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漂泊のヒーロー-中国武侠小説への道(あじあブックス) [本(東洋史]

(あじあブックス)
『漂泊のヒーロー』
岡崎由美(中国大衆文芸)
大修館書店(2002)


中国の大衆文学の歴史を知る・面白い。

出土した漢代説書俑。太鼓とばちを持ち踊り出しそうなもの。
こうした芸人が、文人の誕生祝い宴会には演芸をしたり、
仏教の法要に名医の話をしたらしい。

唐までは刀剣を振り回す文人がいた。
文武の区別がはっきりするのは唐以降のこと。
漢代は特に成人男子には全員兵役があるので、
文人も当然のように剣を使う。
風俗も江戸時代に似ているのが面白い。

中国のチャンバラはファンタジー。
香港武侠映画の爆発やレーザーは唐の時代より記録される。
唐の伝記小説の撃剣術では、剣を揮えば風雷を伴い稲妻が空を裂くのだ。
おっと、そういえば光武帝の昆陽の戦いでは、
文字通り風雷を伴い稲妻が空を裂き、王莽軍が潰滅したけど、
劉秀もやはり剣の達人かな?

唐の開元年間、勅命で慶事の際に民草に酒食を賜る宴があった。
これはもちろん漢代など他の時代にもあった。
祝日は国家推進でお祭りをするわけだ。

漢代の画像石には、
額にのせた竿の先に演技者がぶら下がったり逆立ちする図もある。
基本的に今の雑伎と同じ。
中国雑伎団の歴史は、二千年を超えるのだ。

江湖とは、長江と洞庭湖のこと。
官に対する野の世界を意味する。
盗賊がすみかとするのが長江と洞庭湖ってことかな。

侠客の仮の姿で多いのが、渡り歩きの薬売り。
怪我をしやすいから自然に薬にも詳しいわけ。

中国の剣は、よくしなり片手で扱うもの。
頸動脈を斬るか急所を刺すので、動きはフェンシングに近い。
太平花とは、利き手の逆の側に構え、
バックハンドで水平に弧を描いて刺突を送る基本技。
確かに画像石を見ても、
ヒットアンドアウェイのフェンシングのポーズが多い。
日本の殺陣とは全く違うわけ。

臨陣招親とは、戦って結婚すること。
女が「私に勝てる男と結婚する」……のはずが、
楊家将では、「私が勝ったら結婚しなさい」となり、
女がいつも勝つらしい。(笑)

金庸のキャラクターは今や一般名詞。
権力欲の代名詞は左冷禅、偽善者の代名詞岳不群。
名前を呼ぶだけで悪口として通じるのだ。

『金瓶梅:天下第一の奇書』
日下翠(中国文学)
中公新書(1996)


金瓶梅の読み方・人物を中心に読む。

金瓶梅の内容を一言でいうと、
明の富豪の生活と因果応報の話だそうだ。

金瓶梅は画期的なのは、エロだからではなく、
人物の性格が細かく描かれていること。
支那の小説では人物が性格を持たなかったのが、変わったのである。

登場する使用人は、必ずお使いの上前をはねる。これは中国の常識。
役人も収入は明示されない部分がほとんど。
古来より法律よりも慣習で動く国である。

日本は女性が過ごしやすいという。
欧米では男女ペアでの行動を強制されるし、
中国でも、女性は結婚への圧力が強い。
確か王敏氏も同じことを言っていた。
仕事をするという点では、日本はあまりよい環境ではないが、
生活に干渉されないという点では楽なようだ。

・今日の一言
中国のチャンバラはファンタジーだ。
Chinese sword fight is fantasy.
중국의 칼싸움은 상상이다.
中国的武打片是幻想。

タグ:岡崎由美
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