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[比喩] 夜空の星座と偶然と陰謀論 - 陰謀論の心理学 [考えたこと]

 雲のない晴れた夜空、美しくきらめく星々。人はその星の並びに意味と図形を見いだし、星座にわけて見る。たくさんの神話や伝説と結びつけられている。
 しかし、星はただその方向にあるだけである。立体的に見るとその並びも全く違う。
 例をあげよう。オリオン座の三ツ星、ミンタカは地球から1000光年、アルニラムは1300光年、アルニタクは800光年の距離にある。オリオン座を構成する他の星、ベテルギウスは640光年、リゲルは773光年、ヘカーは1100光年、ベラトリックスは240光年、サイフは700光年である。
 オリオン座はただ地球から見るとあの形に見えるだけである。地球から見ると同じ方向だが、少し離れた星からみただけで、星座の並びは全く違ったものになる。
 いま見ている夜空の星座は、銀河系の外から見れば存在しないものだ。それはただあなたの心の中にだけあるのである。

 無意味な点の羅列から星座という意味を取り出す私たちの脳は、あらゆる事象に意味を見いだす。その一つに陰謀論がある。
 陰謀論は無意味で無関係な情報を組み合わせて、壮大な幻のストーリーを組み立てる。
 ユダヤの陰謀、CIAの陰謀、マスコミの陰謀、日教組の陰謀、中国共産党の陰謀……。そう見えるのはただあなたの位置からにすぎず、少し違う角度から見るだけで消滅してしまう幻想にすぎない。
 たまたま同じ方向にあるから、一緒に集まって行動しているように見えるだけなのだ。違う角度から見れば、みな全く違う場所にあることがわかる。

 世界は偶然と混沌に満ちている。しかし偶然を理解するのは本当に難しいことである。
 偶然とは無知を認めるということだからだ。"わからない"ということに耐えることができる人は少ない。わからないとは、何をすべきかわからないということであり、自らの無力を認めることでもある。
 無知の葛藤に耐える力の弱い人ほど、陰謀論にはまる。陰謀論は一種の宗教である。混沌に秩序をもたらし、あなたの心に欺瞞の平穏を与える。
 陰謀論にはまる人たちの共通点は、"わからない"ということに耐えられず、"自分にわからないものは間違っている"と考えることである。わからないことによる葛藤の苦痛から抜け出させてくれる陰謀論の快楽、惨めな無力さから脱して、正義の行動に邁進する快楽にに溺れるのである。安直で明解な陰謀論、誰でもその論理が理解できる簡単な陰謀論に納得してしまうのだ。

 しかし私たちが宇宙のある一点に存在する以上、宇宙は死角に満ちており、無数のわかり得ないことがあり、偶然と混沌は不可避である。
 あなたが見ているのはあなたを中心とした世界に過ぎない。世界はあなたを中心に回っているのではない。陰謀論は自己中心的な幼児的妄想である。

 世界はあなたのためにあるのではないのだ。あなたが世界の一部なのである。

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