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格差社会-何が問題なのか(岩波新書) [本(格差問題]

『格差社会』
橘木俊詔(経済学、労働)
岩波新書(2006)


日本の貧困の実態と政府の無策を知る。

ジニ係数で見ると日本は先進国の中でも不平等な国である。
ジニ係数の対象は、貧困者=中位所得者の50%以下の人である。
日本は最も貧困な層は少ないのだが、
その一つ上のクラスが大量にいるということだ。

これら格差拡大の要因としては、労働市場の緩和より、
企業参入の自由化が大きいという。
タクシー業界などである。

どうかな。私は最大の原因はデフレだと思う。

貧困の実像を分析している。
特に貧困なのは、単身高齢者や母子家庭である。
どちらも二人に一人ほどが貧困者である。
また29歳以下の若年層は四人に一人が貧困者である。

生活保護の問題点。
生活保護の支給額より最低賃金が低いこと。
これはもちろん最低賃金を上げるべきなのである。
著者の実証的研究によると、
日本で最低賃金を引き上げても雇用が減ることはないらしい。

地方格差を見る。
失業率が低いのは、1位福井県、2位長野県。
高いのは、1位沖縄県、2位福岡県。

90年代は所得が延びなかった。
1990年の県民所得291万だが、2002年は292万でほとんど変化せず。
対して三大都市圏は、1990年所得334万から2002年320万である。
都市部の収入が激しく減っており、
それに対して地方の県は維持されていることがわかる。
90年代はまさに地方バラマキの時代であった。

最も悲惨な都市部は大阪府。
大阪圏は1990年312万から2002年287万と25万も減っている。
……引っ越ししようかな。

日本は実は世界的に見ても小さい政府である。
租税負担率は、
日本21.5%、アメリカ23.8%、仏と英38%、スウェーデン49.3%。
個人所得税の負担率を見ても、
日本6.0%、アメリカ12.1%、スウェーデン21.5%。
日本が借金だらけなのは当然である。
必要なお金を取らずに借金しているのだ。

そのため日本政府は貧富の差を解消する再配分の力も弱い。
ジニ係数の政府の再配分による変化値は、OECD加盟国中最低の7.5である。
ドイツは14.4、ベルギー25.5、そしてアメリカですら11.1あるのである。
日本は国民放置国家と言ってよい。

格差を解消するためにはまず上を削ること。
高所得者から多く税金を取るべきである。
著者は、高所得者が高い税金で勤労意欲を失った証拠はないという。
これは全く同感で、心理学的にもこんな動機付けは成立しない。

また下を引き上げること。
それには職務給制度、同一労働同一賃金の導入すべきとする。
これは全く同感であり、
日本が目指すべきなのはオランダ型雇用システムであると思う。

気になるところとしては、消費税増税に楽観的なところ。
消費税は間接税なので意欲を疎外する程度が所得税より小さいという。
これは疑問だ。
消費税は消費欲を疎外し、所得税は労働欲を疎外する。
経済循環への疎外として見れば同じであると思う。

また一番肝心の資産格差に触れていないのが残念である。
日本の最大の問題は収入格差より資産格差だからである。

資産格差は世代を受け継ぐものであり、子どもの教育に直撃する。
ところが、日本の教育支出のGDP比は先進国中最低レベル。
日本は未来を担う子どもを大事にしていない。
全くお話にならない問題である。
道路を作るのを止めて教育と福祉に投資して欲しい。
教育も福祉も産業の継続性が高いので、経済効果も高いのに……

・既読の関連書籍
日本の若者の貧困を指摘した本
『プレカリアート-デジタル日雇い世代の不安な生き方/雨宮処凛/新書y/2007』
福祉の経済効果を指摘した本
『持続可能な福祉社会-「もうひとつの日本」の構想/広井良典/ちくま新書/2006』
『医療と福祉の経済システム/西村周三/ちくま新書/1997』
『財政構造改革/小此木潔/岩波新書/1998』
そういえば、ブレア首相は教育を重視してましたね。
『ブレア時代のイギリス/山口二郎/岩波新書/2005』

・今日の一言
日本は先進国の中で最も不平等な国である。
Japan is the most unequal country in the developed countries.
일본은 선진국 중에서 가장 불평등한 나라이다.
日本是在发达国家中最不平等的国家。

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