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草原の風 上巻 宮城谷昌光 [光武帝劉秀(Emperor Guangwu)]

『草原の風 上巻』
宮城谷昌光(作家)
中央公論新社(2011)


ついに出た日本語のまっとうな光武帝小説。
光武帝の若い頃のエピソードを
一つ一つ丁寧に取り上げてある。

著者の劉秀のイメージは
おとなしく真摯だが心の強い人といったところかな?

ロバの商売は有名だけど、
蜜の方も商売と描いたのはちょっと意表をつかれた。
でもそうかもしれない。

劉秀の読書傾向について、占いが好きで、
『易経』に詳しいことになっている。
また『孫子』からの引用発言もある。

このあたりはたぶん歴史とは違っていそうだ。
劉秀の発言や詔書の引用から、
劉秀の読書を研究したものが中国にあるが、
そこで劉秀がよく読んでいた本は、
『論語』『詩経』『尚書』の三つ。
だから『易経』もたぶん読んでないし
特に劉秀は兵法書を毛嫌いしていて
『孫子』も読まなかったらしいのだ。
それでいて希代の名将となるのだから凄いのだけども。

この本は挙兵前夜まで。
全三巻ということを考えるとバランスが悪く、
実質皇帝即位の時点で
話は完結すると理解しなければならないようで、少し残念なところ。

個人的な話をすると、私はずっと光武帝の本を準備していて、
「今、宮城谷先生が読売新聞で連載している人の本です」
といって持ち込むはずだったのが、
予想より早く終わってしまってがっくり。

光武帝は調べると底がないほど深く、いつまでも終わらない。
そしてその異次元的な凄さを新たに教えてくれる。
そのせいで間に合わなかった。

宮城谷昌光というと、
いつも主人公が史実より大物にスケールアップしてしまうのだけど、
この小説は初めて主人公をスケールダウンさせた小説になりそう。

誤解ないように言うと、私は宮城谷ファンだし、
この小説も当然、面白いのである。

・今日の一言(本文より)
官に就くなら執金吾妻を娶るなら陰麗華。
仕官当作執金吾,娶妻当得陰麗華。
벼슬을 하려면 집금오(執金吾), 처를 얻으려면 음려화(陰麗華).
If I were to be an official, I want to be zhijinwu; if I were to marry, I want to marry Yin Lihua.

タグ:宮城谷昌光
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