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なぜ貧困はなくならないのか-開発経済学入門 [名著再掲] [本(経済学思考法]

『なぜ貧困はなくならないのか』
ムケシュ・エスワラン、アショク・コトワル(経済学、物理学)
日本評論社(2000)


名著。
開発経済学の骨組みを
シンプルなモデルから理解できる。

物理学出身らしいシンプルなモデル構築で核心をついている。
穀物、繊維、自動車の3つのモデルで鮮やかに説明している。

途上国へのルイス・モデル。
資本蓄積すなわち機械タービン工場ダムなどの建設を促進せよ。
これが途上国を発展させると考えたのだがうまくいかなかった。

貧困層は食料に不足しているため工業製品を買わず、
工業製品への需要が同じまま。
工業の発展は工業従事者を減らし、農業へと追いやってしまう。
農業は農地に限りがあるので、
農業従事者が増えても一人あたりの収入は減ってしまう。
すなわち、工業の発展が貧困を増やすのである。

農業が十分に発展し、国民の食料需要が満たされていてこそ、
工業発展が経済発展に結びつくのだ。

イギリスの工業進歩はインドの貧困層を窮乏化させた。
職を失った繊維労働者が農業人口となり、
農業効率が低下し、さらに農産物が繊維の対価として輸出されたのだ。

これは植民地時代の韓国にも同じことが起こっている。
当時の朝鮮半島からなぜ米が日本に輸出されたのか理解できるだろう。

産業革命がフランスでなくイギリスだったのは、
1750年フランスの60%が農業に従事していたが、
イギリスは45%であり、当時の食料は自給体制だから、
イギリスがそれだけ農業効率が高かったためである。

工業化の度合いではなく、その変化速度が貿易効果を決める。
工業生産性上昇の速い国が、
遅い国へ輸出することでその貧困が減少するのだ。
貿易が貧困層の厚生を改善しうるのは、
貿易に平行して工業生産性成長率の上昇が起きる場合に限られる。
停滞したアフリカはアメリカと貿易することで貧困が増大するが、
急激に発展する中国は、
アメリカと貿易することで貧困を減らすことができるのである。

一次生産物の貿易で発展する国は少ない。
例外は農産物輸出で発展した北米と石油の湾岸産油諸国。
インドは耕地が飽和しているのに対して、
北米は未開地が広大で収益逓減が起こらないなかったからだ。
農民が増えてもそれに応じて耕地を増やせたのだ。
天然資源が需要増加に応じて増やせる場合も、
それにより貧困を減らせる。湾岸産油諸国はその例である。

・今日の二言
貧困をなくすにはまず潅漑と基礎教育の普及だ。
빈곤을 없애기 위해서는 우선 관개와 기초교육의 보급이다.
要消除贫困,首先需要农业灌溉和基础教育的普及。
First, the elimination of poverty requires irrigation works and promoting basic education.

貿易は経済発展のより速い国を有利にする。
무역은 경제 발전의 속도가 상대국보다 빠른 나라가 유리하다.
贸易有利于经济发展更快的国家。
World trade will benefit the country where economic development is faster than their partner country.

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