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発達障害の子どもたち(講談社現代新書) [本(教育]

『発達障害の子どもたち』
杉山登志郎(児童青年期精神医学)
講談社現代新書(2007)


養護学校再考。真の子どもたちのための教育とは?

養護学校を卒業すると就職に不利……ではなく有利。
障害者雇用促進法によると、
一定規模以上の企業は1.8%を障害者で雇用しないと罰金。
しかし実績は1.5%。
仕事のできる障害者は引く手あまたなのだ。
養護学校卒業というキャリアは就労に不利ではない。
逆に通常の学校に進学しても有利にならないなのだ。

思うに、養護学校を避けて普通学校というのは、
背後に差別意識があるように思える。

発達障害は環境より生物学的原因が圧倒的に高い。
親の教育によって発生するようなものではないのだ。

また発達障害という言葉がおかしいという。
英語ではdevelopemental disorder=発達の道筋の乱れ。
著者は発達失調と呼ぶのが良いのではないかとする。

発達障害の適応を決めるのは情緒的なこじれ。
能力ではなく情緒的に適応できてこそ社会にとけ込めるのである。

広汎性発達障害の根本原因。
著者は狭い視野で世界を見て判断行動する誤学習の結果という。
同感だ。
ワーキングメモリの障害を持ち、
その小さなワーキングメモリの容量で適応していくため
特異な思考や認識が生まれるのだ。

自閉症児の逆転バイバイ。
手のひらを自分に向けて振る。
相手の視点に立つことができないためであり、
自己と相手という2要素を当時認識できないという、
ワーキングメモリの問題なのだ。

自閉症者の作家、ドナ・ウィリアムズ。
"自分はすべて一度に一つのことしかできないので、
自分の語ったことすら自分に向かってもう一度言い直さなければ
理解できない"という。
同時思考能力=ワーキングメモリの問題なのである。

広汎性発達障害と鬱病。ともにセロトニン系の機能不全。
ADHDはドーパミン系およびノルアドレナリン系の機能失調。
それぞれ脳に原因がある。

青少年の重大犯罪に占めるアスペルガー症候群の比率の高さ。
これはニュースにしにくいことだが、
どうも明らかに比率が高いようである。
社会関係能力の欠如があるのに、それに社会は無対応だったためだ。

アスペルガー症候群のアスペの会とADHDのエルデの会。
アスペの会は人数が増え続けるがエルデの会は変化しない。
エルデの会員は青年期を過ぎると問題が生じなくなるのだ。
アスペルガー症候群の対処の難しさがわかる。

ADHD児童への対策。
一度叱ったら一度褒めること、個別に声をかけること。
これは注意が散漫であるから、
強く注意をひく必要があるためである。

幼児の接し方の原則、スモールステップ。
できることを見定めて、小さなステップの目標を立てる。
わかりやすく提示する。
初期抵抗が減るまで粘り強く続けること。
14-15回の試行で抵抗が減るので、
最低でも2週間程度は粘るべきという。
教育とは忍耐強く見守らなければならないものだ。

日本の教育は駄目なのか?
日本より学級人数が少なく先生も多く、
ソーシャルワーカーまでいるストックホルムの高校。
それでも中途退学率は17%に及ぶ。
対して日本は3%である。
日本はその悲惨な予算の制約の中で善戦していると言えよう。

『わかりやすさの本質』
野沢和弘(毎日新聞記者、長男が自閉症者)
生活人新書(2006)


障害者と新聞の関係を知る。

発達障害者に説明する場合は、
いつのことかなんの話かきっちり示すのがよいという。
自閉症者は文脈を読むのが苦手だからだ。

また、"私は~と思った"という文章が少ないという。
これは自己客観化の二重構造が必要からではないかという。
私という一人称は、二人称の相手がいてはじめて生まれるのだ。

警察用語:"さんずい"は汚職、"やきとり"は焼死体、"まぐろ"は礫死体
食いたくないな……

『自閉症』
村瀬学(心身障害児通園施設職員)
ちくま新書(2006)


感情的で真相が見えていない。

自閉症児を症状として見るだけで
人間として見ないことへの反発があるようだ。
サブタイトルは"これまでの見解に異議あり!"だが、
これまでの研究法に異議を唱えているだけである。

玉井収介の"頭の中の黒板"を平凡な解釈と馬鹿にするが、
これは文字通り真相で正しいのである。
音韻ループが弱いので、視空間パッドを使っているということ。
ワーキングメモリの発達障害なので、図で定位することで覚えるのだ。
この本で描かれる指摘は、ことごとく視空間を利用した定位である。
自閉症児は音韻ループが弱いため、他の児童と同じように行動できず、
心にいつも不満とストレスを抱えている。
それがあるときカレンダー計算や地図にのめり込むのは、
それにより自分のできること、
ときには他の子どもよりも自分の方がうまくできることを発見し、
喜ぶからである。

算数はできないのに電車賃はわかる自閉症児や、
山下清がはじめて会うの人に、
名前、年齢、住所、親戚関係などをしつこく聞いたのも、
空間思考による定位行動である。
テンプル・グランディンの本のタイトルが
「目で考える」なのもそういうこと。

・今日の一言
自分はすべて一度に一つのことしかできないので自分の語ったことすら自分に向かってもう一度言い直さなければ理解できない。(ドナ・ウィリアムズ)
Because I can only do one thing at a time, I cann't even understand what I told, if I don't repeat it myself once more.(Donna Williams)
저는 어떤 일이라도 한번에 하나밖에 할 수 없으므로, 내 스스로 말한 것조차, 나를 향해서 한번 더 고쳐 말하지 않으면 이해할 수 없다.(도나·위리암즈)
因为我一次只能做一件事,所以我需要把我自己说过的事情再说给自己听,我这样才能理解自己说的内容。(多娜·威廉姆斯)

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