明清と李朝の時代－世界の歴史12

『明清と李朝の時代：世界の歴史12』
岸本美緒（中国史家）
宮嶋博史（朝鮮史家）
中央公論社（1998）

朝鮮史に詳しく興味深い良書

日本の江戸時代の家は家業と切り離せない。
仕事を受け継ぐことが家を継ぐことなのだ。
だから養子をとって後を継ぐという考えが生まれる。
そして、その家の集合として社会があるのが日本である。
中国には家業というものはない。
家の概念は男系の血筋の流れのことなのだ。
中国の歴史学の伝統は、歴史と現実を重ね合わせる影射史学。
これが今でも使われている。
古代の民衆反乱を共産革命扱いしたりしているのだ。
朝鮮における貨幣経済の未発達。
両班は大多数が農村に居住し自給自足圏を作っていた。
ソウル20-30万人程度で、１万を超える都市もわずかだった。
都市は軍隊を支えるものだから、
朝鮮の軍事力が弱かったのも当然である。
朝鮮の相続制度の変遷。
男女均分⇒男子均分⇒長男優先。
これは儒教でなく父系血縁組織の強化だという。
韓国人を儒教で理解するのは正しくない。
ムーダンなどアミニズムから見た方が正しく理解できよう。
李朝の科挙は後半になると少数の血縁集団による寡占状態になった。
科挙の意義が失われているのだ。
朝鮮のマウル(ムラ)は日本のムラより弱く歴史も浅い。
かわりに郷案や檀案など階層別の中間組織がある。
地域よりも血縁などの集団である。

日本には地域や家業による集団があり、
朝鮮には血縁と階層による集団があったといえよう。

『未来をひらく歴史：東アジア３国の近現代史』
日中韓３国共通歴史教材委員会（日中韓の研究者の集まり）
高文研（2005）

時期尚早。学問の自由のない国の学者と本を作っても不毛なだけ。

平塚らいてうと14歳年下の男性の愛の共同生活。
写真を見るとけっこう美人だ。
植民地では朝鮮人なのに、
日本語を使わなければ生活出来ない変なことになったという。
私は同意しませんが、日本人だから当然とも表現できるわけですけど。
歴史の教科書にこういう、明確な意図を持ち、
価値付けを行った内容を盛り込むべきではない。
事実のみを提示し、生徒に考えるさせるべきで、
結論が決まった書き方は問題だ。
1945年の韓国の解放は民族連合軍の勝利で得たものだという。
誰がどう見ても連合軍による解放でしょう。
外国から見れば、
韓国／朝鮮は日本と一緒に敗戦したという扱いですよ。
戦勝国ではありません。
ドイツとオーストリアやチェコの関係に近いところか。
中国帰還者連絡会というのがある。
戦犯管理所に収容された日本人1109名が56年になって解放され、
戦争犯罪についての告白と証言活動をしているという。
長期にわたる人間教育の成果だそうだ。
11年間の収容所生活の人間教育……どう読んでも、
"洗脳してから日本に派遣しました"と聞こえるんですけど。

中国や韓国で政治と歴史が分離されるまで、
こういうことはしない方がよい。
内容の正しさより早い者勝ちで、決まってしまう危険が高い。
本としては三国が並列に対照され読みやすいく、形式は良いと思う。

『韓国史のなかの１００人』
金素天（童話作家）
明石書店（2002）

分かりやすく面白い良書。偉人のみ。
軍人、科学者、文学者などいろいろ。


『朝鮮儒教の二千年』
姜在彦（朝鮮近代史・思想史家）
朝日選書（2001）

儒教中心に朝鮮史を語る。

科挙の応試者は録名所に登録するとき、
姓名・本貫・居住地・父・祖父・曾祖・外祖の四祖単子と、
六品以上の官僚の身元保証書を提出が必要だった。
両班の家柄でないと応試できないのだ。
これでは科挙の意味がない。
清の科挙はこうではなかった。

事大主義とは従属のことではない。
声教自由の独立国であった。
軍事、税制とも独立しているのだから、
朝鮮を中国の属国と呼ぶのは言い過ぎである。
朝貢も、すると儲かるからするのである。
琉球は年三回も朝貢したが、中国の属国ではなかった。
朝鮮を中国領とけなすのは、
沖縄は中国領だというのと等しいので注意せよ。

