SSブログ

補給戦-何が勝敗を決定するのか(中公文庫BIBLIO) [本(軍事]

『補給戦』
マーチン・ファン クレフェルト(歴史学)
中公文庫BIBLIO(2006)


軍隊とは食料を食べ歩く集団である。
戦争の実態を知る良書。

17世紀初のヨーロッパの軍隊は余分なものがいっぱいついている。
軍隊の50-150%に相当する女子供、召使い、商人を従えるのだ。

18世紀の戦争は君主の個人的争い。
敵国内で兵士を維持して食を奪うのが目的である。

軍隊は食べるために常に移動しなければならない。
ある場所に停止すると、すぐに食料がなくなってしまうのだ。
動きながら、周辺の食料を食べ尽くしながら移動するのが軍隊である。

最初に不足するのは馬の飼料である。

食料の輸送は船が有利。
600台の荷馬車で200t小麦粉を運ぶが、
9隻の船で200t小麦粉600t飼料が運べるのだ。
軍隊は食べるために移動しなければならない

17世紀、軍隊の補給を断つことは不可能だった。
だから、根拠地との連絡は考慮不要だった。
大事なのは河川沿いを移動することである。

包囲攻城を補給できるのは水路のみ。
補給制度の目的は包囲攻撃軍の維持。
移動する限り補給は不要なのだ。

1870-71年のドイツの作戦の成功は、
フランスが農業大国で実り豊かな季節に戦ったこと。
戦場に食料がなければ戦争は維持できないのだ。

ドイツの名将ロンメル。
ロンメルの補給困難は、北アフリカの港湾能力の低さと、
アフリカ内陸地域の輸送距離の長さに起因した。
ロンメルは戦術的天才だが戦略的には誤りだったとしている。

ナポレオン
決定的な場所に最大の兵力を集中させる方法を知っている者が勝利する。
これは孫子にも通じる考え方だ。

著者は不可測なものの重要性を述べる。
ノルマンディ上陸作戦では、兵站の計算を無視して勝利できたのだ。
戦争はまさに生き物である。

また戦争論のクラウゼヴィッツの有名な言葉、
"戦争は政治の延長"を批判する。
戦争の目的は政治だけではないのだ。
正義、生存、名誉のための戦いが無数にあることを指摘している。

戦争の仕事の90%は兵站。
兵站術とは人間に必要な一日3000kcalを補給できるかどうか。
戦争のプロは兵站を語り戦争の素人は戦略を語るという。

チュレンヌ
一つの軍は5万を越えるべきではない。
5万人以上の軍隊が一ヵ所に集中しても、指揮が混乱するだけである。

モルトケの戦略の秘訣
個々に進撃し戦う時に一体になること。

これらで思い出すのは光武帝の言葉である。
光武帝には兵站に関する発言が多いのだ。
光武帝は常に敵の食料を計算して戦うのである。

光武帝やその諸将は常に相手よりも少ない兵力で敵国に侵入し、
数ヶ月から数年に及ぶ持久戦に持ち込んで、
相手の食料が不足するところを打ち破った。

また同一の指揮系統下に、
5万を超える軍勢を揃えることはほとんどなかった。

光武帝の諸将は自由に進軍することが容認されており、
分離と集合が自由自在であり、
光武帝の合図とともに集合して一体に戦うこともあった。
光武帝とその諸将の用兵の巧みさは驚くべきものがあるといえる。

・今日の一言
戦争のプロは兵站を語り戦争の素人は戦略を語る。
A professional of war tells logistics, but an amateur of war tells strategy.
전쟁의 프로페셔널은 병참을 말하지만, 전쟁의 아마추어는 전략을 말한다.
战争的专家谈兵站,战争的外行谈战略。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。