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古代中国思想ノート [本(東洋史]

『古代中国思想ノート』
長尾龍一(法哲学者)
信山社(1999)


面白い。
西洋法哲学と対照させて新しい視点が得られる。

孔子の弟子に、
顔姓の弟子がたくさんいるのに孔姓はいない。
孔子は母方の共同体に
所属していたのではないか。

詩の夭桃の長尾訳
川辺の小鳥がチュンチュンないて、
私ゃ彼氏とおデートさ
これまたキュートな訳である。

これを歌う孔子の言葉は"思い邪なし"だが、
それを長尾氏は"無邪気でいいよ"と訳す。

荀子:聖人は自分で考えるから騙されない、
(聖人何以不可欺?曰:聖人者,以己度者也)
これは光武帝の予言書研究にあてはまると思う。

光武帝は予言書を信じたのではない。
運命を信じ、それが予言書として現れることを信じたのである。
"予言書"を信じたのではなく、"予言書の存在"を信じたのである。
これは全く違うことである。
従って、予言書があっても、
それが天命を示すものか検討されることになる。
だから、迷信深いように見えても、
光武帝はそれに惑わされて失敗することはなかった。

荀子の利己本性とホッブスの自然状態が似ているという指摘は面白い。

18世紀英国の宗教家、Beilby Porteusの言葉
一人を殺せば悪党、百万人を殺せば英雄。
歴史上の英雄はみな大量殺戮者である。

老子は老先生という意味で固有名詞ではない。
そういわれればそうですね。

魯迅が墨子をテーマに書いた小説は『非攻』
これは酒見賢一の『墨攻』と何か関係があるのか?

左伝には陳、周、衛での工人の反乱が記録される。
墨家の母胎である。
こうして見ると儒と墨の対決は、階層闘争とも言えそう。

墨家はどのように滅んだか。
旧派墨家は、最後の趙王が代王となるに従い、ともに滅んだ。
新派墨家は、呂不韋の失脚ともに滅んだらしい。
墨子にある臣下を殺した主君への憤りは呂不韋を示すのかもしれぬ。

韓非子:法は有徳者のためでなく凡人のためのもの。
法は常に凡人を基準に考えられなければならないのだ。

韓非子の実証主義。言辞に検証を求めた。
堯舜などは参験なしとしてその言論を無意味とする。
ポパーの反証主義を彷彿とさせて面白い。

ドイツ史と日本史の平行性
・ユダヤ的宗教伝統⇔インド的宗教伝統
・ギリシャローマ文明⇔中国文明
・ゲルマンへの回帰⇔原始日本への回帰、
ドイツ思想史は日本思想史と類似構造を持つわけ。

これは、日本語と英語の類似構造と比較しても面白い。
・北海道のアイヌ語の地名⇔イギリスのケルト系の地名
・やまと言葉⇔単音節の古英語
・漢語⇔フランス語系
・カタカナの外来語⇔ラテン・ギリシャ語由来

『戦国策』
近藤光男(中国文学)
講談社学術文庫(2005)


486章から100章を選択して翻訳解説。

秦の范雎の遠交近攻。この言葉は戦国に始まる。

将軍という職業は戦国時代に誕生した。
それまでは政治家が兵士を率いたのである。

白起は料敵合變,出奇無窮の知将である。
たくさん殺したけど別に勇将ではない。

『論衡のはなし』
若松信爾(中国学)
明治書院(2001)


読みやすい。

儒家でありながら孔子を批判する。
孔子の言論に一定性ないとし、
遍歴しても用いられないのは当然としたのだ。

人の死は火が消えるようなもの。
現象である。継続する霊魂などないのだ。

人間が狂うのは妖怪のためという。
そして妖怪も人間同様に死ぬ。
一貫して論理を述べる王充が、この話だけ非論理的に感じるが、
妖怪というものを細菌やウイルスと考えると面白いかもしれない。
細菌に感染して人が狂うことはあるし、
細菌にも寿命があるのだ。

『論語』
貝塚茂樹(東洋史)
講談社現代新書(1964)


コンパクトにまとまっており読みやすい。

學而不思則罔,思而不學則殆
知るだけで考えないのは盲目だし考えるだけで知らないのは危うい。
西洋の似た言葉がカントにある
知識は経験とともに始まるが思惟がなければ盲目だ。

知之為知之,不知為不知,是知也
知っていることを知っているとし、
知らないことを知らないとする、これが知るということだ。
これも可知と不可知を区別したデカルトと似ている

唯仁者能好人,能惡人
仁あるもののみが人に優しくすることができ人を憎むことができる。
この憎むということは、悪を正すということだろう。
それには仁の心、人に対する思いやりが必要なのである。
悪を正すのは相手のための行為だからだ。

君子懷德,小人懷土;君子懷刑,小人懷惠
萩生徂徠の訳は、
君子が徳を慕えば民衆も故郷を慕うし、
君子が刑罰を考えれば民衆は利益を考える

で、貝塚氏は間違いと断言するのだが、

この文は、卷一為政第二の
道之以政,齊之以刑,民免而無恥;道之以德,齊之以禮,有恥且格
に対応しているので、
萩生徂徠の方が正しいんではないかという気がする。

『中国の古代哲学』
小島祐馬(中国哲学史家)
宇野哲人(中国哲学者)
講談社学術文庫(2003)


孟子、老子、荘子、韓非子。

『孝経』の孝は、宇宙の原理から演繹された道理。
(夫孝.天之經也.地之義也.民之行也.天地之經而民是則之)
『論語』の経験性と正反対の論理構造を持っている。
『孝経』は『孟子』の系統にあると考えられる。

孝とは親につかえ君につかえ世に出て名を残すこと。
(夫孝.始於事親.中於事君.終於立身)。
孟子の孝による世界共同体は孝経により哲学化され、
国家の基本原理になった。
すなわちこれが光武帝の頃のこと。
故に光武帝が中国を完成させたというべきことがわかる。

漢の時代は孟子という著書はそれほど読まれていない。
それなのになぜ光武帝に孟子の影響が見られるのか。
どうも孝経が孟子派の著書だからという気がする。

為政者は庶民のために存在するに過ぎない。
民衆のための政治家というのが、なかなかいない。

官は本来は奴隷の意味。
そういえば、民も奴隷の意味だったっけ。

老子の子李宗は魏の将軍、段干に封ぜられたという。
意外に存在がはっきりしているよう。

『論語を読む』
加地伸行(中国哲学史)
講談社現代新書(1984)


宗教としての儒教から論語を読む。

中国を知る三冊を選ぶと、論語、唐詩選、十八史略らしい。
唐詩選は読んだことがないなあ。

中国史を皇帝権力と地方共同体の対立を捉え、
皇帝が共同体潰しの武器が科挙であるという。

鳥の言葉がわかる公冶長。彼は原儒出身かも。

未能事人,焉能事鬼と未知生,焉知死。
生きている人にお仕えできなくて霊魂にお仕えできようかという、
宗教的な言葉であるという。

・今日の一言
一人を殺せば悪党、百万人を殺せば英雄だ。
One murder makes a villain, millions a hero.
한 사람을 죽이면 악한이 되지만, 백만을 죽이면 영웅이 된다.
杀死一个人的是坏人,杀死一百万人的是英雄。

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