『〈増補版〉韓国近い昔の旅：植民地時代をたどる』
神谷丹路（日帝時代を訪ねる旅をする人）
凱風社（2001）

自虐史観で韓国を訪ねる。

日本は文化の弟分だから、
韓国人の兄貴風を謙虚に受けとめるべきという。
ほう、じゃ韓国人は中国人に子ども扱いされろってことかね？
個人と国を区別できないなんて論外だ。
日帝時代を知らないと答えると、
日本人の悪行を話し続ける韓国の学生がいる。
今はどのぐらいいるんだろう？
82年の教科書問題はこれでいいのか？
書き換えたことになってるけど。
韓国人が日本人嫌いな訳はわかるが、
日本人が韓国人を嫌う訳はわからないという。
嫌う相手を嫌うのは人間心理として当然だし、
日韓の文化コードの違いというのもある。
日本人には韓国人の会話が無遠慮に聞こえるのは事実だ。
朝鮮族には特有の中国語由来の韓国語がある。
没問題(メイウェンティ)を直訳したイリオプソヨ。
大韓帝国26代皇帝の孫はソウルでクラブの歌手しているそうだ。
時代の変化ですねえ。

『親日派のための弁明』
金完燮（作家、評論家）
草思社（2002）

全部が正しいとは言わないが読むべき事実が多い野心作。

韓日対立はアメリカの意図だという。
対立することで、アメリカの価値を高めるという、
分割支配だというのだ。
それは考えたことがなかったな。ありそうもない気がするが。
著書は有害図書指定になり、著者は逮捕されたという。
2002年の韓国にはいまだ表現の自由がないようだ。
この手の本が普通に販売されるまで共同教科書は待つべきだね。
2001年タイム誌、
日本は謝罪が必要かを問うと60％が必要なしと回答した。
韓国の常識は世界の非常識。
1965年の韓日基本条約五条には、
国家および国民のあらゆる請求権を放棄する。とある。
法律の意味を知っている者なら、
日韓の賠償問題は終結していることがわかる。
朝鮮史上最も賄賂を好んだ高宗。
なるほど、それでその子孫もあまり大切にされないわけだ。
開化派と東学教徒がもっと共同できていれば、
朝鮮が近代化できたかもしれないという。
しかし、士人である開化派と農民の東学教徒は共同できなかった。
朝鮮の階層社会が近代化にマイナスにはたらいたのだ。
封建制度はヨーロッパと日本だけだという。
他地域は封建社会なしに中央の強い専制王朝になった。
そして、地方の強い封建制度は商業を発達させるという。
日欧の発達の基礎である。

『図説 韓国の歴史』
金両基（比較文化の学者）
河出書房新社（1988）

画像が多く見やすい。

北部九州の五世紀の遺跡の加耶系文物は、
大和政権を介せず加耶系の海人の直接交易だという。
やはり古田説＝二重王朝説が魅力的に見えるなあ。
甲午農民戦争の倭軍死者1000名余、
挺身隊として慰安婦を招集という表現がある。
これは誤解を招くのでよくない。
ヴェトナムで歓迎される韓国軍の写真があるが、
韓国軍の行動は賞賛されるものではないので、
これもまずいだろう。
ソウル人口は、李朝末25万、解放時95万、現在1000万。
商業発達の度合いがわかる。
それだけ朝鮮時代は商業が弱かったのだ。

商業の発達度合いが、東洋三国の近代化の成否を分けた。
中国と朝鮮が近代化できなかったのは、
商人の勢力が弱かったためである。
なぜ商業が弱かったか？
中国、朝鮮はともに中央集権が強く、
商業の利益も中央政府に吸い上げられるようになっていたからだ。
商業が弱いとなぜ近代化しないか？
資本主義の中核は商業である。
そして、法律を最も必要とするのも商業である。
商業の発達した国では、遵法意識が芽生えやすいのだ。

『明治・大正・昭和 軍隊マニュアル』
一ノ瀬俊也（比較社会文化の学者）
光文社新書（2004）

戦前の軍隊の資料集から一般兵士の心理を知る。

軍事救護法で留守家族にお金が支給されることになった。
ところが、不名誉を嫌がって申請しない家族も多かったという。
日本の恥概念の特徴がよく出ている。


『風水思想と東アジア』
渡辺欣雄（社会人類学者）
人文書院（1990）

興味のある人向け。

風水は東洋地理学だという。
しかし、西洋の地理学と本質的に違うのでまずいでしょう。
沖縄の村落は碁盤目状の道路で京都と同じ。
これは都市設計の風水の影響らしい。
婿養子が妻の親に尽くす日本。
中国人、韓国人から見ると、それは忠であって孝ではない。
日本でのみ企業経営に家のアナロジーが成立するのだ。

『青瓦台の風水師』
姜泳琇（ジャーナリスト）
文芸春秋（1994）

韓国を歴史的に知る良書。

科挙による大物になれという教育。
韓国男性の権力指向の源泉だ。
韓国は外見は統一国家だが、その実は分立した血族団だという。
それが財閥ってことかな？
竹の葉を振り叩き悪霊や邪心を追い払う巫女。
こうしたアミニズムは日韓共通だ。

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