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社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉(筑摩選書) [本(社会心理学]

『社会心理学講義』
小坂井敏晶(社会心理学)
筑摩書房(2013)


社会学者として自我の否定、非存在を主張し、
責任概念の刷新を狙うもの。
ただし論理思考力に欠陥があり、問題点も多い。
フェスティンガーの認知不協和理論の発展的応用が興味深い。

シュレーディンガーの美しい方程式。
実験に合わずに修正したら実験が間違っていた。
美しい方程式の方が正しい。

ホメオパシーは100%プラシーボ。
ホメオパシーに保険適用する方が医療費は安くつくこと。

▽p70、ニューヨークの女性殺害目撃者の放置事件は
むしろ警察のミス説が有力視されている。

▽p109、男に生まれたいか女に生まれたいかの質問は、問題の意味を勘違いしている。
質問は願望を問うものであってどちらが正しいかを問うものではないから。

▽p110、生まれてきて良かったか。
正確に答えられない質問は無意味というなら、この本の存在自体も無意味だろう。

因果応報願望がひどい目にあった人には
何か原因があると考え責任があると見なす傾向を生む。
▽これは重要な指摘。

p121、河野説の否定は河野説の価値をとらえ損ねたための誤解。
逆に言うと主体は空間のどこにも位置づけられないものではない。
著者は、主体には視点という確固たる空間の一点があることを無視している

違った人を差別するのではなく区別できないほどとけ込んだものを差別する。
ドイツのユダヤ人は非ユダヤ人と区別できないから差別された。
▽両方のパターンがあり、どちらも差別と思う。
日本で韓国人が差別されるのは有名だが、白人も黒人もしばしば差別される。

フランスは移民国。
多民族主義のアメリカは文化が均一で、民族の固有性を認めないフランスは文化が多様。
▽これは単に国の成立の経緯の問題ではあるまいか?

▽p216の社会は案外地獄でもなく安定した社会ではないか。
なぜなら卑劣の上司が悪いが、遺伝子が悪いに変わるだけだからである。
私は著者が嫌悪する世界がこの世に実現するだろうと見る。

自分の力で現状を変革できるという信念が支配維持に貢献する。
差別を受ける少数派が支配者側に同一化するのは、
それを可能にする、あるいは可能だと錯覚させる客観的条件が存在するから。

美の根拠は社会規範にある。
▽これは不足。遺伝子にもある。
平均顔の研究、ウェストヒップサイズなどの研究を読むべき。

意志は行為を開始する出発点ではなく、社会秩序を維持する上で援用される虚構です。
自由だから責任が発生するのではない。
逆に我々は責任者を見つけなければならないから、
つまり事件のけじめをつける必要があるから、行為者が自由であり、
意志によって行為がなされたと社会が宣言する。
▽これは正しいが、言語哲学の問題である。すなわちあらゆる語彙が虚構なのである。

p272 失業者の存在は資本主義経済の論理的帰結です。
市場経済がうまく機能しないから失業者が出るのではない。
▽言葉遊びの詭弁。市場経済がうまく機能しないから失業者が増える。
出ると増えるでは全く意味が違う。そして一般に増えるの意味で出るを使う。
犯罪も同じ。言語学の語用論の問題。

p273 事故原因を人的原因か構造的欠陥か問うのは発想の誤り
▽これも原因が複合するものであり一つではなく、
そこから改善可能性を問うものであることを無視している

p275 性犯罪は、性タブーを持つ社会に必然的に起こる正常な現象なのです。
▽言葉が全く無意味。そんなことは研究者はわかった上のこと。
その上でどう減らすかを考えているのが研究者である

普遍的価値は存在しない。
▽これは間違い。人間が生物だから生物としての特性を持っているため、
普遍的価値が成立しているのだ。

植民地にされなかった日本に、どうして顕著な西洋化が現れたのか。
社会が閉ざされているから文化が開くのではないか。

フランスでは陪審員の判決には控訴できなかった。人民の判断が正しさの定義のため。

▽全体に無意味な分析が多い。意味とは行為を取り出すこと。
行為に結びつかない虚言が多すぎる。
仏教で使われる詭弁レトリックに似たものが多いのは影響を受けているためか?
評判の悪い池田清彦の進化論解説を引用するのも微妙だ。
著者の仕事を社会心理学だと認める人は日本にもフランスにもほとんどいないそうだが、
確かに社会心理学じゃないから仕方がないだろう。

・今日の一言(本文より、アンリ・ポアンカレ)
Science is built up with facts, as a house is with stones. But a collection of facts is no more a science than a heap of stones is a house.
石を集めて家が造られるように、事実を集めて科学は営まれる。しかし意志の単なる集積が家でないのと同様に、事実の単なる寄せ集めも科学ではない。
모아진 돌로 집이 만들어지는 것과 같이 모아진 사실로 과학이 이루어진다. 그러나 쌓아진 돌이 집이 아닌 것과 같이 수집된 사실도 과학이 아니다.
科学是由事实构成的,就像一栋房屋是用石头建造的一样。但是一批事实(的简单集合)并不是科学,就像一堆石头并不等于一座房屋一样。

タグ:小坂井敏晶
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