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いじめの構造(新潮新書) [本(教育]

『いじめの構造/森口朗/新潮新書/2007』
著者:教育評論家
評価:いじめを客観的に分析し、対処法を取り出す・良書

いじめのデータを客観的に分析し、
内容で分類して、それぞれに対策を提示する良書である。

日本人の研究者、専門家軽視の傾向。
教育再生会議に見る極端な研究者軽視。教育学者が一人もいないのだ。
財政諮問会議とかも、財政学者やマクロ経済学者がいない。
日本人の専門家軽視はひどいものがあると思う。
アメリカ人と共通する欠点である。
『バカの壁』という本が売れたのも、
そうした日本人の愚かさの象徴と思われる。
専門家に対する敬意と尊重というのはどうすれば生まれるのだろうか?

出席停止の権限は学校になく教育委員会にある。
先生には決められないらしい。

スマスマでのアンケート。
"いじめられる方にも問題がある"と答えたのは、134人中、102人。
"いじめられても仕方のない子がいる"に"いいえ"と答えた中学生は4割以下。
これが現実である。
というか、いじめられる子なんて、見たり話したりすればすぐわかる。
けれども、それをいうと問題になるのは、
原因論と責任論の区別ができない人たちが多いため。
被害者には何の問題もないという前提があるのだ。
「原因はあっても責任はない」というのが理解できないらしい。

リアルな暴力団を描いたビデオ「許されざる者」。
ヤクザ映画でヤクザに憧れる子どもを防ぐためのもの。
ところが"組員の子どもに対するいじめを生む"と上映中止になった。
あきれた話である。

畠山鈴香の高校卒業文集の暴言
・いじめられて強くなったから感謝しろ
・秋田から永久追放
・秋田の土を二度と踏むな
・会ったら殺す
……先生は何をしていたんだ?

著者は大胆なことを言う。
学校にいじめは必要だ。
社会にいじめがあるのに学校だけないのは有益ではないという。
社会訓練になるとするのだ。

問題はいじめでなく、いじめという名で放置されている犯罪だという。
死人が出ないといじめとして不問にされているのだ。
いじめと犯罪を峻別しなければならない。
いじめには四種ある。
軋轢型、コミュニケーション型、犯罪型、暴力恐喝型。
恐喝、暴行、名誉棄損などはいじめではない。犯罪である。

著者の脱線。外国人による日本人いじめの例。
国際スポーツでの日本封じ込めのルール変更。
・バサロ泳法の距離制限
・バレーボールのオーバーネットの許可
・スキージャンプの板の長さを身長比に変更
あまり関係ないけど言いたかったみたい。

いじめ予防には価値観の押しつけが必要。
放っておくと、
"チクリは卑怯"のような独自の価値観を作ってしまうという。
そういう意味で『国家の品格』でいう武士道を評価しているらしい。
いじめ予防策としての人権フィクションや武士道フィクションなど、
適切な価値観を提示することは大事だというのだ。

このあたりは何とも言えない。
価値観の押しつけは、
その価値観を共有しない者へのいじめを生むかもしれない。
実証的研究を確認してみる必要がありそうだ。

『学生による教育再生会議/東京学生教育フォーラム/平凡社新書/2007』
著者:教育学部の大学生集団
評価:大学生のレポート

総合学習の時間を生かすためジュニアノーベル賞を設立する。
これは面白いかもしれない。

教員は一日平均11時間、月平均80時間の時間外労働がある。
明らかに仕事が多すぎる。

2006年3月の教員職員の三万人減を撤回せよという。
これは同意。教員は明らかに不足しているのに減らすなんて変な話だ。

"学生による"というから小中高の学生が入っているのかと思ったら、
教育学の大学生集団。
教師予備軍の意見では、平凡な内容なのも当たり前か。
次回があるなら、小学生、中学生、高校生など、
教育を受ける当事者を入れる方が価値があると思われる。

・今日の一言
いじめと犯罪を峻別する。
Make a sharp distinction between bullying and crime.
왕따와 범죄를 엄밀히 구별한다.
严加区别欺侮和犯罪。

タグ:森口朗
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コメント 4

いつも楽しく読ませて頂いております。

「いじめ」とは少しかけ離れますが、この現在の若者の犯罪を見るにつけ、私は義務教育段階での「法教育」を望みますね。
by (2007-10-05 14:24) 

Kay-akira_Hirota

道徳教育より法教育がいいかもしれませんね。
by Kay-akira_Hirota (2007-10-06 00:15) 

匿名希望男性

やはり生まれた育った土地、環境は、学齢期は変えられないものだからやっかいですね。
by 匿名希望男性 (2008-01-25 10:55) 

匿名希望男性

やはり相性がいい土地、悪い土地があろのではないでしょうか。周りの人間関係や主要産業も大きく人格に影響を与えますね。本人の努力だけでは変えられないものがありますね。おそらく人格は変わることはないのだから環境を変えることが重要だと思います。
by 匿名希望男性 (2008-01-25 11:00) 

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