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数学する遺伝子 [本(数学]

『数学する遺伝子』
キース・デブリン(数学者)
早川書房(2007)


数学の本質を知る良書……
だが、なんだこのひどい言語学の知識は?

アメリカのかけ算には10の段があるらしい。
0を一つ増やすだけでは? 
ああ英語だと言いにくいな。

123は一二三の筆記体らしい。
草書みたいにつなげたら
確かに123になるな。

アラビア記数法という驚くべき発明。
インドとアラビアの科学の人類への貢献はとても大きい。

計算の天才は数字が意味を持っている。
数字がイメージを喚起する。
πとかも、それにともなう連想がたくさんあるわけ。
数字はそのままだと平べったいというか、無味乾燥だものな。

プロの音楽家が音楽を聴くときと、
数学者が数学の問題に取り組むときの脳画像がよく似ている。
どちらもイメージを使うことが共通である

数学があると見えないものを見えるものにできる。
すなわち、もともと見えないものを扱っているのが数学である。
これは数学が扱っているものが、
映像でもなければ音声でもなく、運動感覚だからである。
対象なきアフォーダンスを扱うのが数学なのだ。
アフォーダンスとは対象から受け取るものだが、
数学ではそれを対象から分離して使えなければならないのだ。

数学思考の比喩が面白い。
新しい数学を学ぶのは心の中に家を建てること。
新しい数学を理解するのは心の家の内部に詳しくなること。
数学の問題に取り組むのは家具を配置すること。
また、数学者はよくうわの空になる。
数学に要求されるのは高い集中力という。
数学者の第一歩とは、関連の数学をすべて意識にのぼらせることという。

将棋の棋士のイメージに似ている。
将棋はやはり数学のゲームだ。
羽生善治は、手を読むとき盤面を浮かべないという。
何かが流れるような運動感覚、
アフォーダンスだけが感じられるのである。
動きの感覚で考えることと、
羽生善治や佐藤康光といったトップ棋士が
対局中、非常に落ち着きがなくいつも動いていることには
関連がありそうだ。

数学は発見の創造性であり発明の創造性ではない。
ハムレットはシェークスピアしか書けないが
数学の証明はいつか誰かが見つけるものだから。

人類はなぜ森林を離れ、直立歩行するようになったか。一つの仮説。
サルの消化器系に一つの酵素ができたためという。
サルが熟していない果実を食べられるようになったため、
類人猿は森から追い出されたのだ。
結構面白い。森に残った類人猿は少数で細々と生きているものな。

数学者はある問題を解いたと思ったあとに論理的証明にとりかかるという。
これは科学者も似たケースが多い。
ふと仮説を思いつき、それを実験で証明するわけだから。

この本はとても面白いのだが、言語の知識のひどさに驚愕した。
・すべての言語に文法の性がある
・すべての言語の統語に単数と複数の区別がある
・あらゆる言語に主語がある

全部、明白に間違い。少なくとも、日本語、中国語、韓国語にはない。
著者は英語とそれと似た印欧語しか知らないらしい。
そんな知識でチョムスキーの生成文法を解説してしまうのだから驚き。
言語学は独学で、内容を言語学者に相談しなかったということかな?

『古代の精密科学』
O.ノイゲバイアー(オーストリアの数学史家)
恒星社厚生閣(1984)


ギリシア、エジプト、バビロニアの
数学と天文学の解説。

『科学を志す人々へ』
石本巳四雄(地学、物理学)
講談社学術文庫(1984)


科学者の心構えを語る。

ガリレオの寒暖計の製作。
これぞ物理学の始まり。
数字で客観的に計測することが
物理学の始まりである。

一個人が病に冒されるのは偶然であるが、
科学ゆえに偶然性を許容できる。
迷信深い、科学を信じない人が、
偶然を認めず、呪術的な因果を信じてしまう。
こうした人たちは、何か原因がないと納得できないのだ。
偶然を正しく理解するにも科学思考が必要だ。

発明の多いフランス人と発展実用化するドイツ人。
日本はドイツ型だが、これは様々な制度をドイツから輸入したせいかも。

ブッフォン
天才は辛抱強いという才能だ。
同じテーマが成功するまでねばり強く研究しているのだ

アインシュタインも20歳以降1年平均10個の論文を発表した。
その中に、あの相対性理論もあった。
たくさん仕事することも大事というわけ。

『近代科学の誕生(上)』
H.バターフィールド(歴史家)
講談社学術文庫(1978)


科学の誕生の背景を知る。

科学の画期的発展は
同じデータを新しい思考で見なおしたため。
科学者の意識の変化が鍵である。

近代的な慣性の法則は
事物を正確に見るだけで発見できるものではない。
観察できれば解けるというものではなく、
社会状況も重要なのだ。

フランシス・ベイコンは実験の必要を力説したが数学化はせず、
デカルトは数学化したが実験的根拠は薄弱だった。
この二つが揃った科学が登場するのはまだ後のことだった。

『はかり方の日本語』
久島茂(意味論、国語史)
ちくま新書(2007)


数・時・量の言葉の使い分け基準を知る。

例を挙げて、数、時、量の言葉の
使い分け基準を解き明かす。
ただそれだけで、そこからは展開せず、
たくさんの例が大量に出てくる。
もう少し普遍的な話に
進むとかしてくれないのが不満。

『人工知能』
長尾真(情報科学)
新潮文庫(1986)


コンピュータ誕生の話など。

最初のコンピュータ・エアニックは、
弾道計算のために生まれた。
軍事目的だったわけ。
そういえばインターネットも軍事関連だっけ?


『音楽する脳』
ウィリアム・ベンゾン(認知科学、ジャズ)
角川書店(2005)


音楽の秘密を知る。
面白いけど参考文献の記載がないのは問題。

チンパンジーにはテンポやリズムの感覚がない。
ヒトが他の動物と決定的に違う点である。
リズム感覚とは周期性を意図的に作ることである。
これは脳に強力な再帰回路を持つヒトにのみできるのである。

ゲオルグ・フォン・ベケシーの触覚実験
2本の振動する針でそれぞれ別の指先を刺激する。
二つの針のパルスをずらして間隔を狭めると、1ミリ秒で最初の指だけに刺激を知覚する。
さらに短くすると2本の指の間の空間に振動を感じるようになる。
これは両膝への刺激でも同じことが起こる。
股間の空間に刺激を感じるのである。
何もない空間に刺激を感じるのが面白い。

ニルス・ウォリンとヴァレリウス・ガイストの仮説。
原始の人間は動物の鳴き声を真似て声を出したという。
言語の始まりである。

この本の最大の欠陥は参考文献の記載がないこと。
非常にたくさんの資料を引用しているのに問題だと思う。

・今日の一言
アラビア数字の"123"は"一二三"の筆記体である。
Arabic numerals "123" are cursive characters of "一二三".
아라비아 숫자 "123"은 "一二三"의 필기체다.
阿拉伯数字"123"是"一二三"的手写体。

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