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社会保障を問いなおす-年金・医療・少子化対策(ちくま新書) [本(格差問題]

『社会保障を問いなおす』
中垣陽子(世界平和研究所主任研究員)
ちくま新書(2005)


年金、医療、少子化対策の政策を具体的に述べる。
良書。

・年金
2004年、日本の潜在的国民負担率は45%。
これは別に高くはない。
2001年の場合、アメリカ37%、イギリス50%、ドイツ59%、
フランス66%、スウェーデン74%である。
そして、高齢化が進む日本にとって、アメリカよりも欧州各国の方が、
参考になるのはいうまでもない。

著者は基礎年金制度として、月7万、一人暮らし9万を提案する。
財源は全額消費税とし、金額は賃金にスライドさせる。
わかりやくてよい提案である。

・少子化問題
できちゃった婚と不妊の増加。
正社員には経済的余裕はあっても時間がない。

そもそも結婚しない人が増えた。
生涯未婚率は、男性13%、女性6%。
2003年の東京都の出生率などは1以下だ。

かつては高収入の男性と家事手伝いの女性の結婚が多かった。
ところが今は、高収入の男性と正社員の女性が結婚する。
家事手伝いの女性というパターンがなくなったのである。

若者の二分化現象。
経済的に子どもを持てないフリーターと、
育児と出産の時間がない正社員。
こうした雇用情勢を放置して、少子化うんぬん騒ぐのは馬鹿げている。
世界的にも、若年失業率が高い国ほど出生率が低いのだ。

また婚外子の比率が高い国ほど出生率が高い。
すなわち、母子家庭を援助することも大切である。

現在の少子化対策は保育料のコストを度外視している。
保育所の運営コストを子どもに現金で還元すると年50万支給可能らしい。
保育所の定員増も待機児童が減っておらず、効果が弱い。

著者の提案は、まず扶養控除を廃止し、児童手当に一本化すること。
扶養控除は高収入世帯が有利にできているからだ。
そして、中学就学以前12年間、子どもに年額100万支給する。
子育て支援金制度を提案している。

・医療問題
人口あたりベッド数と医療費に相関している。
日本の医療が安いのは、医師数が少ないかららしい。
著者は診療報酬体系の見直しを提案している。
現状の診療所モデルから、
医師技術料と病院必要経費を明確に区分した体系にすべきという。
開業医が有利過ぎる現状を改正しなければならない。

これらの改革にはお金がかかるが、それには公共投資を減らすしかない。
日本の公共投資は他の主要国家の2倍以上である。
公共投資から社会保障への比重の移転が必要なのだ。

・今日の一言
政府が年に100万円をすべての子どもに支給する。
The government provides 1,000,000 yen equally to every child a year.
정부가 년에 100만엔을 모든 아이에게 지급한다.
政府对每个孩子支付一年100万日元。

タグ:中垣陽子
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コメント 3

Baldhead1010

将来年金で暮らせてゆけるのだろうか・・・。
by Baldhead1010 (2007-08-16 11:44) 

お先、真っ暗。^^
by (2007-08-16 13:59) 

Kay-akira_Hirota

官僚と喧嘩するのでも、官僚に使われるのでもなく、官僚を使いこなせる政治家が出てくるのを待つばかりです。誰かそういう人いないですかね……
by Kay-akira_Hirota (2007-08-17 05:48) 

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