SSブログ

貧困の終焉-2025年までに世界を変える [本(経済学思考法]

『貧困の終焉/ジェフリー・サックス/早川書房/2006』
著者:国連のミレニアム・プロジェクト、マクロ経済学、国際金融
評価:正しいマクロ経済学を理解して世界から貧困をなくす・良書

U2のボノの推薦がついている。

著者は、臨床経済学を提唱する。
開発経済学と臨床医学に共通点があるからだ。

臨床医学では、
1.人体複雑なシステムと認識し、
2.個別の診断が必要であり、
3.環境や家庭を含めた治療が必要で、
4.観察と評価が不可欠であり、
5.専門職としての倫理が必要である。

開発経済学もまた、
1.経済は複雑なシステムであり、
2.個々の国別に個別の診断が必要であり、
3.その国だけでなく国際的な解決が必要であり、
4.観察と評価が欠かせず、
5.担当する経済顧問に倫理が要求される。

インドのブラフマンの遺伝子は中央アジアやアナトリア系が多いらしい。
カースト制度は征服者と被征服者の関係が出発点のようだ。

イギリス人は、インド人に"俺たちがインドを開発した"というらしい。
どこかでそっくりなことを聞いた気がするな。
しかし、インドは1600-1870年まで一人当たり所得が全く増加せず、
その利益はどこに行ったのかは明白である。
ちなみに、その期間のインドの人口も増加している。
豊かにならないように人口を増加させるのは植民地統治の技法かも。

アメリカは貧困支援国名簿の最下位だ。
非ODAもODAの17%に過ぎない。
それを指摘すると、アメリカ政府は
出稼ぎ労働者の母国への送金を援助に換算しろといったという。
あるいは、援助金はどぶに捨てるようなものだったという。
そもそもアメリカは援助をしていないのだ。
そして貧困国では年一人12ドルが受け取っていない。

ところが、アメリカ人は
国家予算の20%を対外援助資金に使っていると思っている。
実際の金額の24倍である。
やっぱりアメリカ人はバカだ。というか、完全に愚民国家である。
情報が完全に遮断されていて、本当のことを何も知らないのだ。

この本ではたくさんのマクロ経済学の誤解を訂正している。

貧困国の債務を帳消しにすると信用を失う。
これは間違いで、多すぎる負債がある国に投資する人はいない。
借金が1000万ある人と、自己破産した人、
どちらならお金を貸してもいいか、考えればすぐわかることだ。

国家の経済統制と経済成長も特に関係がない。
経済自由度と成長率は相関しないのである。

一番誤解が多いと思われるのが、
反グローバル化運動の誤りである。
貧困は国際投資家の搾取でなく経済的な孤立が原因なのだ。
グローバル化は、インドの極貧人口を2億人減らし
中国から貧民を3億人減らしたのである。
細部でなく全体をよく俯瞰すれば、わかることである。

経済発展を国民性や民族性に求める誤りもある。
1870年代、日本は怠惰で遊び好きな国民性だから
貧困から逃れられないとされていた。
もちろん、今の経済発展とは大きな違いである。

アフリカの低成長率はその地理的条件とインフラの不備が原因である。
水資源、天然資源、気候、隣接する国家関係などが、
アフリカは経済発展に不利なのである。

イスラム教も経済発展にマイナスではない。
90年代に世界で最も経済発展したのはイスラム圏なのである。

経済発展を文化や思想に求めるのは間違っているのだ。
このあたりプロテスタントに経済原理を探した
マックス・ヴェーバーの罪は重いように思う。

因果関係の序列を述べておこう。
進化論の基本は、自然環境の変化に対応して遺伝子が変化し
生物がその環境に適応する。自然環境⇒生物形態である。
人類は、それを文化により適応する。
従って、自然環境⇒文化である。
民族性を考えるたくさんの要因にも原因⇒結果の連鎖がある。

風土、文化、経済、歴史、教育、法律、言語、組織、個人のエピソード
を考えた場合、

地形と風土⇒経済と歴史⇒文化と風習⇒法律と教育⇒組織と言語、
そしてその結果として個人のエピソードを生み出すのだ。
逆にはほとんど働かないことを知っておくべきだ。

・今日の一言
グローバル化は世界を貧困から救う。
Globalization has the power to save the world from poverty.
글로벌화는 세계의 빈민을 돕는다.
全球化把世界从贫困中拯救出来。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。