慰むるは歌なり。
힘도 들이지 않고 천지를 움직이고, 눈에 보이지 않는 귀신들도 감동시키며, 남녀의 사이를 친밀하게 하고, 용맹한 무사의 마음까지도 위로하는 것은 노래이다.
Shaking the heaven and earth without putting in power, making demons feel sad, comforting the heart of brave warriors, that is a song.
动天地、感鬼神,化人伦,好夫妇,莫宜于和歌。

『「鎌倉百人一首」を歩く』
尾崎左永子(歌人、作家)
集英社新書(2008)


古くから鎌倉を詠んできた先人たちの短歌を選んで、
もっと鎌倉に親しんでもらおうという試みが、
「鎌倉ペンクラブ」で企画されたのは2004年の夏だった。

水平線へと一刻一刻近づく夕陽が、
横雲の間を沈んでいくとき、
時には太陽が円形ではなく、
いびつに見えたり、
液体のように滴を滴らせる光る物体に見えたりする。

大海の 磯もとどろに よする波 われて砕けて 裂けて散るかも。
源実朝

近江八景。比良の暮雪、矢橋の帰帆、石山の秋月、
瀬田の夕照、三井の晩鐘、堅田の落雁、粟津の晴風、唐崎の夜雨

家康の妻の一人お梶の方、
関ヶ原合戦のとき騎馬で鉢巻をしめて先頭に立った。
戦いの後、お勝つと名前を与えられる

風になびく 富士のけぶりの 空に消えて ゆくへも知らぬ わが思ひかな。西行法師

葵祭、上賀茂・下鴨神社の賀茂祭り、走馬の儀
鎌倉六代将軍、後嵯峨天皇の皇子、宗尊親王

寂しくて ひとり笑えば 卓袱台の 上の茶碗が 笑い出したり。山崎方代

☆☆☆☆☆
難易度2/5 推薦度3/5

これは……鎌倉旅行してから読むといいかも。

タグ:尾崎左永子
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